創業65年超。工場の町で近隣の皆さんの胃袋を支える大衆食堂のお話し。



阪神なんば線。それは、

阪神尼崎駅と近鉄大阪難波駅を結ぶ路線なのですが、

先のプロ野球日本シリーズでは甲子園から大阪ドームまではこの線で電車一本で行けるものだから、地元の人々は「なんば線シリーズ」と言って喜んだのです。


とは言え、普通に沿線を使ってお勤めしている方々にとっては、期間中は電車内日々野球客でごった返して大変な思いをされたようですが、

ようやく落ち着きを取り戻した阪神沿線なのです。



そんな、なんば線の各停しか停まらない小さなローカル駅「福」。


なんとも縁起の良い名の福駅周辺は、

中小の町工場と住宅が入り交じった大阪下町風情が残る場所。


なのですが、数年前に近隣駅にあった中規模の病院が立派な病院へとスケールアップして福駅横に移転し、やや注目度が上がった町でもあります。


(千船病院)

そんな福駅から北へ10分弱、町工場と住宅や中学校を縫うようにして辿り着いたのが食事処「丸喜」。
丁度午後1時。
店内は4人掛けテーブル席が4卓。白いディズニーキャラのテーブルクロスが清潔で親しみやすい。
奥にはお座敷もありそう。


席についてメニューを見る前に目についたのがおでん鍋。 
近寄って見てみると、まぁ色濃い出汁の中に沈むよく染みたおでん種の数々。

そんな中から、大根・牛すじ・ごぼう天をリクエスト。 横に立つ女将さんがひとつひとつしっかり染みたのを選んで下さる。
ビールは瓶ビール大。アサヒ・キリンの選択肢からキリンラガーを。
生ビールも大中とあるようです。


大根はちゃんと面取りしていて、繊維感も無く大変柔らかくて旨い。
牛すじはトロトロ。関西おでんには欠かせない一品。
ごぼう天は他の地方ではごぼう揚げとかごぼう巻きなどと言うのでしょうか? 関西では練り物まで天ぷらとか、揚げ天などと言うようですが、全国的にはどうなのでしょう? 各地方でおでん種の呼称が随分違うように思います。
とにかくこちらのおでんは呑兵衛には打って付けの酒がすすむ味。

おでん種全てを頂きたいくらいだけど、こちらのお昼時間は14時までで、長居は禁物。
ご飯を食べよう。

で、少し迷って、
〆に選んだのはカレーライス。
お願いすると、女将さんは厨房の格幅の良い若大将に「カレーいける?」
と問いかけ、若大将はOKと。
若大将を勝手に若大将と呼ばせて頂いてるが、息子さんかな? 
若大将は雪平鍋で丁寧にカレーを温めている。
大衆食堂のカレーといえば、イメージするのは人参じゃが芋が入った「おふくろのカレー」。
だけど、出されたカレーはそんな先入観を裏切る
レストラン仕様なカレーライス。

ややサラサラしたカレールーと挽き肉のカレー。
そこそこのスパイス感で、香りも豊か。630円という安さだけど、ここに牛肉がコロっと三つばかり入ってればレストラン並みに千円超えでよいでしょう。
しかし、ここは下町の大衆食堂。
されど、このカレーはコックさんの手作りの一品と双璧。

想像するに、若大将は洋食レストランで腕を磨いたのではないでしょうか?
併せてオーダーした玉子汁も丁寧に火加減を見ながら、白身にトロトロの黄身が包まれるように仕上がってて、150円にして上等なお味噌汁でした。


今から若大将と呼ばずにシェフと呼びたい。
と、頭の中で勝手な事を宣いながら、
お会計の際に女将さんに、
「こちらは古くからされてるんですか?」と伺うと、
屈託の無い笑顔で
「65年です……」「いや、もっとかも知れへんわ〜」と、アバウト。
きっと65周年後は数えてないのでしょうね(笑)
店内滞在中に近所の方々がお弁当を取りに来ていて、定食やお弁当も人気な地元に根ざした下町風情の素敵な食堂でした。
またシェフの手作り料理を食べに来よう。




PS. この辺りは海抜マイナス地域なんだ〜