【あらすじ (BOOKデータベースより)】


「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」―15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。家を出るときに父の書斎から持ちだしたのは、現金だけじゃない。古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト、濃いスカイブルーのレヴォのサングラス。小さいころの姉と僕が二人並んでうつった写真…。



【抜粋メモ】


「プラトンの『饗宴』に出てくるアリストパネスの話によれば、大昔の神話世界には三種類の人間がいた」と大島さんは言う。「そのことは知ってる?」
「知りません」と僕は言う。
「昔の世界は男と女ではなく、男男と男女と女女によって成立していた。つまり今の二人ぶんの素材でひとりの人間ができていたんだ。それでみんな満足して、こともなく暮らしていた。ところが神様が刃物を使って全員を半分に割ってしまった。きれいにまっぷたつに。その結果、その結果、世の中は男と女だけになり、人々はあるべき残りの半身をもとめて、右往左往しながら人生を送るようになった」

「どうして神様はそんなことをしたんですか?」

「人間を二つに割ること?さあ、どうしてかは僕も知らない。神様のやることはだいたいにおいてよくわからないんだ。怒りっぽいし、あまりにもなんというか、理想主義的な傾向があるしね。想像するに、たぶんなにかの罰みたいなものだったんじゃないかな。聖書にあるアダムとイブの楽園追放みたいにね」

「原罪」と僕は言う。
「そう。原罪」と大島さんは言う。

(略)

「とにかく僕が言いたいのは、人間がひとりで生きていくのはなかなか大変だということだよ」 [P.79]


【あらすじ (BOOKデータベースより)】


言えたはずの言葉が胸の中に積もっている。聞けたはずの言葉をいつも虚空に探している。30万人の心に沁みた『MOMENT』から7年。ほんとうに大切なものは、いつも側にあると気づいた。待望の書き下ろし小説。



【抜粋メモ】


それはたぶん、私の中にもいる女だからだ。
ああ、そうだよ、と私はそっとため息をついた。

一人である。そのことに安らぎながら脅えている。

一人である。そのことに充足しながら不満を抱えている。

一人である。そう知りながらそれを否定している。その女は、確かに私の中にもいた。

私はポケットを探り名刺を取り出した。
「お持ちになっててください」
「は?」
訝りながら橋口淑子その名刺を受け取った。

「財布なりカードいれなりにいつも入れて置いてください。事故だろうが自殺だろうが、うちに連絡がくると思います」

身寄りのない遺体が出る。その持ち物から葬儀屋の名刺が出てくる。
見つけた相手が病院だろうが警察だろうが、一石二鳥だろう。たぶん、真っ先にうちに電話がくる。

「何、言ってんの?」

「それが私が死ぬより前であるなら、私が弔わせていただきます。丁寧に、心を込めて、弔わせていただきます」


「弔うって、ねえ、さっきから何の話?」

「私も親が死んでます。一人っ子で、独身ですし、目下、恋人だと胸を張れるような相手もいません。親しい友人もいません。その私が、あなたを弔います」

「はあ?」

「友人としてとは言いません。ただ、かつて一度親しく言葉を交わしたものとして、あなたを弔います」

橋口淑子の顔から皮肉な表情が消えた。

「もしその前に、あなたを弔うべき人ができたら、その名刺は捨ててください」

皮肉な表情が消えてしまえば、彼女の顔には何も残らなかった。その平坦な顔のまま、彼女は親指と人差し指で名刺の角を支え、名刺にふっと息を吹きかけた。彼女な手の中で、私の名刺がくるくると回った。 [P.183]

【あらすじ (BOOKデータベースより)】


オカリナの音が聞こえると、子供たちが消える─そんな都市伝説が広がるなか、中国系地下銀行から数百億円のプール金が紛失した。四人の金庫番のうち三人が殺され、一人が失踪。これらの“消失”には何か繋がりがあるのだろうか…。“革命小説”シリーズ第8弾。



