【異論暴論】正論2月号
平和の毒にやられた国民に告ぐ
日本は米中露北朝鮮という核保有国に囲まれている。憲法前文にある「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持」することは空虚な願望でしかない。現実の国際社会で日本はいかに独立と安全を維持すべきか。元航空幕僚長の田母神俊雄氏と在米の国際政治アナリスト伊藤貫氏があらゆるタブーを排して果敢に語り合った。
田母神氏は日米同盟が現在の日本の安全保障の基軸であることを認めつつ、米国も突き詰めれば「自国第一」で、「自国よりも日本の安全を優先することはあり得ない」と断言する。冷戦時代は米国の意向に添うことが国益にかなったが、国際社会が急速に多極化している現状は、日本も「自国第一」で考え、必要なことは主張し、行動する国家であるべきだと主張する。
伊藤氏は、米国の著名な外交史家が日米同盟を「日本が独立国になるのを阻止する」同盟関係と述べたことを紹介、国益のために同盟国を徹底的に利用する米国の怜悧(れいり)さをわきまえた上で、日本は早急に自主防衛能力を構築する必要性を力説する。また米国は、同盟義務の履行意思があっても、2011年以降に予見される財政事情の窮迫と、異様な軍拡を続ける中国の台頭に押されて太平洋から撤退せざるを得なくなるという。
米国の衰退と中国の台頭のはざまで、独立維持のための日本の持ち時間は20年と両氏は見る。自主的な核抑止力保持は「自分の国は自分で守る」という国民道徳を確立することだという主張は、“平和の毒”にやられた戦後日本人に覚醒を強く促す。(上島嘉郎)