『おんな城主直虎』第七回『検地がやってきた』感想(ネタバレ有) | ~ Literacy Bar ~

~ Literacy Bar ~

ここはイマイチ社会性のない自称・のんぽりマスターの管理人が、
時事、徒然、歴史、ドラマ、アニメ、映画、小説、漫画の感想などをスナック感覚の気軽さで書き綴るブログです。
※基本、ネタバレ有となっていますので、ご注意下さい。

先週末、久しぶりにKAKさんと飲む機会を得まして、直虎の話題で盛りあがりました。直虎は直虎でも、今年の大河ドラマの主人公ではなく、信州須坂藩の堀直虎のことです。この人も松平容保に負けず劣らず、徳川慶喜のアクロバティックな政治的曲芸に翻弄された殿様なのですが、SZK市の或るメーカーさんが『直虎』というフレーズを商標登録していたため、浜松の商工会議所が今年の大河ドラマ絡みの商品に直虎という言葉が使えずに困っているそうなのですね。それで、浜松市はメーカーさんに商標の取り下げを求めたそうなのですが、その返答ときたら、

 

「次の大河ドラマのことはまったく意識していなかったし、正直言って井伊直虎のことも全く知らなかった」(原文ママ)

「直虎といえば井伊直虎だと勝手に思い込む浜松市はもう少し冷静かつ太っ腹になった方がいい」(原文ママ)

 

ナチュラルに井伊直虎をdisってゆくスタイルでした。この如何にも信州らしい、議論好きでプライドの高い物言い、ほんとすこ。それでいて、地元のNG信用金庫では、

 

IMG_20170220_235622984.jpg

 

という立派な小冊子を無料で配っているそうですから、信州の懐というのはなかなかに深く、複雑ですね(写真の冊子はKAKさんから頂きました。ありがとうございます)。この辺の硬柔織り交ぜた姿勢は、バケツ一杯の高価な撒き餌を投じた海に針のついていない釣り糸を垂らす我がNG県の観光行政も見習って欲しいものです。ちなみに上記の冊子を描いたのは涼風リオさんという方で、KAKさんが検索をかけてもヒットしなかったと仰っていましたが、私は『ログイン』というPCゲーム雑誌で『風雲! 史学塾』の挿絵を担当していたほしのえみこさんの画に非常に似ていると思いました。もしかすると同一人物? 事情を御存知の方がおられましたら情報プリーズ。

 

さて、冒頭から本編と全く関係ない話から始まりましたが、KAKさんとお会いした先週末の段階での本作は(出来不出来は別として)他人と語りたいと思える作品でなかったので、仕方ありません。大河ドラマ系の話は殆ど『真田丸』に費やされましたからねぇ。しかし、今週はなかなかに面白かった。NG行きを一週遅らせればよかったと後悔頻りです。特に次郎法師の存在を盾にナチュラルに鶴丸を煽っていく&一切の責任を鶴丸に押しつける亀之丞のド畜生スタイルは最高に楽しかった。ホント、亀之丞はドSですわ。ドMの鶴丸とはいい意味でも悪い意味でも名コンビ。

 

「隠し里を今川に明かすか否かはお前に任せる(何かあったら鶴の責任にしたろ)

「おかのした(この野郎、いけしゃあしゃあと……今川にチクるか否かは状況次第だな)

キム兄「ほーん、この田畑は何ぞね?」

(こら、しゃーない。隠し里の差出と共に亀を今川に売っ払おう)

「わし、戻ったばかりなので、この場所のことは何も知らないんですよ。但馬なら知っているんじゃないですか?」スットボケー

(ファッ? コイツもバレた時は相手を差し出す気やったんか! 確かにワイの懐には隠し里の差出があるから、言い逃れできへん!)あー、この里は然るヤンゴトナキ御方と深いエニシがございまして、井伊家にあって、井伊家にあらざる場所なんですよ、ハイ」アセアセ

キム兄「あ、ふーん(察し

「やっぱり、差出を持っていたな。どう使うつもりやった? いってみ? ん?(何かあったら、俺ごと今川に売るつもりだったろ?)」ニヤニヤ

「……疑われるのには慣れていますが、信じるフリをされるのは気分のいいものではありませんな」

「キレてんの? ねぇ、キレてんの? まぁ、これもおとわのためと思って辛抱しろや」ニヤニヤ

「キレてないっスよ(憤怒)

 

……以上、多少の私的な脚色や過大評価や脳内補完が入りましたが、今回の亀と鶴の水面下での脛の蹴りあいは実に見応えありました。まぁ、実際の亀はもっと甘ちゃんで、隠し里が露見した際の鶴に対する無茶ぶりも、

 

井伊直親「それでも鶴丸なら……鶴丸ならきっと何とかしてくれる……!」

 

という幼馴染への甘えに近い信頼があったと思うのですが、そんなに鶴丸のことを信頼しているのでしたら、何故に事あるごとにおとわの存在を持ち出して、自分への忠誠を誓わせるのかの説明がつきません。多分、鶴丸は亀之丞に『俺と井伊家のために働いてくれ』といわれれば、普通に尽くしてくれると思うのですよ。それなのに亀之丞がいちいち、おとわのため、おとわのためというから鶴丸は鬱屈する。亀之丞はどうしょうもない鈍感野郎か、天然系ドS芸人ですね。深い考えなしに鶴丸に甘えているのか、或いはおとわの一件で鶴丸を精神的に追い詰めることで心理面の服従を強いているのか。そのうえ、おとわもおとわで、亀のために動いてくれと頼みにくることはあっても、鶴の味方になってくれたことがないから、鶴丸の鬱屈は弥増すばかり。ヒロインさえいなければ、亀之丞と鶴丸は理想的な主従関係になれるのにねぇ。この歪んだ人間関係、ほんとすこ。おとわに対する、

 

小野政次「何の覚悟もないなら、寺で経でも読んでおれ」

 

という言葉を意訳すると黙ってろよクズになるでしょうか。鶴丸の黒ミッチ化が早過ぎるぜ。序盤でこれだと、中盤の鶴丸がどんだけドス黒くなるか、想像するだに恐ろしいものがあります。兎も角、欠点は少ないものの小ぢんまりとまとまっていた今までの内容に比べると、今回はキャラクターの心理や行動の裏をあれこれと妄想する余地の大きい話でした。物語の出来不出来は措くとして、誰かと話題を共有したい作品とは、そういう遊びや余裕のあるものではないかと思います。その意味で昨年の大河ドラマはいい意味でも悪い意味でも遊びや余裕でガバガバでしたが。

 

尤も、そもそもの騒動の契機となった隠し里の存在を、亀之丞が隠そうとした動機が些か不鮮明。いや、まぁ、普通にタックスヘイブンの土地なので、隠し通せるものであれば、そうしたいのが人情でしょうけれども、列強の目の届かない土地ということで、嘗ては今川の討手に追われる少年時代を過ごした亀之丞が、己の境遇と重ねる描写があってもよかったのではないかと思います。それと、キム兄に隠し里が見つかりそうになった時の、

 

井伊直親「そちらは違います! そちらは何もございませぬ!」

 

という亀之丞の台詞はどうにかならなかったのか。そんなの何かあると言っているようなものじゃあないですか。そう考えると鶴丸に対するドSな態度も冷徹な計算ではなく、単純な甘えと考えたほうがよさそうな気もしてきました。