『鎌倉殿の13人』第23回『狩りと獲物』感想(ネタバレ有) | ~ Literacy Bar ~

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ここはイマイチ社会性のない自称・のんぽりマスターの管理人が、
時事、徒然、歴史、ドラマ、アニメ、映画、小説、漫画の感想などをスナック感覚の気軽さで書き綴るブログです。
※基本、ネタバレ有となっていますので、ご注意下さい。

 

おかげさまで無事に『引っ越し』を完了致しました。

まぁ、引っ越しといいましても、リアル住所の転居ではなくPCの引っ越しでしたが、拙ブログは『ネットの片隅に寄寓したササヤカなBARをイメージ』という自分でも忘れかけていた設定を踏まえると、広義の意味での引っ越し or 改築に当たるのではないかと思います、思えない? ちなみにブログを始めて以降、今回で3台目のPC。先代は『平清盛』~『八重の桜』の頃に買い替えたので、このブログで一番忙しい10年間を頑張ってくれたことになります。先代さん、本当にお疲れ様。

尚、買いたてホヤホヤのPCはキーボードの位置に指が慣れないので、文章の作成よりも入力のほうに時間がかかりそう。我ながらAltキーと無変換の押し間違えが多過ぎるぜ。そんな訳で今週&暫く記事は短め。本当は最終回を迎えて以降のポリコレ系ゴールデンカムイ界隈の迷走っぷりも記事にしたかったんだけれどもなぁ。

 

 

 

 

万寿「……巻狩りにはそれぞれのドラマがあります。『獲物が獲れない獲れない』といって、最後には剥製の鹿を仕留めさせられた者。『獲物が獲れないなら僕の毒を使いな』と、死んでしまった九郎の面影を未だに引きずっている者。獲物が獲れない主君の息子の目の前で、空気も読まずに鴨を射落としてしまう者。『性欲を持て余す』と義弟の後妻候補に夜這いをかけようとして、結果的に生命が助かってしまった者。仇討ちを装ったクーデターを計画していたのに、クーデターを装った仇討ちにされてしまった者……巻狩りにはいろんなドラマがあります。そんな中で皆、必死になって獲物を狩るんです……建久四年五月二十八日、動物は一匹も出ません」

 

 

 

 

『ジャングルリベンジ』終盤の大泉の名言を想起した富士の巻狩り回。鎌倉幕府の隆盛を誇示する一大ページェントにも拘わらず、参加者の殆どが不本意&不幸に見舞われたりする点でも『ジャングルリベンジ』に近いものがあるように思います。取り合えず、頼朝の代わりに抹殺された工藤さんと『仇討ちの勇士』という冤罪ならぬ冤誉(?)で処された工藤兄弟が可哀想候補のツートップですが、彼らの場合は自業自得の側面も拭えないので、やはり、最も不本意であったのは遠目にもバレバレの剥製の鹿による接待巻狩りを受けた万寿君でしょう。『初めてのアフリカ』のスティーブがいたら、狩りの獲物も全部100単位で出せるよぉと余裕で請け負ってくれたでしょうに……と別のどうでしょうネタも思い出してしまいました。イノシシ、めっちゃいるよぉ!

今回のポイントは6つ。数多めで中身少なめ。

 

 

 

「ブヒヒー!」(イノシシの鳴き声)

 

イノシシの鳴き声でスタート。富士の巻狩りでイノシシといえば、頼朝目がけて突進してきたイノシシを仁田忠常が仕留めるエピソードを期待しましたが、残念ながら描かれず。全くの余談ですが、田中芳樹センセによると中国では甥を粗略に扱う君主は狩りでイノシシの逆撃を食らって死ぬ法則があるそうで、例として明の永楽帝や清のドルコンを挙げておられました。その説に則ると義経の男児を抹殺した頼朝も甥に厳しい君主といえなくもありません。上記した仁田忠常の場合、彼が仕留めたイノシシは山の神であり、彼の末路は神罰に拠るものという伝承がありますが、そうなると頼朝は神に襲われたということ。この時期、既に頼朝は現世から消されるべき存在と見做されていたのかも知れません。そう考えるとラスト付近の頼朝の『今回は天の導きがなかった』という台詞も更に味わい深いものに思えます。

