【風を読む】論説委員長・中静敬一郎
米東部の名門、コロンビア大学教授で知日派のジェラルド・カーティスさん(70)は、米国人学生たちの間で不思議な現象が起きていることに注目している。
それは最近、日本を学ぶ学生がかなりの数にのぼっていることに加え、年々、少しずつ増えていることである。
日本の政治、経済、文化などを勉強しているのは、コロンビア大学の学部学生約4200人のうち、1割強の550人ほどだ。これまで日本専門家を志望する学生がいたが、きわめて少数にとどまっていた。それが今のように変化していることについて教授はこう分析する。
第1に高校時代、第2外国語として日本語を選択したり、小さいころから日本のマンガやビデオを見て育ったりしたことで、自然に日本に関心を寄せるようになったことだ。
もう1つの理由は興味深い。
「学生たちがフランスやイギリスを学ぶのは、フランス政治やイギリス経済の専門家になりたいからではない。ヨーロッパを知らないと教養ある人間とはいえないと思っているからです。同様に日本についても知っておかないといけないと思うようになっている。日本が米国にとって大事な国になったからですよ」
教授はこうした米国人学生を例えば、夏休み期間中に日本に招き、政財官界などでインターン(研修)生活を過ごさせることができないか、と昨年末、東京を訪れ、各界の知人を回り、説得行脚した。
米軍普天間飛行場移設などでぎくしゃくしている日米関係に対し、草の根交流の広がりと深まりはきわめて有益と思っているからだ。
「この米国人学生たちは日本の宝物ですよ。宝物を活用しない手はありません。現在、アメリカ経済はよくないですから、日本で働くことだって、あってよいのです」
米国の優秀で「日本好きな」学生と日本の若者が競い合う。これは内向きな日本を内部から変えていくだろう。なんとも魅力的である。