【あらすじ (BOOKデータベースより)】
「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」―15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。家を出るときに父の書斎から持ちだしたのは、現金だけじゃない。古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト、濃いスカイブルーのレヴォのサングラス。小さいころの姉と僕が二人並んでうつった写真…。
【抜粋メモ】
「プラトンの『饗宴』に出てくるアリストパネスの話によれば、大昔の神話世界には三種類の人間がいた」と大島さんは言う。「そのことは知ってる?」
「知りません」と僕は言う。
「昔の世界は男と女ではなく、男男と男女と女女によって成立していた。つまり今の二人ぶんの素材でひとりの人間ができていたんだ。それでみんな満足して、こともなく暮らしていた。ところが神様が刃物を使って全員を半分に割ってしまった。きれいにまっぷたつに。その結果、その結果、世の中は男と女だけになり、人々はあるべき残りの半身をもとめて、右往左往しながら人生を送るようになった」
「どうして神様はそんなことをしたんですか?」
「人間を二つに割ること?さあ、どうしてかは僕も知らない。神様のやることはだいたいにおいてよくわからないんだ。怒りっぽいし、あまりにもなんというか、理想主義的な傾向があるしね。想像するに、たぶんなにかの罰みたいなものだったんじゃないかな。聖書にあるアダムとイブの楽園追放みたいにね」
「原罪」と僕は言う。
「そう。原罪」と大島さんは言う。
(略)
「とにかく僕が言いたいのは、人間がひとりで生きていくのはなかなか大変だということだよ」 [P.79]
