この春に公開された際に映画館へ(大人一人で)観にいった作品ですが、今週、DVDがレンタルリリースされたので、改めて感想を書こうと思います。今更、というと語弊がありますが、公開から4ヶ月が経過した作品ですので全体の流れを語るのではなく、個人的に気になった点をピックアップする形式で語ってみましょう。
1.アバンタイトル&OP
ここだけで映画館に足を運んだ価値は充分にあった。
いや、マジだぜ。嘘だ思ったらセルでもレンタルでもいいから見て下さい。『スマイル』組を除く、24名のプリキュアとティラノサウルス型フュージョンのシューティングバトルですよ。こんなのロボットもののアニメでもあんまり見たことないわ。潜水艦のように背中からハープーンミサイルを発射するフュージョンの画とか、完全にジャンルを間違えていると思う、いい意味で。プリキュアサイドでは宮田ばりのJOLTブローを炸裂させる相変わらずの泥臭いバトルが主体のなぎさ先輩と、シューティングスターの閃光と共にブワッと現れるドリームさんの画で鳥肌たった。
2.坂上あゆみ
父親の仕事の都合による転校という外的要因と生来の気弱さという内的要因のため、非常に碌でもない目に遭うことになる本作の主人公。この設定、よく考えると『スマイル』のみゆきと真逆なんですね。みゆきの場合は頭の中がウルトラハッピーな性格に加えて、転校早々に素晴らしい友達に恵まれるという幸運に恵まれましたが、あゆみはそうじゃない。どう考えてもあゆみの境遇のほうが普通なんです。あゆみ=普通の女の子=現実の女の子。みゆき=プリキュア=特別な女の子。この構図で序盤~中盤の筋書きをグイグイ推してきます。これが終盤の展開の布石になるのですが、ひとつ、難癖を承知で文句をつけるとすれば、あゆみが周囲に馴染めない理由には長期入院によるブランクという設定にして欲しかったかな。なにせ、あゆみを演じるのは、
日本一、療養所の女の子が似あう女優
の能登麻美子さんですよ。病気で死にそうな役を演じたら天下一品の人ですよ。うぅ、役者さんが惜しいぞ。
3.フュージョン(フーちゃん)
あざとい。
実にあざとい。
こんなにあざとい敵役は初めてだ。
印象としてはキュアミューズが敵に回った感じに近い。演じているのも現役小学生だしね。プリキュアの攻撃を吸収して活性化するというのは『オールスターDX』第一弾の時のフュージョンと同じですが、あゆみの友達になって一生懸命に彼女のために尽くす(多少、融通は効きませんが)姿はあざといの一言。そりゃあ、こんな敵キャラは倒せんわな。劇中で描かれていたように対話&和解エンドしかないわ。まぁ、今回の主題は今までのように『プリキュア最高』ではなく、普通に『友達は大事だよ』ですから、これでいいんだと思います。
それでも大きくなるためにあゆみが脅える犬を食べちゃったり、友達のあゆみを守るために彼女を叱った母親を消しちゃったりと、演出面ではライトホラーな雰囲気満載。しかし、あの犬。『銀牙』のベンみたいなツラして『モモ』って名前はないわ。
4.新米プリキュア&先輩プリキュア&レジェンドプリキュア
これまでの『DX』ですと、先輩プリキュアに守られたり、諭されたりと、色々と厄介をかけるのが新米プリキュアの役回りなのですが、今回はそういう場面は控え目。『5GoGo!』以前の面子は台詞もなかったしね。ここまで増えると全員に平等に見せ場つくるの大変だしあくまでも主人公はあゆみ=普通の女の子ということでしょうか。それでも、印象に残った面子をあげると以下の通り。
来海えりか
相変わらずの顔芸マスター。変身バンク以外の顔のパーツが殆ど線のみで構成されているという点にスタッフの歪んだ愛着を覚えずにはいられない・・・・・・というかガイナ立ちがここまで似あう女の子キャラなんて他におらんよな。部長、最高っしゅ。
調辺アコ
先述のように先輩プリキュアと後輩プリキュアの対比が少なかった本作の中で先輩風をピューピュー吹かせていたのがアコ。最年長者のゆりさんならいざ知らず、君は小学生プリキュアじゃないのかね。この小憎らしいほどのあざと可愛さは正義。
初代プリキュア三人組
『スイート』の四人とピースを除く『スマイル』の四人、計八人が歯ァ食いしばって辛うじて支えていた氷川丸の船体を軽々と受けとめたのが、なぎさ&ほのか&ひかり。まさに伝説の開闢者に相応しい見せ場でした。『プリキュア』の基本は女の子のスデゴロだから、遠距離攻撃に頼っていないで基礎体力を磨けという最近の後輩たちへの無言のプレッシャーを感じました。ウルトラマンや仮面ライダーのオールスター作品の中で初代やゾフィー、一号&二号が出てきた時の特撮ファンの心境ってこういうのかなぁ。
スマイルプリキュア組
まだ、声優さんたちが自分のキャラを掴みきれていない初々しさが逆に新鮮だった。あかねの変身時の台詞も『キュアサニー』ではなく、初めの頃の『キュウァスァニィー』でしたしね。ぶっちゃけ、こっちのほうが好きだったよ。ちなみに私はマーチさん推しです。
5.キュアエコー誕生
キュアミューズ「私たちは強いからプリキュアになったんじゃない。『大切な人を守りたい。』だから、プリキュアになったの」
と先輩風ピューピュー吹かせたアコの言葉通り、ハッピーを危機から救い、フーちゃんに思いを伝えたいという思いを爆発させたあゆみは、
キュアエコー「思いよ、届け! キュアエコー!」
本当に変身したよ!
自分の変身に戸惑うあゆみに、
キュアミューズ「『友達を守りたい。』そんな優しい心があれば女の子は誰だってプリキュアになれるのよ!」
『女の子は誰だってプリキュアになれる』。何という夢のある言葉。これ、今年の最優秀キャッチコピー決定です。『正義の心があれば誰でもヒーローになれる』と劇中で説く作品は多いけれども、本当に変身させちゃったってのは珍しいんじゃないでしょうか。『響鬼』の明日夢君もライダーの道を歩まないままで響鬼さんに弟子として認められていたしね。この開き直りに近い潔さは最高。
一方でキュアエコーに必殺技らしいことは一切させず、あくまでも普通の女の子にでもできる対話と和解でフーちゃんの暴走をとめた点も凄い。劇中では『プリキュアも普通の女の子』といってましたが、魔法とか超常的なことをさせたら、それは普通の女の子とは思えなくなっちゃうんですよ。視聴者の変身願望を叶えながらも、その力は普通の女の子と変わらない。友達を思う心、諦めない心。それがプリキュアの本質というアコの言葉を外していない。首尾一貫していました。
そんなわけで、例年のようにプリキュア尽くしという内容ではありませんでしたが、それでも充分に楽しめました。久しぶりに純粋に夢のある話を見た気がします。
女の子は誰だってプリキュアになれる!
いい言葉だなぁ。
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