神回でございました。
先回の放送で見事、王獣リランの恢癒に成功したエリン。
普通の物語であれば、問題解決でめでたしめでたしとなる筈ですが、この『エリン』ではここからが本当の問題なのですよ。エサルもこの事態を想定していなかったのかよ。トムラ先輩への処遇の件といい、やはり、ジョウンよりも教育者としての柔軟さに欠けるような気がする。
エリンが試みた育成法が『王獣規範』に沿っていないとか、霧の民の秘法でズルをしたとのデマが飛ぶとか、色々と問題が噴出しましたが、一番の問題はエリンとリランが意志を疎通してしまったことでしょう。この件に関してはエサルやトムラや教導師たちがやいのやいのと議論していましたが、一番判りやすかったのはこれ。
バーロー「王獣を従わせることができるのは、昔話にもあるように真王陛下だけです。アフォン・ノア(神々の山脈)を越えてやってきた王祖ジェは王獣を従えて、この国に平穏を齎した。ヤマン・ハサルは闘蛇の笛を授かり、闘蛇でハジャンに勝利した。そして、今がある」
学童①「知ってる! それって王獣が闘蛇を食べちゃうんだよね!」
バーロー「そうです。だから、王獣を従わせることができる真王陛下のほうが闘蛇を操る大公よりも、ずっと凄いってことなんです」
学童②「それじゃあ、リランを従わせたエリンは……」
学童③「神王陛下と同じくらい凄いっていいたいのか?」
そういうことになっちゃうよなぁ。これはまずい。非常にまずい。真王陛下と一介の霧の民の娘が同等とあっては、国家の威信は地に墜ちることになります。しかも、そういう状況を知れば、エリンを担いで真王に対峙しようとする連中(例えば『穢れた血』など)がワラワラと出現するのは火を見るよりも明らか。先回のイアルVS反真王運動家の描写がここで活きてくるわけですね。しかし、彼らの手を逃れるべく、国のほうに助けを求めれば、真王の威信を揺るがしかねないエリンはよくて幽閉。悪くて密殺。さぁ、どうすんべぇ、と大人も子供もそれぞれに悩み、考えます。余談ながら、ヤマン・ハサルは初代の大公。ハジャンは隣国の名前です。そして、本編とは関係ないことですが、バーローは私がつけた仇名。本名はウラリといいます。他の学童たちの名前は覚えられなかったよ。ごめんな。
一方、エサルからそのような事情を聞かされたエリンの反応は、
エリン「下らない……。王獣が闘蛇を襲うのは、それが本来の姿だからです。それを戦いの道具にするなんて、考えたくもありません。そんなことにリランを巻き込みたくない。私はリランを野生の王獣と同じように育ててあげたいだけなんです。だから、私は特滋水を飲ませたくないし、音無し笛で硬直させるようなことは……絶対にしません!」
ぶっちゃけ、赤字の台詞の箇所は怖かったです。エリン、マジ怒り状態。それでも、エサルに呼び出された時には漠然とした不安を感じていたのでしょう。エサルから事情を説明される時のエリンの顔は全て、茶碗の水面に映るカットで構成されていました。こういう言葉に頼らない演出はいい。
そして、クライマックス。カザルム学舎の全員を食堂に集め、
エサル「エリンとリランのことについて……私はそれを、このカザルム王獣保護場だけの秘密にしようと思います。この中で秘密を守れると誓える人はたちあがって下さい」
と宣告するエサル。現今のエリンの状況を伏せることは、真王に対する叛逆と取られても仕方のない行為。さぁ、彼らの反応は如何に?
僅かな沈黙を破り、まず、たちあがったのはユーヤンとトムラ先輩。次いで、カシュガンやバーローたち、エリンの同級生。そして、他の学童たちも次々と起立してゆき、全員が秘密を守ることを無言のうちに誓約します。勿論、教導師たちに保身の心が完全になかったとはいえません。学童たちは一時の熱情に浮かされているだけかも知れません。しかし、今、この時、エリンとリランを守ろうとする決断は紛れもない真実です。
エサル「私たちは、貴女とリランを守ることを、ここに誓います」
エリン「ありがとうございます! 皆さん、ありがとうございます!」
俺、号泣(本放送時ね)。流石に今回は号泣せんかったですが、それでもホロリときました。今回は情報量も半端ない話なので、2回に分けてもよかったんじゃないかとも思いましたが、改めて見直すと1回にギュッとまとめてあるからこそ、濃密で緊張感があり、視聴者の興味を惹く話になっていたんだと確認できました。素晴らしかったです……まぁ、こういう回を1回でやっちまうから、この先の『ふたりのおつかい』とかみたいな、露骨な回数合わせの話も出てくるんですがね。