『鎌倉殿の13人』第29回『ままならぬ玉』感想(ネタバレ有) | ~ Literacy Bar ~

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※基本、ネタバレ有となっていますので、ご注意下さい。

突然ですが、来週の更新はお休み致します。もしかすると再来週も休むかも知れません。理由はシンプルに休養のため。毎週毎週『鎌倉殿』が面白く、その感想記事のUPに力を入れて参りましたが、ここら辺で一度休養を取っておかないと後半の怒涛の族滅展開と、今年後半のリアル用事の忙しさについていけなくなる気がしましたので、お盆休みを頂戴致します。尚、リアルではお盆はほぼフル出勤が確定している模様。

ちなみに来週は久しぶりの日曜休みが確定していますが、通常通りに『鎌倉殿』の生実況をやるか、それともBS12で放送される『千年女優』の実況をするかで真剣に悩み中。あれ、私の好きな邦画トップ10に入る名作なのに、滅多にTVでやらないから実況の機会を逃したくないんだよね。でも、来週の『鎌倉殿』も全成退場で盛りあがりそうだからなぁ。

今回のポイントは3つ。小ネタは多かったけれども、基本的に次回へのネタ振りがメインでしたので、見所は案外少な目な印象。

 

 

 

善児「あの御方も人が悪い。試されたのですよ、わしの天運を」

 

 

何と中身は兄貴の巾着だった!

 

巾着の中に別の巾着という、ちょっとしたマトリョーシカっぽい構造になっていた平三の置き土産。序盤で善児が平三に捕えられた&直後に伊東の爺様の密殺が執行された際、小四郎が善児の仕業と知らされていたかが鎌倉殿界隈で議論の種になっていましたが、今回のシーンで『伊東の爺様の指図があったことは察しているが、下手人が誰かまでは伝えられていない』というのは確定したと思います。

ここで巧いのは平三の遺言の巧みさ。もしも、小四郎が巾着の中身を見る=徒に他人の秘密を暴いて誰かをハメようとする私欲に塗れた人間であれば、小四郎は善児という武器を自ら始末するから、自分(平三)と同じような力を持つことはない。巾着の中身を見ない、或いは中身を見ても個人的怨恨で誰かを処罰するような人間でなければ、小四郎は善児という武器を使い続けることが出来る。どちらに転んでも鎌倉のためになるように計算されているのですね。

私自身は小四郎は巾着の中身は見ていないと思います。前回の頼家NTR事件もそうでしたが、本作の小四郎は政治レベルの問題には容赦のない謀略を用いる反面、政治レベルに達していない個人レベルの善悪に関わる事案には極力首を突っ込まない&突っ込んでも平凡で常識的で判断を下す傾向が強い。権力者であっても個人の秘密や内心に土足で踏み込むべきではないという価値観の持ち主なのでしょう(ただし、それが政治レベルの脅威となる場合は除く)。そうでなければ、平三も自身の後釜に指名したりはしません。また、小四郎には巾着の存在自体を善児に伝えない選択肢もあったでしょうから、物証を下手人に返した以上、中身の確認の有無に拘わらず、この件で善児を罰する意志はない、或いは捨てたと考えるのが妥当と思われます。まぁ、シレッと中身を似たような巾着にスリ換えておいて、のちのち『こっちがホンモノの証拠だ』と首チョンパする可能性もなくはありませんが。

そして、今回は二代目善児ことトウちゃんがデビュー。先代は目立たない外見からの不意打ち特化型という『ブラックラグーン』でいうフィラーノ派でしたが、トウちゃんはシェンホアも顔負けのアクション派。正面からソロで戦ったら親父を瞬殺しそうです。ただ、何せ鎌倉殿の世界観ですから、次回でトウちゃんがアッサリと全成の返り討ちに遭って、善児がまだまだ現役続行に追い込まれる可能性もアリ。

 

 

 

りく「勿論、生命を取ろうとは思っておりません。暫く病で臥せって頂ければよいのです」

 

基本的に呪いという奴は相手を不幸のズンドコに叩き落すためにアクセルベタ踏みするものですが、ちょっと寝込んで政務が取れないくらいで済ませておいてといわれると、逆に戸惑ってしまうもの。フルスイングが持ち味の助っ人外国人にセフティーバントのサインを出すようなものに思います。思えない? ただ、多少のネタバレを承知で申しあげると全成さんは結果的にりくさんの微妙な匙加減のオーダーを完璧に叶えることに成功します。風は起こせない、秀衡呪殺の祈祷は失敗する、予知の的中率は5割(普通の判断と変わらん)と『いだてん』の占いババア以下のポンコツ呪術師でしたが、最期に見事な爪跡を残す模様。

