【笠原健の信州読解】
読者の皆様、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
昨年は、多事多難の年だったが、今年も状況は同じだろう。確たる経綸を持たない民主党が政権の座にとどまっている限り、状況が好転する訳がない。国家の基盤はますます劣化していくだけだ。一日も早く倒幕を成し遂げなければならない。
昨年は日本の国家安全保障の大黒柱である日米安全保障条約の改定から50周年だったが、同盟の深化を確認する共同宣言や共同声明を出せずに終わってしまった。ひとえに民主党政権の責任である。一昔前だったら、少なくてもこのことをもって外相は辞任していただろう。しかし、その責任を問う声はほとんど聞こえてこない。
その日米安保条約に関して、昨年12月31日の産経新聞朝刊は、自民党が日米安保条約の改定を米国に提起する方針を固めたと報じた。双務的な日米同盟を目指し、集団的自衛権の行使を前提に日米双方が太平洋地域で共同防衛義務を負う一方、在日米軍基地の提供義務を条約から削除する方向で検討するという。
現行の安保条約を簡単に要約すると、日本が米軍に基地を提供する代わりに米軍は日本を防衛する-というものだ。日米安保条約は事実上、日本が米国に一方的に守ってもらう片務条約だといえる。
かつて自民党には、日本は米軍に基地を提供する義務を負っているのだから、日米安保条約は片務条約ではないと言い張っていた議員もいた。当時の国内の政治状況から、これはやむを得ない見解だったのかもしれないが、やはり詭弁(きべん)でしかない。ようやく自民党も真正面から向き合うことになったようだ。
集団的自衛権行使や武器輸出三原則の緩和など日米同盟の強化・深化に当たってはやるべき課題が山積している。本来なら、とっくの昔にこうした問題にケリをつけていなければならなかったはずだが、歴代内閣は放置してきた。自民党が政権復帰してもかけ声通りになる保証はないが、こうした方針を打ち出したことは評価したい。
平成8年、橋本政権はクリントン米政権と冷戦終結を受けて日米安保条約を再定義する日米安保共同宣言をかわしたが、共同宣言や共同声明にとどまらず、双務条約とするためにぜひとも日米安保条約の再改定が必要だ。
現在の日米安保条約は、米軍の占領下にあった日本の独立と引き換えに締結されたといってもよく、日本にとっては“天与の同盟”といえる。日本自らが国際情勢を真剣に見極めたうえに締結した同盟とはやはり言い難いものがある。
では、日本は自らの選択で同盟を締結したことはないのだろうか。いや、ある。それが日英同盟だ。日本と英国は明治35(1902)年に軍事同盟を締結した。日英を結びつけたのがロシアの脅威だ。
日英同盟は第一次、第二次、第三次と更新され、第一次日英同盟は(1)締結国が他の1国と交戦した場合は同盟国は中立を守り他国の参戦を防止する(2)2国以上との交戦となった場合には同盟国は締結国を助けて参戦する-という内容だ。
当時の英国は世界各地に植民地を持つ空前の大帝国。一方、日本は日清戦争には勝利したものの、近代化の道を歩む途上国でしかなかった。同盟締結時の日英双方の国力の開きは、今の日米よりもはるかに大きく、大人と子供といってもよかっただろう。しかし、明治の人たちは、国内の基地を提供する代わりに英国に守ってもらうというような恥知らずな同盟を締結はしなかった。
新春らしくここでちょっとした夢を語りたい。それは日英同盟を復活したら、どうだろうかということだ。もちろん、日英同盟再締結に当たっては、日英両国の同盟国である米国の理解と了解を得ておくのは言うまでもない。
明治時代に締結され、更新された日英同盟を21世紀の今日にそのままそっくり復活させることには無理があるだろうが、それでも大きな利点はあるはずだ。
まず日本にとってはインテリジェンスの面で多くの利益をもたらす。英国のインテリジェンス能力は米国も一目も二目も置くほどといわれており、この面でほかの先進諸国に比べて格段に後れを取っている日本にとって多くのことを学べる機会となるはずだ。
アフリカや中東諸国との外交を行ううえでも英国と密接な連携を取っておけば、大きなプラス要因となる。英国はアフリカや中東に植民地を多くの持っていたことから、これらの地域情勢に詳しく日本よりはるかに太い人脈を持つ。特にアフリカ諸国に関して英国の協力を得られれば、国連安保理の常任理事国入りや資源外交を展開するうえでも有利に働くはずだ。
英国とは兵器の共同開発や共同生産もぜひとも進めたい。空母や潜水艦をはじめとした艦船や戦闘機、輸送機、軍用ヘリといった航空機、戦車、装甲車などの軍用車両が候補となるのではないか。
英国は100年近く前に同盟を締結した相手だ。「もう一回、われわれと手を組まないか?」と声をかけても何ら不自然ではない。
もっとも日英同盟復活に先だって民主党政権下で大きく傷ついた日米同盟の強化・深化が成し遂げられることが大前提であることは間違いない。
さもないと、声をかけても英国からひじ鉄を食らう可能性が高い。
(長野支局 笠原健)