新開地駅構内に「神戸製麺所」という名の立喰い蕎麦屋さんがある。
この店は8月末に知人のライブを観た帰りに目に止まり、空腹を補うために立ち寄ったお店だ。
軽くお蕎麦をと思い、券売機の前に立って意外なメニューを見つけてしまい、其の券を買って中に入った。蕎麦ではなく「中華カレー」だ。
だが食券を見せると店のオヤジさんは「すみません、ご飯が切れまして・・・」と。そして申し訳なさ気に小銭が返金された。 


それ以降、この立喰い蕎麦屋の中華カレーが気になっていて、次に神戸に用事がある時は必ずこのカレーを食べに行こうと心に決めていた。

そんな思いを持ったまま日々を過ごすと勝手な思い入れが徐々に膨らんでしまう。
立喰い蕎麦屋の中華カレーに対して元町にある人気中華「香美園」の名物カレーのまったりと中華出汁を効かせた心に残る味わいに思いを重ね、いつの間にか期待値が上ってしまう。通りすがりの立喰い蕎麦屋のカレーに・・・。

(香美園のカレー😋)

そして、今日その時が来たのだ。 
元町に行く用事が出来た。

そうだ、新開地駅構内の蕎麦屋だ!駅構内だから電車代の上乗せもいらない(ケチ)。今日がチャンスだ「中華カレー」!
電車の中で思いを巡らせる。具材はシャキシャキの玉ねぎと豚バラ肉か、いや鶏かも。中華鍋を振るスペースは無かった筈だから中華スープでしっかり煮込まれているに違いない。後で飲みに行くからご飯は半分にして貰おう・・・。

新開地駅に着いた。蕎麦屋の前に立ち券売機で「中華カレー」と小ビールの食券を買う。
暖簾をくぐりカウンターだけの店内でオヤジさんに食券を渡す。
「ご飯少なめでお願い」「中華カレー、ご飯少なめね」
オヤジさんは手早くご飯を盛り、鍋からカレーを、、、 ん?ん?ムムム?!
な、な、なんと!
真っ白なレトルトを湯煎鍋から取り出しご飯に注いでるではないか! 
そうか、ここは駅構内の立喰い蕎麦屋だった。私は何を勘違いしてたんだ、、、


出されたカレーには玉ねぎがほどほどに牛肉もそれなり。レトルトカレーとしては悪くは無いが「中華」が何処にもない。オヤジさんは食券を渡した時「中華カレー」と読んだ。商品名は間違い無く「中華カレー」なのだ。

ご飯はもち麦が入ってて立喰い蕎麦屋のカレーライスとしては申しぶん無いが、私の中の「中華カレー」は宙に浮いたままふわふわと漂い、この皿の中には無い。
レトルトが中国産なのかしら? 
オーナーがたまたま中国人なのかしら? 

真実を問うこともなく、私はひたすらこの「中華カレー」を食べながら小瓶ビールを呑み、心の中でつぶやいた。
「きっと何かの、間違いだ・・・」

だが、しかし、真実は闇の中だ。

なんとなく。ふと、
残された人生をしっかり生きよう……
と、思ったのでした。

ト、ホ、ホ・・・

ps.半月ほどして、また知人のライブがあり、お店の名誉のため再訪。
ここはコシの強い自家製韃靼(だったん)蕎麦が有名なんですよ!
コシと粘りがあって、美味しかった〜。  お蕎麦。 

               完