まるで、自分は全ての犯罪の動機を理解しているかのような物言いの冠城君。彼にはダークカイトの犯罪動機が理解できるのでしょうか。少なくとも、私にはサッパリ判らなかったんですけれども……そもそも、犯罪の動機は煎じ詰めると、
『復讐』乃至は『宝探し』
の2点に集約できるので単純に思えますが、シンプルなものは総じて奥が深いのも事実。そして、コンピュータには人間が理解できることの全てをプログラム可能とはいえ、逆にいうと人間が理解できていないものはプログラムできない。コンピュータに理解できないものがあるのは、人間の解析能力の欠如が原因であって、冠城君やイタミンのようにコンピュータを見下すのは筋違いというものです。しかし、上記の二つの条件は物語の構造論そのものなんだよなぁ。犯罪は最も非道徳的な創作活動といえるかも知れません。
さて、前置きが長くなった分、本編の感想は短目。中盤までは『結構イケるんじゃね?』と期待した本編ですが、残念なことに尻すぼみ。長江菜美子が真犯人というオチはベタ過ぎました。そもそも、スーパーコンピュータとかいうワリに推理に一貫性がなく、結論がコロコロと変わりまくるので、ああ、これはプログラムする人間が自分の都合で捜査を誘導するのが狙いだなと簡単に予想できてしまった。それこそ、事件の周辺で不自然な言動をする人間を疑えというのは犯罪捜査の鉄則なので、長江女史が怪しいのは丸判り。そして、一度疑惑の目を向けてしまえば、ジェームズ君が法務省の管轄であったことから、事件の背後関係はおぼろげながら想像できてしまいました。
寧ろ、そんな展開はベタ過ぎるので、私なんぞはジェームズ君の正体は、
杉下の思考ベースをコピーした『疑似杉下』
じゃないのかとワクワクしながら見ていたんですよ。ほら、ジェームズ君の推理って杉下の推理とリンクしていたじゃないですか。そして、自らを模倣したプログラムの暴走を、普段は暴走する側の杉下がとめるみたいな展開を期待していました。まぁ、杉下の思考を移植したプログラムなんてシビュラシステムと同じくらいに気持ち悪い存在ですけれども、それくらいにブッ飛んだシロモノでないと、ラストでジェームズ君がネットの海に解放された時の恐怖感がないじゃん。
想像してごらん。真実追求のためには如何なる犠牲や禁じ手をも辞さない捜査プログラムが、ネットの海の片隅で人知れず成長していく姿を……これ、ドラえもんの栗まんじゅう級の恐怖だと思うんですよね。
まぁ、戯言は兎も角、長江女史もベタなマッドサイエンティストの類型でしかなかったこともあり、犯人にも被害者にも関係者にも感情移入できない内容になってしまいました。意外と巧く物語の穴は塞いでいたのに、肝心の本筋がグダグダ。人間VSコンピュータという点ではシーズン11の『棋風』という作品がありましたが、あれは犯人に感情移入できていたので、それに比べるとねぇ。取り敢えず、今回はこんなところでしょうか。
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