 

 

 

畠山重忠「巻狩りを取りやめにする訳にはいかないのですか?」

北条時政「鎌倉殿が許す筈があるまい」

北条義時「あの方は企てのことはご存じない」

畠山重忠「お伝えしたほうが宜しいのでは?」

北条時政「お伝えしたところで取りやめにはなさらぬ。源氏の威信に傷がつくだけだからなぁ」

畠山重忠「ならば、出来ることは守りを固めることのみ」

 

頼朝暗殺計画が進行しているのも拘わらず、巻狩りを止めることは出来ないジレンマに苛まれる三名。少し前まででしたら、腹を割って話せば何とか通じたかも知れませんが、広常、義高、九郎の誅殺を経た征夷大将軍・源頼朝は色々な意味で話せば判る相手ではなくなってしまっています。頼朝自身の猜疑心もですが、幕府肝入りのイベントを途中で中止するのは立場上、出来ない。仮に頼朝に報告をあげたところで、小四郎たちへの指令は『内々に処理せよ』となるに決まっています。要するに話しても話さなくても小四郎たちのやることは同じである以上、無用の混乱や猜疑心の種は招かないほうがいいというのが三人の思惑。実際、官僚的判断としては完全に正しく、巻狩り現場での事後処理も完璧でした。問題は蒲冠者を筆頭に現場にいない鎌倉の人々が彼らの思惑を越えた動きをしてしまったこと。この辺は次回以降の地獄絵図に繋がると思われます。情報の占有は一時的な有利となるが、最終的には更なる混乱を招く好例ですね。

尚、今回が北条家の陰謀に初参加となる畠山重忠さん。宗時亡きあと武辺者を欠いていた北条家にとって、実戦面で非常に貴重な存在です。これには時政パッパも『頼りになる婿殿じゃ』とご満悦。これからも仲のいい舅殿と婿殿としてお互いをリスペクトしあうんやろうなぁ(遠い目)

 

 

 

金剛「父上、見て下さい!」

北条義時「おう、金剛」

 

成長著しい金剛(テロップママ)

 

前回から一年でほぼほぼ別人に成長した金剛ちゃん(10)ぶっちゃけ、もう20歳くらい加齢していそう。本作では三浦義村(8)というのもありましたが、あちらは正確な生年が不明なうえ、中身はメフィラス星人なのでセーフです。セーフじゃない? ここだけの話、三浦義村のよく判らんキャラクター設定は『シン・ウルトラマン』のおかげで随分と視聴者の脳内補完が楽になっていると思います。

さて、色々な意味で成長著しい金剛ちゃん。滝壺に飛び込まなくても、包帯を取らなくても、鏡を覗き込まなくても、テロップだけで中の人の交代をエクスキューズしてしまう『鎌倉殿の13人』パネェ。正直、禁じ手です。三谷大河じゃなかったらアウトです。いや、三谷大河でもギリギリアウト臭い。今回は面白かったのでアリですが、同じ方法を他の大河ドラマでされたらヤバいので、本作限定の使い切りネタにして欲しい。狩りで仕留めた獲物を不猟で悩む頼朝親子に見せようとしたり、誰もが剥製と判っている万寿の獲物についてあれこれ突っ込んだりとKYなところが見受けられますが、10歳だからね、仕方ないね。

 

 

 

畠山重忠「遂に現れたか……かかれ!」

 

曾我兄弟の襲撃を待ち受けていた畠山さん。イケメン&誠実&主君を守る最後の盾というポジションは『銀英伝』の鉄壁ミュラー感あります。ただ、今回は迎撃するまではよかったものの、ものの見事に曽我弟を打ち漏らし、頼朝の寝所に踏み込まれるという大失態。『修羅の刻』でも陸奥鬼一の足止めに失敗したことを思うと、実は防御が苦手でオフェンスで輝くタイプなのかも知れません。ミュラーの皮を被ったビッテンフェルト。性欲を持て余した頼朝が工藤さんと入れ替わっていなければ、鎌倉幕府は崩壊していたでしょう。またしても下半身パワーで難局を乗り切ってしまう源頼朝さん。お前は島耕作か。首級のない死体を見下ろしていた小四郎や仁田さん、背後から本人が登場した時はホラーやったろうなぁ。そして、義高回に続いて『生首はコンプライアンス的にダメでも首のない胴体ならセーフ理論』を貫くNHKさん、イカスぜ。

