柔らかい管の集合体内部で揺曳する細かい粒子の大群、泡沫。 -6ページ目

大抵、惹かれるとのめり込むので頭がついていくのだが、ついていけないことがいくつかあって、その内の一つが熊楠だった。

十二支考は岩波の文庫すら金がないために買えず、青空文庫で読もうとしたのがまず最初の過ちだった気もするが、しかし買っていても到底読み切れなかっただろうと思ってしまうのは、密度と難解さから。

試しに昨日、時間と集中力の許す限りに挑戦したが、やはりダメだった。途中で頭がついてこなくなり、一日中歩きとおしたあとに全力疾走を強いられるような、もつれ。もつれたのはきっと脳内の血管、しわとしわ。懸命に食らいついて、それこそ死にもの狂いで縄を手繰るが、やがて押し寄せる文章に押し流されて見失ってしまうような、そんな感覚。覚えながら、真正の博識を垣間見た気になって。いつかその智慧に触れることができたのなら、それはどんなにか嬉しい、喜ばしいことなのだろうと夢想して。今日も立ち向かう、つもり。

そして智慧に触れたあかつきにはその喜びを皆さんにお伝えする、つもり。

熊楠には、首を洗って待っていろ、とそう言っておいてください。