獣の奏者エリン(再)第16話『堅き楯(セ・ザン)のイアル』感想(ネタバレ有) | ~ Literacy Bar ~

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イアル「俺たちが生きているのは『人の情け』を『つけこむ隙』とみる世界だ。親しい人間がいれば、それを取引の道具に使おうとする奴が現れる。大切にしたいと思うなら、必要以上に人と関わらないことだ」


タイトル通り、エリンとジョウンの出番は少なめ。『堅き楯』のイアルの過去と現在がメインの回でした。ただし、冒頭で『エリンは嫁入りには早い!』と憤るジョウンの姿は短い場面ですが印象に残りますね。ホンモノの父親のようでした。原作ではイアルの実家は『指物師』(一種の家具職人)ですが、アニメではエリンとの接点を増やすため、竪琴職人の家になっています。

以前の感想でも述べましたが、この『堅き楯』(セ・ザン)は真王直属の秘密警察&護衛部隊です。その任務は過酷を極め、中にはイアルのように幼い時分に親からひき離され、国のために戦うことだけを教え込まれた者もいます。そして、妻を娶ることも子をなすことも許されません。そんな厳しい掟の中で、己の身を傷つけるようにしか生きることを許されないイアルの姿は、人に飼われ、音無し笛に縛られた闘蛇の隠喩になっています。闘蛇の『掟』。霧の民の『掟』。『堅き楯』の『掟』。そして、これから先に登場する王獣の飼育に関する『王獣規範』という『掟』。『獣の奏者エリン』の世界には『掟』が満ち溢れています。これらの『掟』の全ては往古のある事件に関わるものなのですが、現段階ではネタバレになりますので、今回はここまで。それにしても、史実をベースにしているにも拘わらず、主要人物の死に少しも意味を持たせられない大河ドラマもあるというのに、この作品は凄く丁寧に世界観を練ってあるよね。マジでたぶちんはこのアニメを見て勉強し直せばいいと思うの。


イアル(情けを感じるには……人の命を奪い過ぎた)


その割にはヤントクと会ったり、エリンの竪琴を直してやったり、恩人にして上司のハザルを斬った時に涙を流したりと、完全には非情になりきれないイアル。それでも、任務はちゃんとこなします。そして、余人のまえでは私情を曝け出すこともありません。ヌック&モックを始末しようとした時期に比して、随分と『堅き楯』に馴染んできたようです。ただし、それがイアルという竪琴造りの好きな繊細な青年にとって、好ましいことなのかどうかは別の話かも知れません。


そのハガル。

何の『掟』を破ったのかは判りませんが、隠れて女でも囲っていたのでしょうか。イアルの『神速』を見出して『堅き楯』に勧誘し、時に『情けに流されるな』とイアルを叱責するほどに有能で任務に忠実であった筈のハガルが『掟』を破り、イアルに斬られるという筋書き。二人の決闘の背景に流れる灯篭流しの灯が切ない雰囲気を醸し出しています。


次回は『狙われた真王』。今回と同じく、リョザ神王国の『この国のかたち』を描く回です。その間にエリンは入舎ノ試の勉強に勤しんでいるのでしょう。こうしたリアル世界の時間と物語の中の時間をシンクロさせるのも、このアニメの巧みな点ですね。