選抜クラスの宗田です。
アクセルゼロで学んだ3年間、そして森川先生の授業を通して気づいた大切なことをここに記します。
この内容は、
自分の声があまり好きではない人や、もっと◯◯さんみたいな声だったら良かったのにと感じている人に届いたら嬉しいです。
【声は口から出ている?】
小学生の頃の私は、テレビから流れてくる吹替映画が大好きでした。海外の俳優さん達の口から流暢な日本語が飛び出してくる。本来ならありえないことなのに、違和感無くそこに存在する声優さん達の声に夢中で耳をすませる自分がいました。
それから約10年後。お芝居に興味があった私は大学で演劇部に入ります。そこでの活動がきっかけでコントの世界へ進むことになり、ありがたいことに芸人として舞台やTVでお仕事をいただけるようになりました。本当に運が良かったんだと思います。だから毎回必死に臨みました。「自分の口から出る声」を精一杯使ってコントの世界でお芝居を続けました。
見てくださる方や応援してくださる方に声が届くように、必死に。
それから約10数年後。私は越えられない壁にぶち当たります。「私の声は周りの音にすぐかき消される」「声に個性がない」「思い通りに声を使った表現ができない」……私は、私の声が好きじゃない……自分で自分を否定する気持ちが強くなりました。
不安や緊張をかき消す為に、大きな声を張り上げる。張り上げれば張り上げるほど、喉は傷つきボロボロになっていきます。そう、私は人間の発声のメカニズムを理解しないまま、首や肩や鳩尾や背中をグッと力で固めて声を出し、お芝居をするようになっていったのです。
もうそうなってくると、声の自由はなくなり、表現の幅は狭くなり、自分のお芝居がとてもつまらなく色褪せて……限界を感じてしまったのです。
【じゃあどうするか?】
今のままの私では、もうこれ以上、面白みのあるお芝居ができない。詰んでる。じゃあどうするか?
今のままの私で無理なら……変わればいいんじゃないか?
子どもの頃夢中で見た吹替映画。聴く人をワクワクさせてくれたあの声、あのお芝居がどうやって作られたのか、大人になった今、きちんと研究して身に付けたらいいんじゃないか?そう思ったのです。
【アクセルゼロへ入所】
今まで、動きや表情に頼ったお芝居をしてきた私は、自分自身の声ときちんと向き合う為にアクセルゼロに入所する決断をしました。森川先生が様々な作品の中で魅せる「声の表現力の秘密」を知りたかったからです。
ところが私の場合、入所して一年目、二年目は発声の基礎を身につけるだけで精一杯でした。「表現力」なんて手が届かないのです。出来るようになったかな?と思いきや次の日にはもう出来なくなっています。声というものは目に見えませんから、なかなか感覚を掴めません。自分の喉を切り開いて覗くわけにもいきません。
私は人体解剖図の本を買い、声が出る仕組みを0から勉強しました。声帯はどこにあって、どんな風に筋肉が繋がっていて、どう動くのか?それらを学んでいくうちに、発声というのは全身の筋肉の協調によって生まれるということを知ったのです。声は喉だけで出してるわけじゃない……!
入所して三年目。ついに森川先生の授業が始まりました。授業初日、目の前で喋る森川先生の声に圧倒されたのを覚えています。
張り上げてないのに通る声。聞き取りやすい速度と間。そして……声が……口から出ていないように聞こえる?!いや、口から出ているのかもしれないけれど……森川先生の身体全体から響いてる!?
私の勝手なイメージですが、綺麗に揃った音の粒が高濃度で空間に解き放たれている感じなのです。
私は耳を疑いました。人ってこんな風に喋ることができるのか……私もこんな風に喋れるようになりたい。
それからというもの、私は毎週授業の度に、森川先生がどんな風に全身の筋肉を使い、どんな風に発声しているかをつぶさに観察するようになりました。
本当に運が良いことに、私は森川先生の目の前の席です。
喋っている時の呼吸はどの程度か?体の軸はどこか?座っている時と立ち上がった時で違いはあるか?表情筋はどう動いているか?口はどのくらい開けているのか?普段の喋りとセリフを言う時ではどんな違いがあるのか?喋り始めは?語尾は?……
録音した音声や、テキストの文字だけでは得られない発声の情報を、自分の五感をフル稼働させて収集し、持っている知識と繋げ合わせていきました。そして、自分自身の発声を全て見直していったのです。
すると、ある1つの状態に辿り着きました。私が辿り着くぐらいですから、先達が知らない訳がない。辞書を調べてみたら、ありました。私が辿り着いた状態、それは「上虚下実」。
森川先生が言葉を発する時の身体の状態はまさに上虚下実なのです。
上半身の余分な力が抜け下半身が安定している身体の理想的な状態。
武道などでよく使われる言葉のようです。
この上虚下実に気づいてから、発声でつまずいていたポイントが一気に解決したように感じます。何よりも、身体への負荷が少ないので、かつての自分よりも非常に楽に声を出せるようになったのです。
「あ、声を出すのって楽しい!」
そう思えた瞬間でした。
同じクラスに、立ち姿がとても安定していて発声がとても上手な友人がいます。「その立ち方、どこで習ったの?」と聞いたら「弓道をやってたから自然とこうなっちゃう」と言っていました。やっぱりそうか、武道の基本姿勢……と腑に落ちて全てが繋がっていくように感じました。
そしてやっとこの段階にきて、自分が自分のお芝居と向き合うタイミングが来たなと感じました。
上虚下実でいる時、上半身にゆとりができるので、そこに演じる役を入れるスペースが生まれるのです。息が声帯を通って音を鳴らし、その音がゆとりのある上半身に響き声になる。
だから、森川先生のような「人々に長く愛される一流の声優・俳優さんや歌手の方々の声」は、口というよりも、その人の身体?顔?頭?から響いてくるように感じるのかもしれない、と予想しています。そして、そのような声はとても立体的で奥行きを感じます。空間を表現できる声と言えばいいのでしょうか。
過去の私は、「声は口から出すもの」という意識が強すぎて、上半身を力でガチガチに固め無理矢理喉を締めて、どんな声を作ろう、高くてカワイイ声?低くてカッコイイ声?この声でるかな?……こんな風に、お芝居の本質とはかけ離れた所にいたように思います。
上虚下実でいると、自分の身体の在り方が安定します。緊張しすぎず、油断しすぎない、ニュートラルな状態?でいられるように思うのです。そうすると「力で無理に作った声」に非常に違和感を感じるようになったのです。聴く耳が変わってきたのかもしれません。
【点と点が……】
様々な気づきを通して、バラバラだった点と点が一気に繋がり線になりはじめました。ここに記したことは全て私なりに学び、導き出した答えのほんの一部です。もしかしたら見当違いかもしれません。でも、正しいか、間違っているか、これからも私の人生を通して誠実に検証していきたいと思います。
いずれにせよ、3年前の自分と今の自分は、確実に変化する事ができました。それが何よりも嬉しいのです。じっくりと自分の心と身体に向き合い、自分の声を愛することができるようになりました。
森川先生の「自ら手本を見せてくださる姿勢」と「客観的な事実を的確に伝えてくださる指導方法」が、私に大きな気づきを与えてくださいました。この経験は私の人生にとってかけがえのない財産です。
森川先生という師に出会えたこと、そして、いつも温かくサポートしてくださったアクセルゼロ事務局の皆様、携わってくださった講師の皆様に深く感謝申し上げます。
選抜クラス 宗田