【抜粋メモ】


「その通りだ。地下銀行の経営者は、送金者から金を受け取り、それを日本でプールしておくんだ。

一方で、送金先の国には、別のプール金を用意しておく。

日本のAから中国のBへ、日本円で十万円ほど送って欲しいと依頼されると、中国のプール金から、そのときのレートで十万円分の元をBに渡すだけでいい」


「つまり、実際には金を動かしていないということか」

「そうだ。しかし、依頼はきちんと達成されているから、誰も困らない。

地下銀行は、正規の銀行よりもずっと安い手数料で送金を引き受けてくれるから、渡り鳥たちにはありがたい限りなんだ。

しかも、二十四時間受け付けてくれる。

こっちの方が、遥かにサービスがいいのさ。正規の銀行も見習って欲しいね」


「安い手数料でも、地下銀行は儲かるんだろ?」

「もちろんだ。何しろ、日本にも送金先の国にも、税金なんて一円も払ってないわけだし、そのうえ連中は、日本でプールした莫大な額をうまくロンダリングし、さらに増やす手段まで持っている」

「だいたい、一つの地下銀行がどのくらいの額をプールしてるんだ?」

「中国、韓国系は百億から三百億くらいと言われている。

もっと多い場合もあるそうだ。

フィリピンやブラジル系となると、それよりは少なくなるが、それでも最近はかなりの額を動かしているという噂だ」

(略)

「日本政府は、昨年は年間約七千億の金が、正規の銀行を通さずに、地下銀行によって海外に送金された可能性があると発表しているんだ。

仮に彼らが、送金額の一パーセントしか手数料を取っていないとしても、七十億は儲けていることになる。

さらに、日本に貯めているプール金を運用すれば、その何十倍もの利益を得ることができるんだ」 [P.58]


【あらすじ (BOOKデータベースより)】


第135回直木賞受賞作『まほろ駅前多田便利軒』での愉快な奴らが帰ってきた。多田・行天の物語とともに、星、曽根田のばあちゃん、由良、岡老人の細君が主人公となるスピンアウトストーリーを収録。



【抜粋メモ】


「ふつう、一番に選ぶやつは、遠慮して小さいのを取らないか?」
行天に声をかけると、
「そう?」
と心底不思議そうな答えが返ってきた。
「それ、知ってるぅ」
ルルが強調された胸の谷間を揺すって言った。「大きな鼓と小さな鼓でしょ?」
「つづらです」
と多田は小声で訂正した。
「おっきいほうにはぁ、ガラクタが入ってるの」
「あー、あの話、ヘンだよね」
行天はチーズケーキを食べ終え、指を舐めた。ハイシーがくすりと笑う。
「どうヘンなの?」
「俺だったら、ガラクタをとりあえず風呂敷に移してから、ひとを試すようなまねをする雀を一羽一羽絞め殺す」
風向きがあやしくなってきた。
「それから?」
「それから、大きいつづらいっぱいになった雀の死骸を持って帰って、ガラクタで焚火してあぶって食う」
今日の夕飯は、なにか腹に溜まるものを用意したほうがよさそうだ。多田はそう判断した。 [P.14]

ジョーカー・ゲーム

ジョーカー・ゲーム

価格:1,575円(税込、送料別)


【あらすじ (BOOKデータベースより)】


結城中佐の発案で陸軍内に設立されたスパイ養成学校“D機関”。「スパイとは“見えない存在”であること」「殺人及び自死は最悪の選択肢」。これが、結城が訓練生に叩き込んだ戒律だった。軍隊組織の信条を真っ向から否定する“D機関”の存在は、当然、猛反発を招いた。だが、頭脳明晰、実行力でも群を抜く「魔王」―結城中佐は、魔術師の如き手さばきで諜報戦の成果を挙げ、陸軍内の敵をも出し抜いてゆく。東京、横浜、上海、ロンドンで繰り広げられる最高にスタイリッシュなスパイ・ミステリー。