一方、全くイカさないのが『頼朝討たれる』の誤報を受けて、慌てふためく鎌倉残留組。純粋な善意とはいえ『鎌倉は私がお守り致す!』という致命的な失言をしてしまった蒲冠者、全ての手札を失ったと勘違いして蒲殿を煽る比企夫妻、上総広常粛清の時はアクセルベタ踏みであったのに今回は慎重な姿勢を崩さないうえ、あとになって蒲殿の発言をチクってしまう大江広元、自分が思っていた以上に最高権力という禁断の果実に近いことを自覚してしまった美衣ちゃん、そして、蒲殿に『朝廷に次期鎌倉殿の人事を通達しておきましょう』と今回も早とちりで歴史を動かしてしまう三好康信さん……うーん、この。先述したように曽我兄弟の動静を掴んだ時点で頼朝に報告出来る環境が整っていればねぇ。

 

 

 

源頼朝「お主ら兄弟の討ち入り、見事であった。稀なる美談として末代までも語り継ごう」

 

幕府の面目を保つため、曽我兄弟の『謀叛』を『仇討ち』という『美談』に矮小化して片づけてしまおうとする頼朝&小四郎。私は未見ながら『草燃える』でも同じような流れになっていたそうですね。個人的には『石坂浩二版の頼朝の死に方が納得いかなかったから、今回の作品で自分なりの最期を描いて見せる』と大河ドラマで二次創作宣言をしている三谷さんが、敢えて前作をオマージュした説に一票。

実際問題、曽我事件は謎が多過ぎる……というか、史料が少な過ぎて解釈の余地が数多ある逸話なので、そこは劇作家の筆先三寸次第でしょう。頼朝の寝所を目指した曽我五郎の動機も『頼朝に怨みがなかったとはいえない』という莫須有レベルの自白しか残されておらず、積極的に頼朝を狙う意思があったとは思えなくもある。兄弟の烏帽子親である時政黒幕説も囁かれているものの、頼朝没後に比企氏とガッツリやりあっているのを見ると、将軍一人始末したところで即座に時政の手に天下が転がり込んでくる訳ではないのは自明。時政黒幕説として最もあり得そうなのは、襲撃に失敗した兄弟をトカゲの尻尾切りに処したという展開かなぁ。後年の三浦義村が公暁に似たような措置に出たのではないかという説を鑑みると、色々と想像を巡らす余地がありますね。

 

 

 

北条義時「私は貴方が思っているよりもずっと汚い。一族を守るためなら、手立てを選ばぬ男です。一緒にいても幸せにはなれない。それに何より、私は死んだ妻のことを忘れることは出来ない。申し訳ない」

比奈「……私のほうを向いてくれとはいいません。私が小四郎殿を見ていればそれでいいのです」

 

比奈ちゃん、まさかのストーカー宣言。『お前が深淵を覗く時、深淵もお前を覗いているのだ』といいますが、要するに木乃伊取りが木乃伊になるということでしょう。小四郎は嘗ての自分と似たようなことをいう比奈ちゃんに親近感を覚えているようですが、今後、一方的に好意を寄せられた相手につきまとわれる恐怖を味わうフラグかと思うと、なかなかに空恐ろしいシーンではあります。以前、本作を『コメディの皮を被った仏法的因果応報の物語』と評したように、小四郎にも自身の行いの報いを受ける時が来たようです。性的な意味で。

尤も、比奈ちゃんも小四郎の人間性に惹かれているよりは『恋に恋している』域を脱していない模様。これ、結婚したら絶対に後悔するパターンよな。上記の小四郎の台詞は完璧に後年の夫婦の破局フラグのうえ、小四郎本人も比奈と同衾している時に『……八重』と寝言を言いそうなタイプですし。