『ガリレオ』最終回『聖女の救済・後編』&『ガリレオXX』簡易感想(ネタバレ有) | ~ Literacy Bar ~

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ここはイマイチ社会性のない自称・のんぽりマスターの管理人が、
時事、徒然、歴史、ドラマ、アニメ、映画、小説、漫画の感想などをスナック感覚の気軽さで書き綴るブログです。
※基本、ネタバレ有となっていますので、ご注意下さい。

今回は最終回と先週末に放送されたスピンオフ、双方の簡易感想をば。


まずは『聖女の救済』完結編。

不満点しては、やはり、事件解決のキーパーソンがハライチでは役者不足でした。ガリレオ史上、最難関の事件の犯人ですので、それを追い詰めるのは相応のキャラクターであって欲しかったです。完全犯罪と思われた計画が小者の何気ない行動で崩れるというのも面白いですが、やっぱり、草薙に出て貰いたかったなぁ。ドラマ版では殆ど出番ないので、今回くらいはガッツリと登場させてもよかったんじゃないのかなぁ。エピソードを二話に分割したことで物語全体の比重が後編に偏重したのも大きなマイナス。『紫の傘の女』も結局、物語に全然関係なかったので、そんな場面はガッツリとカットして、最終回2時間SPでまとめたほうが明らかに座りのいい話になった筈です。つーか、マジ、あの紫の傘の女、何なの? 製作者の意図が判る方、おられましたら情報プリーズ(一応、岸谷の努力する姿の象徴という私なりの仮説はありますが)

しかし、不満点は概ね上記の2点のみで、あとはいい出来であったと思います。原作未読の方であれば余計な先入観がない分、充分に楽しめたんじゃないでしょうか。前編の感想でも書きましたが、原作だと読者の目を真相から逸らすために、冗長ともいえる文章が散見していて、ミステリの出来は措くとしても、構成はよくないんですよね。その点、ドラマ版はいい意味で原作のいいとこ取りで再編集されていたので、難解なトリックも視聴者に判りやすかったと思います。

ドラマ版オリジナルの犯人が避○薬を服用していたという設定も、被害者に『救済』の猶予を与えるという動機の裏打ちになっていました。猶予期間の間に子供ができたら、旦那は犯人を傷つけたことに気づかないままですしね。今回の犯人はそこをこそ問うているのですから、キチンとフォローが入っていて嬉しかった。その犯人を演じた天海祐希さんも後編になってから、いい意味で原作のイメージを覆してくれました。『聖女』と『夜叉』。矛盾する双方の容貌を持つドラマ版の犯人は難解な役でしたが、流石は天海さん。見事に演じてくれました。怖かったっス。


次に『ガリレオXX ~内海薫最後の事件~』。放送翌日に職場の同僚が、


『全然、ガリレオじゃねー』


と批判していました。実際、怪事件も科学ネタもない、近年珍しいデカもののドラマでしたので、ガリレオじゃないという指摘は正しいと思いますが、それは製作者も意図してやっているんだと思います。本作は内海薫が湯川から卒業する=普通の刑事になる物語なので、担当する事件が怪事件であってはいけないんですよ。普通の事件を普通に解決してこそ、内海の自立を証明できる。例え、独力で怪事件を解決しても、それは従来の内海の行動の延長線上でしかないんですね。事件がベタなデカものであったのは、内海を普通の刑事の世界に戻してやるという製作者の意図があったのだと思います。その点、最終回で『湯川のトリセツを把握した』と喜んでいる岸谷はまだまだオコチャマですね。湯川から自立できていないわけですし。

でも、湯川と協力して事件を解決してきた日々は刑事として全くムダじゃなかったのもキチンと描いている。今回の真犯人の女署長は『結果』に拘るあまり、警察官の正道を見失いましたが、内海は『真実を追求する意思』を貫き通しました。


「結果だけに拘ると道を見失い、やる気も失せてくる。重要なのは真実に向かおうとする意思だ。意思さえあれば、何時か真実に到達できる」


とは『JoJoの奇妙な冒険』の名言(の要約)です。都合のいい結果を追い求めるのではなく、苦しくても真実を追求する意思を忘れない。それが警察官のあるべき姿ですが、真実を追求する意思を内海に身をもって示し続けてきたのは他の誰でもない湯川です。アラサーの女刑事という自らのポジションにアイデンティティクライシスを感じていた内海が正道に戻れたのは間違いなく湯川と協力して捜査をしてきた日々があったればこそ。事件そのものはデカものでしたが、その底に流れるものは『ガリレオ』の基本構造でした。


これにて今季の『ガリレオ』は終了。@は劇場版『真夏の方程式』を待つのみ……と思っていたら、来週、地元のTV局で早くも今季の『ガリレオ』が再放送されるとのこと。見逃した『指標(しめ)す』も見られそうです。改めて感想記事もUPしようかな。


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