【抜粋メモ】


諜報員養成学校第一期生――――。

即ち"D機関"初代の受験者達が選抜試験を受けるところから、佐久間は立ち会っている。

何とも奇妙奇天烈な試験であった。

たとえばある者は、建物に入ってから試験会場までの歩数、及び階段の数を尋ねられた。

世界地図を広げてサイパン島の位置を尋ねられた者もある。

その地図からは巧妙にサイパン島が消されていて、受験者がそのことを指摘すると、今度は広げた地図の下、机の上にどんな品物が置いてあったのかを質問された。

まったく意味を持たない文を幾つか読まされ、しばらく時間が経ってからその文を、今度は逆から暗唱させる試験があった。

いずれも、佐久間の目にはおよそ「馬鹿げている」としか映らない試験ばかりだ。

第一、こんな問題に耐えられる者がいるとは到底思えなかった。

だが驚いたことに、試験を受けにきた者の中には、そのような途方もない――――ある意味馬鹿げた――――質問に平然として答える者が少なからず存在したのだ。 [P.16]


【内容(「BOOK」データベースより)】


お江、そちには宝がある。おのれを信じ、おのれの思うまま存分に生きよ。浅井三姉妹の三女・江、波瀾の生涯、完結。



【あらすじ (BOOKデータベースより)】


「秀忠、おぬし、嫁をとれ」
父の家康が切り出したのは、秀次事件の衝撃さめやらぬ、八月半ばのことであった。

秀忠はさして不覚考えもせず、
「はい、承知いたしました」
と、いつもの如くあっさりと応じた。
「何じゃ、相手が誰か、おまえは気にもならぬのか?」
理解しがたいという顔になる家康に、
「それくらい、考えればわかりますよ」
そう言っておき、秀忠は頭を猛烈な勢いで回転させようとした。
「考えずともよい。江殿じゃ」
家康との言葉に、秀忠は脳天から声を上げた。

「ご、ごごご、江殿?!」 [P.72]

江 (上)

江 (上)

価格:1,680円(税込、送料別)



【あらすじ(「BOOK」データベースより)】


大奥の潔い終焉を描き「篤姫ブーム」を巻き起こした田渕久美子が、大奥の始まりに至る道のりを、浅井三姉妹の三女・江を主人公に鮮やかに華やかに描く。



【抜粋メモ】


お市は髪を三つに分け、それを姉妹の真央にひとつずつ置いていった。

それから、刃を鞘に戻した短刀を長女に手渡した。


「これは長政様より賜りし短刀じゃ。茶々には、浅井の血を後世に遺してもらいたい」


母の覚悟を知り、茶々も泣いた。お市は髪を結んでいた元結をほどき、それを次女に渡した。

「三人のなかで姉も妹も持っているのはそなただけじゃ。初は、姉妹三人を強く結びつけよ」

泣きじゃくる初から江へ視線を移し、お市は帯の間から印判を出して末娘の手に載せた。

「江には、これじゃ」

涙の下から、江は小さい判を見た。そこには「天下布武」の文字が刻まれていた。

「これは…」
江は顔を上げて母を見た。お市は小さくうなずいた。

「そうじゃ。そなたが大好きであった兄上様が下さった。…織田の血を遺すのが、江のつとめと心得よ。兄上様がそうであったように、そなたはそなたらしく、生きたいように生きるがよい」 [P.152]

【あらすじ (BOOKデータベースより)】


「僕は何もしてないよ。あれは、ダラーズみんなでやった事だから─」東京・池袋。この街の休日はまだ終わらない。臨也が何者かに刺された翌日、池袋には事件の傷痕が未だに生々しく残っていた。すれ違うことなく街を徘徊するクラスメイトの男女、弟に付きまとう女の動向を窺う姉、最強の男を殺すために強くなろうとする少女、兄のことなど気にせずひたすら無邪気な双子、今後の自分を憂い続けるロシア出身の女性、過去の未練にしがみつくヤクザな男、休日を満喫しようと旅行に出た闇医者、そして安心しきりの首なしライダーは─。さあ、みんな一緒に、デュラララ!!×7。


