いやぁ、ようやく観ることが出来た。
越後の片田舎に住んでいると、楽しみにしているアニメが地元の劇場でやらないことなんて、珍しくもない。隣県の県庁所在地まで出向くのも億劫&業腹なので、一日千秋の思いでレンタル化を待ち続けていた。そして、凄く面白かった。レンタル解禁になった今日、外回りの用事の途中で、開店直後のレンタル店に立ち寄って借りた甲斐があったというものである(上司にはナイショだ)。それでも、開店直後にも拘わらず、残り2本になっていた。危ない危ない。
尤も、詳しい感想は書かない。一通りレンタルで鑑賞したとはいえ、この『涼宮ハルヒ』シリーズは『ガンダム』や『精霊の守り人』と違い、ディープに嵌った作品ではなかったからだ。いや、面白くなかったわけじゃないよ。ここに踏み込むと戻れなくなるという恐怖に近い感覚に陥ったから、敢えて退いたのである。『エンドレスエイト』も最後の2ループ分を借りただけというチキン野郎の私だ。到底、作品の感想を書く資格があるとは思えないので、二、三、感じたことだけを書き留めておきたい。
キョンがハルヒの『消失』に気づいた直後の授業。
日本史、それも室町時代の応仁の乱付近の情勢が黒板に書かれていた。左半分が足利義教。右半分が応仁の乱。思わず、ニヤリとしてしまった。足利義教は日本史上でも一、二を争う独裁者であり、籤引で将軍の座を獲得した男として有名である。籤引で最高権力者を決めるなど、現代の価値観ではいい加減なように思えるが、神威(しんい)が絶対視されていた過去の時代における籤は神の意志そのものであり、いわば、義教は神に選ばれた将軍であったのだ。だから、既製の権力構造に囚われることなく、思うさまに独裁権力を行使できたのである。そして、授業の途中で義教側の黒板の文字が消されて、応仁の乱の箇所だけが残される。
つまり、足利義教は神の如き力を有する涼宮ハルヒの隠喩であり、そのハルヒが消えて、応仁の乱にも匹敵する大騒動が起きるという劇中の展開が、この黒板一枚で描写されているのである。実にうまい。
あと、なんていうかな、ラスト近くのキョンの自問自答は『旧劇場版エヴァ』をスマートに仕たて直したという感じがした。勿論、いい意味である。『旧劇場版エヴァ』の後半は製作者の感情が生に叩きつけられ過ぎていて、物語と呼べるシロモノではない。衝撃度は高いが、物語性に乏しいという点では『ボーダーライン』に近しいものを感じる。『消失』では、それを大過なく、スマートにまとめるのに成功していた。この辺は時代の流れかなぁ。『旧劇場版エヴァ』という先例がなければ、ここまで上手にまとめられなかったんじゃないかとも思う。
それにしても、涼宮ハルヒというキャラ。
以前から思っていたのであるが、何処かで似たような存在を知っているような気がする。
美人。
才媛。
暴君。
ツンデレ。
超常現象。
ニブチンの相棒。
……あぁ、思い出した。
薬師寺涼子だ。
あと10年……否、5年もすれば、この両名は世界の覇権を掛けて争うことになるに違いない。そして、キョンと泉田が互いの境遇を慰めあいながら、静かに酒を酌み交わす姿が目に浮かぶようである。何とも不憫な奴らだ。
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