ハッハッハッハッハッ。サッパリ判らない。
物理学の理論では比較的メジャーな『シュレディンガーの猫』ですが、私のような骨の髄からの文系人間には理解の範疇外にあります。要するに物事は蓋を開けてみるまでは判らないということでしょうか。まぁ、文系人間も勿体ぶった言い回しを好む傾向があるので、その辺はオアイコかも知れません。ニーチェの『其方が深淵を覗く時、深淵も其方を覗いている』という言葉がありますが、あれ、ぶっちゃけると木乃伊取りが木乃伊になるという意味でいいんでしょ?
さて、帝都大学の物理学の准教授がゲストということで湯川学VS杉下右京の様相を呈するのではないかと思われた(研究室が構内の片隅というのも湯川を連想させた)今回の相棒ですが、実際には今季……というか、長い『相棒』の歴史の中でも随一の異色作と呼んでも過言ではない内容でした。今回のサブタイは世にも奇妙な相棒でいいんじゃないでしょうか。OPにタモさんが出てきても違和感なかった。実は事前に或る記事を読んでいた所為で、結構不安を抱えていたんですよ。
「『相棒』の迷走が本気でヤバい! 刑事ドラマからSFものにシフトし視聴者があ然」
この記事ですね。正直、迷走やマンネリという声には私も少なからず、賛同の意を抱えているのですが、でも、今回の話は面白かったと思いますよ。それこそ、マンネリ打破という目標のためには、こういう話もアリじゃないでしょうか。時期的にも内容的にも、この記事は本編を見ないで書かれたのは確定的に明らか。どんなに不平や不満があってもさ、本編を見てから文句をいおうよ。見ないで書いたらとんだ赤ッ恥だよ。
今回のジャンルは『ループもの』と呼ばれる00年代のSF、ゲーム、ラノベで持て囃されたジャンル(手塚治虫の『火の鳥・異形編』のように古典的でもある題材)ですが、内容的にはループものとしての目新しさはないものの、手堅くまとめられていました。単純な事故~上司の研究を奪うための殺人~妻の研究を奪うための殺人~その真相は自殺であった、という具合に、都合の悪い出来事をほむほむのように【なかったこと】にするのではなく、ループの度に入手した情報を元に、よりよい未来を目指していくというのは良質なループものの王道。それこそ、ラストシーンの回想で、
成田知子「学べば学ぶほど、自分がどれだけ無知であるかを思い知らされる。自分の無知に気づけば気づくほど、より一層学びたくなる。思考はそれ自体が目的なの」
と語られていたように、物理学(というか学問)の本質はトライ&エラーの繰り返しなワケで、一度や二度の失敗に懲りない粘り強さが求められる学究の徒を描くに際して、ループものは恰好の方策といえるでしょう。ドラマ版第一話の湯川でさえ、何回も何十回も何百回も実験を繰り返すことで漸く真相に到達していましたからね。それにしても、成田知子教授がめっちゃキレイでした。私もこんな女性に指導されていたら、物理の成績あがったかも。
最初の殺人も『密閉空間』と『毒ガス』という『シュレディンガーの猫』を連想させる構造で◎。まぁ、確かに相棒らしいか、らしくないかといわれたら、らしくない話でしたが、面白ければ全てOKなんですよ。今回の脚本を手掛けた徳永さんは『相棒』初のリアルタイムストーリーの『9時から10時まで』や、職業ものの佳作『右京のスーツ』『右京の腕時計』の方なので、王道を知ったうえで敢えて異色作をブチ込む作風なのだと思われます。勿論、今季序盤の『2045』のように、コケる時は顔面血塗れレベルの大転倒なのですが、今回は『2045』のように結末のみならず、物語全部をSFに振り切った分、面白くなったのではないでしょうか。
それでも、相棒らしさに拘る方は、本作は『新・Wの悲喜劇』と類似した作品を思って頂ければいいかと。あれは最終的に夢オチに近い落着でしたが、今回も実は堀井准教授はタイムリープをしていたワケではなく、その比類ないインナースペースで思考シミュレーションを繰り返していたのだ、と思えば納得できる……かも知れません。逆に、もう少しSF要素が欲しかったと考える方は、本当にタイムリープをしていたのは誰かと疑ってみるのも一興かと。表面上は堀井准教授がタイムリープの張本人のように見えますが、よく考えると堀井准教授は毎回、諦めムードで結末を終えようとしていました。寧ろ、あの場にいた人間で事件の真相追及を誰よりも願っていたのは他でもない杉下右京です。動機のある人間を疑えという犯罪捜査の鉄則を鑑みると、よりよい未来を求めるために時間軸を捻じ曲げた最大の容疑者は杉下という解釈も成立します。それでいて、杉下本人は自分がループの原因であることに気づいていないという鈍感さ。まるで某SOS団団長のようですね。つまり、今回の内容は、
時をかける杉下
であったのかも知れません……何か嫌だな、この響き。
最後に褒めるばかりではアレなので、気になった点を幾つか。黒猫が成田教授の生まれ変わりという杉下の解釈はアリとしても、それは台詞にしないで欲しかったなぁ。今回は物理学者の物語なのですから、それは言わぬが花、触れぬが礼儀というものでしょう。また、成田教授の自殺の描写が些か微妙。有名な『リーマン予想』絡みでは、自分の予想が間違っていたと気づいた学者が心臓発作で亡くなったとかいう逸話もあるくらいので、衝撃の果ての自殺という選択そのものに違和感はないのですが、ああも死因に疑問の余地の残る遣り方をしなくてもいいでしょうに……やはり、心の奥底では旦那をハメたいという無意識の欲望があったのかも知れません。そして、教え子の堀井を庇ったというのもモニョっとしました。何よりも真実の追及を優先する研究者としてはどうなのよ。トライ&エラーが人間の学ぶ動機だという彼女の言葉を思い返すと、そこはキチンと本人にオトシマエつけさせたほうがいいんじゃないでしょうか。或いは成田教授は堀井を庇ったのではなく、誰の数式であれ、それを発表したのは私である以上、責任は自分が取るという気持ちで自らの生命を絶ったのかも知れません。
次回は久しぶりに杉下が物理的なピンチに陥りそう! 『神隠しの山』というサブタイや、予告映像の雰囲気を鑑みると、これまた異色作中の異色作であった『猛き祈り』の舞台なのかと思ってしまいました。実際、件の即身仏が掘り起こされてもおかしくない時期なんですが、あの伏線は回収されないのかな?
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