【抜粋メモ】


「おかげで……そのおかげで、俺は思い出せた!初心に返る事ができたよ」
---ああ、そうだ。そうだよ。
---俺は、あの『首』を手に入れてから--人間を舐めてたのかもしれない。
---人間以上の存在があると思ってしまった。

「だが、どうだ!見ろよ俺!思い知ったか俺!人間は、かくま素晴らしい!」
(略)
「あなたは、最低の人間だ」
「それでいいさ」
臨也は、それこそ大好きな玩具を手に入れた子供のように、無邪気に無邪気に微笑んだ。

「君達が俺をどんなに嫌っても---」
「俺は、どうしようもなく理不尽な程に、最高に最高に最っっっ高に--君達が大好きだ!」 [P.368]

デュラララ!!×6
アスキー・メディアワークス/角川グループパブリッ 2009年07月発売 文庫 662円(税込)



読書のキロク※ネタバレ注意※

【あらすじ (BOOKデータベースより)】


「彼は、平和島静雄。池袋で一番危ないって言われてる殺し屋なんだ─」臨也に嵌められ街を逃走しまくる静雄。自分の立ち位置を考えさせられる帝人。親友の苦境に今更になって気づく正臣。何も知らずに家出少女を連れ歩く杏里。先に待つ出来事を想像できなかった茜。黒バイクとの接触に興奮を隠せない女。一人悶えつつも帰りを待ち続ける新羅。思い通りに事を運ぼうと画策する青葉。ダラーズに意趣返しを繰り広げる千景。そして首なしライダーが救うのは─。


【抜粋メモ】


岸谷新羅の日記より抜粋
4月30日

当然のことだけど、今日もセルティは可愛かった。
新しい春が来て一ヶ月経つというのに、セルティの愛らしさだけは変わらない。
きっと世界が終わっても、僕が死んで灰になった後も、セルティが可愛かった、
という事実だけは変わらないだろう。

日記を書き始めて半年ほどだけど、読み返してみたら、似たような書き出しだけ
でもう二十回目だ。

つまり、それだけセルティが可愛いという事だ。

いいことだ。
ただそれだけで、今日はいい日だったと記す事ができる。 [P.19]

英雄の書(下)

英雄の書(下)

価格:1,680円(税込、送料別)


【あらすじ(「BOOK」データベースより)】


“英雄”を捕え兄を連れ戻すべく、数多の物語を旅する少女の過酷な追跡が始まる─。現代を合わせ鏡に、いまを生きる私たちの姿を描き出すファンタジー。



【抜粋メモ】


朝に一人の子供が子供を殺す世界は、夕べに万の軍勢が殺戮に奔る世界と等しい。
何度も聞かされた台詞じゃないか。

一にして万。万にして一。
この万は、よろず---世界のすべて、"輪"のなかの"あらゆるもの"という意味だった。


「それなら、誰が悪を裁くの。悪いことをした人間を懲らしめちゃいけないの?」


ユーリの悲鳴に似た問いかけの残響が消えるまで、アッシュは沈黙していた。
それから、穏やかに言った。


「そのためにこそ、人間は"法"という物語を作ってきたんじゃないのか」


人間の永い歩みのなかで、数多の間違いを繰り返し、犠牲者を生み出し、嘆きの川を渡りながらも---


「"法"は人の歩みの後ろにつくり上げられる。だからこそ過ちもある。しかし、それでも、"法"を忘れて人が人の前に、手前勝手に己の物語をつくり、それを生きようとするならば、それは罪なのだよ」
両手で身体を抱いて、ユーリは泣いた。 [P.297]