朝鮮半島、次の警戒は「ゲリコマ奇襲」、日本は大丈夫なのか? | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 


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【久保田るり子の外交ウオッチ】



北朝鮮の延坪砲撃で高まった朝鮮半島の緊張は、事件後1カ月余りの現在も薄らぐ様子はみえない。予測のつかない北朝鮮の行動で次に懸念されるのは「ゲリコマ」ことゲリラ&コマンド、特殊部隊による破壊工作だ。現在の在韓米軍、在日米軍の対北情報監視体制(5段階、ウオッチコンディション)は「2」で戦時に次ぐ警戒態勢にある。だが年末も、日本の内政は小沢問題に明け暮れている。菅直人政権、政府が守るべきは民主党なのか? 菅首相、有事対応をどう考える?

                                    (久保田るり子)


日米韓連携のデリケートな温度差


 「いま日米韓は非常にいい状態。韓国の軍事演習についての日韓情報交換も刻々と日本政府に入っている」(外交筋)

 韓国は、事件後1カ月を期して海兵隊による射撃訓練(12月20日)、海軍による対潜水艦攻撃訓練(22-25日)、陸軍空軍による実弾射撃訓練(23日)と連日にわたる大規模演習を行っい、年の瀬も警戒態勢が続く。その訓練内容や開始時間など詳しい情報は逐一、日本に通知されているという。

 今春の哨戒艦天安撃沈事件に続く延坪砲撃事件で、韓国は国連安保理はじめ国際世論形成での日本の協力の重要性を強く意識しているためだ。一方で米国は、韓国の過度な対北反応に、若干の憂慮も持っているようだ。

オバマ米大統領の指令を受け12月8日、訪韓したマイク・マレン米統合参謀本部議長は、韓国の合同参謀本部議長と会談し、「韓国の領土防衛は正当だ。米国は支援を惜しまない」と米韓同盟を強調した。しかし、米関係者によるとこの訪韓の最大の目的は、「韓国軍が北朝鮮の挑発に過大に反応しないかどうかの米国は憂慮を伝えることだった」という。

 韓国世論が韓国軍の北朝鮮砲撃応戦に不満を持った結果、韓国軍の信頼が一気失墜。現状では過剰なまでの防衛体制を内外に強調せざるをえない。偶発的な衝突を招きかねない状況を、「米国はかなり深刻に受け止めている」(同)

 日米韓は、法的にも政治的にも難しい「3角同盟」を模索するのか。

 12月3日から10日まで行われた過去最大の日米共同統合演習(日米で45000人参加)には、史上はじめて韓国軍がオブザーバー参加。天安事件後は7月の米韓合同軍事演習に、日本の海上自衛隊が史上初のオブザーバー参加した。

 いずれも米国の意向だった。オブザーバー参加した日韓の制服組はともに数人のレベルに過ぎないが、米韓軍当局、防衛当局は高く評価した。朝鮮半島有事が現実化するなか、ようやく踏み越えた一線。「米韓合同軍事演習に特に日本の参加を望む」(マレン議長)と明言する米国の危機感の表れでもある。

 日米韓の連携は特に日韓関係でデリケートにならざるをえない。それぞれの歴史的経緯に配慮した用心深いプロセスが必要だ。しかし、事態の緊急性から速やかな進展が望ましい。

 そんななか、唐突で無神経な言葉が米韓、そして日本国民を吃驚させた。

「ハイ、この政権おしまい!」


 菅首相は無造作に言った。

 「朝鮮半島有事の際、日本人拉致被害者を救出するために自衛隊が直接出動し行動できるルールを議論したい。いまいくつか議論をすすめている…」

 専門家は「ありうべき武力の行使を予想して、紛争地に武装した自衛隊を送るなどということが、わが国の憲法解釈でできるわけがない。普通なら『はい、この政権終わり!』ですよ。だいたい、どこにいるかも特定できていない拉致被害者をどうやって救出するんですか」とあきれ顔だ。

 10日、日本人拉致被害者らの問題を考えるシンポジウムで述べた菅発言は、当然、各方面にハレーションを起こした。(拉致被害者への人気取りと批判された菅首相は翌日、救出対象を「韓国にいる在韓日本人」と言い換えた)

 韓国政府当局者はメディアに「(韓国に)提起もされたことはない」「自衛隊派兵などとうてい受け入れ難い」「不適切な失言だ」と一蹴(いっしゅう)。韓国メディアは「有事の邦人救出」という主旨を無視して「日本の菅首相、有事に自衛隊派遣を明言」とセンセーショナルに報道。韓国の有力紙は、「日本メディアも『憲法違反、自衛隊法違反』などと批判」と冷笑的に扱った。


実は「問題の本質」なのだ… 


 「自衛隊派遣」発言は結局、仙谷由人官房長官にも「そんな事実はない」と否定され、「失言レベル」で雲散霧消した。首相の言葉が、これほど軽く扱われ、国内政治のでも無視されたことに自身、平然とできる総理大臣が過去、存在しただろうか。

 しかし実は、菅直人総理の「自衛隊派遣」発言は、朝鮮半島有事の日本の課題の本質である。

 有事となれば、在韓邦人2万8000人と旅行者あわせ、韓国で約4万人の日本人が危険にさらされることになる。北朝鮮の日本人拉致被害者の所在確認、救出方法が困難に直面するのはいうまでもない。

 日米韓で共同の作戦行動を検討できるかどうかには、いくつかの高いハードルがある。韓国が、日本の自衛隊と共同作戦行動することを国内の政治レベルや世論でどう判断するのか。日本は、朝鮮半島有事で問われる憲法問題、集団的自衛権問題などの法的問題はどう解決するのか。

 本来なら、政権のひとつやふたつかけて議論すべき喫緊の課題。米韓は年明けもまた軍事演習を行う。しかし、翻って日本で「首相の失言」が顧みられる気配はない。2010年師走の日本政治の縮図である。




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