随分前に書いた日記を再編集したものです。

灘五郷のひとつ、魚崎郷の酒蔵、
桜正宗が「正宗」の発祥と知ったからには、
居酒屋「正宗屋」ファンとしては行かねばなるまい。
 
1840年、仏教の経典にある臨済正宗(りんざいせいしゅう)と清酒をかけて取り入れたのが発祥だという。
その桜正宗の会席レストラン桜宴に併設される「三杯屋」を訪ねました。


 カウンターのみの店内。日本酒25種、酒肴は三百円前後からさまざまに気の利いた小鉢たち。
しかし、「三杯屋」。何処かで聞いた名だ。パクリか?と、思ってたら目の前のカウンターバックに横浜の「武蔵屋」の土瓶や酒器が。
武蔵屋とはH27年に店主ご高齢の為に惜しまれつつ廃業した、清貧の名酒場(太田和彦さんの著書から引用)と謳われた居酒屋。
なぜそんなものが? と、説明を受けてすべてに合点が。
三杯屋とは横浜武蔵屋の通称で、行儀よく酒は三杯までと決められていたのです。
この桜宴の三杯屋は古くから桜正宗と親交が深かった武蔵屋の思いを継承すべく、横浜まで出向き「三杯屋」という屋号を使う事の了承を戴いたのでした。
廃業した武蔵屋の女将木村喜久代さんは御歳90を過ぎながら、この桜宴の三杯屋に訪れ酒器を提供なさったのです。武蔵屋の歴史と女将の半生は舞台でも演じられ、そのパンフレットと武蔵屋のイラストがこの三杯屋に。




ついぞ行けなかった清貧の名酒場の心の継承に、図らずもこの魚崎郷桜正宗で出会えるとは夢にも思わず、目頭が熱くなり思わず手洗いへ隠れたのです。
近郊に住む私にとってほんの近場に於いて、とても遥かなる旅をした気持ちになりました。
酒の場は人を育ててくれる場所。
佳き酒呑みであろうと改めて思えたささやかで豊かな時間でした。
カウンター9席の三杯屋。この日頂いた酒のつまみは豚みそ胡瓜、サヨリの南蛮、牛肉佃煮。





カウンターの向こうに武蔵屋さんの土瓶や酒器が。


お料理は小鉢類やおでん等。隣の会席レストランの厨房で作られてくる小鉢類には幸せがいっぱい詰っているのです。