尤も、祈祷の計画自体は小四郎にダダ漏れというのがらしいといえばらしい。妹の愚痴から全てを察してしまった息子にカマをかけられて、

 

北条義時「ひょっとして、全成殿は呪詛をかけているのでは?」

北条時政「誰に?」

北条義時「…………(ジーッ)

北条時政「馬鹿を言え! 鎌倉殿はワシの孫だぞ!」

 

とあっさり『秘密の暴露』をしてしまう時政パッパ、伊東の爺様に挑発されて頼朝を匿っていたのをゲロッてしまった頃からまるで成長していない。小四郎は親父の『詰め方』を伊東の爺様に学んだのかも知れません。本作のキャラクターは『どうやったら、こんな気のいい連中が後半の族滅展開に奔ることになるんだろう』と思っていたら、性格が昔のまんまで普通に成立しているのが怖い。成長とか変化とか闇落ちとかではなく、元々の本質が出ているだけ&彼らを取り巻く状況が変わったので、周囲への被害がデカくなっただけなんですよねぇ。実衣ちゃんも多少、権力への階梯に興味を抱いたフシがあったとはいえ、全成や結城朝光などの胡散臭いカルチャースクールのイケメン講師タイプに弱い点では昔と全く変わっていないし、小四郎にしても、

 

北条義時「判っていないな、おなごというものを……初は寂しかったんだ、一人残されるのが。だから、ワザとそういうことを言うのだ。山ほど土産を抱えて帰ってくれば、機嫌を直してくれる。いいことを教えてやろう。おなごというものはな……だいたい、きのこが大好きなんだ( -`д-´)キリッ」

 

と女性観については何一つアップデート出来ていないというオチ。

 

 

 

源頼家「縄のようなものはないが、縄はあったぞ!」

 

『鼓判官の井戸落ち』とかいう私も直前まで知らなかったエピソードを元に描かれた頼家の心情吐露イベント。前回のNTR事件で些か性格ひん曲がり過ぎた印象のある頼家のフォロー&次回以降の地獄展開への布石として、何らかのイベントが必要ではあったのも事実ですが、正直、マニアック過ぎて誰得だよと思わないでもありません。序盤の頼家による訴訟地分割エピソードは従来型アホボン頼家のうつけエピソードではなく、政治への情熱を鬱屈させた青年政治家として描いていたので、こっち方面からのフォローが欲しかった。小四郎との腹を割った話にしても、

 

北条義時「頼朝様は人を信じることをなさらなかった。お父上を越えたいのなら、人を信じるところから始めてはいかがでしょう?」

 

作中で誰よりも信じてはいけないキャラクターに人を信じろと言わせるのはいい意味でも悪い意味でもジワジワきてしまいました。頼家の性格が歪んだ原因の半分近くは小四郎の所為やからなぁ……とはいえ、小四郎にとっても全成にとっても、肩肘張った未熟な鎌倉殿ではなく、一人の可愛い甥っ子として心を通じ合わせるには多少の生命の危機はやむを得なかったとも思います。全成と頼家の『ファイトー!』『いっぱーつ!』っぽい救出シーンもツボ。

勿論、本作におけるほろり&ほのぼのとさせるシーンの9割方は当該人物の退場フラグであり、今回も例外ではありませんでした。

 

実衣「全部集めてきたんでしょうね? 残っていたら、またエラいことになりますよ?」

阿野全成「大丈夫、皆持ってきた」

 

何を見て『ヨシ!』って言ったんですか?

 

呪詛人形を一つだけ置き忘れるとか、完璧な現場猫案件じゃないか。これ、流れ的に井戸端のドタバタで全成の懐からポロリと落とした人形を、あとで鞠を拾いに行った鼓判官が見つける展開になると予想していたのですが、ガッツリと床下に置き忘れていました。これは100パー全成の不手際なので同情の余地なしですね。ただ、人形を持ち去った謎の人物の動きを見るに、何かの拍子で目にしたというよりも、そこにあることを確信していた印象もあったので、或いは全成が回収する前に事情を知る者が事前に持ち去った可能性もありそう。そうなると容疑者は小四郎りくさんしか思い浮かばないぞ。手から察するに女性っぽいので、トウちゃんの初仕事=前者の確率が圧倒的に高い。りくさんは基本的に時政の屋敷にいる筈ですからね。

しかし、それにしても、本作でもトップレベルの不穏な引きでした。以前によく訓練された鎌倉殿視聴者はスタッフテロップがOP明けに出るかラスト近くで出るかで当該回の山場の位置を察するという友人の見解を書いた記憶がありますが、今回はEDテロップ後の残り数秒で一気に視聴者の血の気を引かせる構成。視聴者さえも作中の騙し騙されな世界観に引きずり込もうとするスタッフの心意気、嫌いじゃない。