獣の奏者エリン(再)第41話『真王の真実』感想(ネタバレ有) | ~ Literacy Bar ~

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ハルミヤ「私は何も知らなかった……それは全て、あの穢らわしいサイ・ガムルの所為……! サイ・ガムルの襲撃で王宮が焼け落ち、お母様とお祖母さまは亡くなられ、私はたった五歳で真王の座に即位することになった。三百年に渡って伝えられてきた我が一族の記憶も何も知らず、判らないままに……。私の祖先、真王の祖は神などではなく、大罪人だったなんて……!」


真王ハルミヤ、老いの坂を越えてからのアイデンティティクライシス。

これはキツイですよね。これまでも劇中で語られてきたように、真王とは神の子孫であり、戦いを嫌う清らかな心を掲げることで、この国の首座を占めてきたのですが、その祖先が神々の山脈の彼方で起こった大戦争の張本人であり、故郷から石もて追われた大罪人であったことを、ハルミヤは老境に至ってから知ったわけです。如何に本人にその気はなかったとはいえ、国民を欺いてきたと思われても仕方のない話ですよ。これが若いうちであれば、ちょっとした厨二病を患う程度ですむのでしょうが、人間、年齢をとると傷の治りも遅いもの。それは身体の傷も心の傷も同じです。今までの己の人生が全て虚無に帰したと思うほどの衝撃を受けたハルミヤは、ここで再起不能になってもおかしくありませんでした。

しかし、彼女は強かった。

ハルミヤの祖と同じように大罪を犯す可能性を抱きながらも、自らの信じる道を征こうとする(そして、イザという時には己の生命を差し出す覚悟を秘めた)エリンと、祖先が如何であれ、無二の忠誠心ををしめしてくれたイアルの支えを受けて、


ハルミヤ「私は真王ハルミヤ。生命あるかぎり、この国を護る者。都に戻り次第、全ての歪みを糺す……!」


と宣言します。自らが神の子孫ではなく、大罪人の血統である。そのことを知ったうえで、それでも、神の子孫としての職責を全うする。常人であれば仏門(この世界にあるのかは判りませんが)に帰依してもおかしくないレベルの秘密を飲み込んだまま、真王として生きることを決めたハルミヤ。王獣を兵器として用いることの危険性にも理解を示して頂き、エリンとしては万々歳の結果にな……る筈でしたが、


突然の真王崩御


ですよ。いや、エリンがハルミヤの庇護の下に置かれたままでは物語が動きようがないことは判りますが、きっつい展開ですわ。恐らく死因は外傷性脳内血腫でしょうが、事件から逝去までに結構時間があったことを考えると外傷性の慢性硬膜下血腫の可能性も否定できません。何れにせよ、エリンは大きな後ろ盾を喪うことになりました。


次回は『セィミヤの涙』。物語中盤からチラついていたシュナンの真意が明らかになる回です。