「のぞかれる」皇居。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 





増える高層ビル プライバシー、防犯面で問題




高層の建物が皇居(東京都千代田区)周辺で建築されるのに伴い、宮殿、宮内庁病院といった皇居内の主要施設が「のぞかれる」恐れが出ていることが次々と明らかになっている。天皇陛下のご執務や、重要な儀式が行われる宮殿の内部が、一部のビルから見えることも確認された。

 都市化に伴って浮上した課題といえ、宮内庁では目隠しの樹木を植えるなどの対応を迫られている。だが、かねてから議論があった景観面だけでなく、プライバシー、防犯などの面からも問題が指摘されており、周囲のビルでは皇居側に窓が開かないようにするなどの配慮をする動きがでている。

 豊かな緑に囲まれた皇居内は、低層階の建物が多い。宮内庁は昨年末の調査で、重要な儀式が行われる皇居・宮殿の「正殿」から東方向にある中庭側を向くと、約20のビルが見えることを確認した。3階建ての宮内庁の屋上からは、101のビルが見えることも分かった。

 ある宮内庁幹部は「こちらからビルが見えるなら、向こうからも皇居の中は見える。どのビルの施工者に対しても警備、景観のことはお願いしているが、なるべく高い建物は建ててほしくない」と明かす。

 数年前には宮内庁の幹部が、東京駅の近くで建築が進められていた高層ビルに実際に訪問して「現地調査」を行ったこともある。上階の窓から双眼鏡でのぞくと、宮殿の廊下の一部が見え、「歩いている人の顔が判別できるほど」(幹部)だったという。
 驚いた宮内庁側は、行事のときなどに、宮殿のブラインドを、それ以前よりも下げる対応を取った。

 皇室の方々が入院したり、通ったりされる宮内庁病院からお堀を挟んで約200メートルの距離には、現在、パレスホテル(東京)が複合施設を建設している。

 パレスホテルによると、複合施設は来年1月に竣(しゅん)工(こう)予定で、最高部は約100メートル。「プライバシー、セキュリティー確保のため、十分な検討を経た上で宮内庁に説明し、ご理解をいただいている」(広報室)という。進(しん)捗(ちょく)状況も定期的に説明するなどの配慮をしているという。

 このほかにも周辺では、一般の人の屋上への立ち入りを禁止したり、上階に不特定多数の人が立ち寄るレストランをつくることを自粛したりするなどの例もある。

 皇居周辺のビルの高さについては、昭和時代から議論の対象となってきた。現在大手町、丸の内、有楽町地区では、同区や地権者などで構成される協議会が「まちづくりガイドライン」を作成。建物の高さは、おおむね皇居から離れるに従い、地区によって100~200メートルまでに抑えるとされているが、高さを強制的に規制するルールはないという。

 一方、両陛下がお住まいの御所については、木々に囲まれているため、現在のところ高層ビルの影響はほとんどないとみられている。


                                   (芦川雄大)


草莽崛起


                  皇居敷地内から大手町方向に向くと見えるビル群