昨日の話には
まだ続きがあります
着発点のバス停で
少し怒られた後は
もちろん出発です
その前に
「ほれ、お年玉と誕生日やから」
と、少しばかりのお小遣いを渡します
「え?マジ?いいん?」
「いいよ、年末コーヒーゴチになったし」
「老犬さん……めっちゃ良い人やったんやな」
「急に変わるな…ホンマに良い人はモノでくれるけど、なかなかバスに当たらんし勘弁したれ」
「うん、ありがとう」
「なんか素直やと気持ち悪いな」
「なんでやねん!💢そんな事言うてるからボケてくるねん!」
「ボケ関係あるかぁ!ってボケてないしな」
「昨日の晩ごはんは?」
「もうえぇって…さぁ出発するで」(←晩ごはん覚えてない)
「おばちゃんチまでやな?」
「駅までやで?」
「あれ?おばちゃんは?」
「途中で乗ってくるから一緒に駅まで行くねん、何聞いてたん?」
「いつ言うたんや?」
「さっき電話してたやん」
「んなもん聞こえるかぁ!」
「耳遠いんやっけ?」
「エスパーちゃうっちゅーねん、ま、行くで」
「また歌っていい?」
「どーぞ」
そう言って歌い出す彼女
何曲か歌ったら
「あぁ〜ミキもっと歌上手くなりたいわ」
「やろうな…」
「あぁん?💢」
「なな……なんや?」
「そういう時は前より良くなってるけどもう少し頑張れとか、上手くなってるやん、とか言うもんちゃうん?なんやねん、やろうな…って、そらそやろみたいに言われたら傷つくっちゅーねん!」
「少しぐらい傷ついとけ」
「ハラたつわぁ…うんこ投げたろか」
「サルか?それはやめとけ」
「ふん!…ところで老犬さんはどんな歌好き?」
「オレのなんかミキ知らんやろ」
「試しに言うて」
「いっぱいあるけど…例えばあなたのキスを数えましょうとか」
「知ってんで」
「あなたのキスを探しましょ〜」(←合唱)
「なんで知ってんねん?お母さんからか」
「さぁ?なんでやろ…好きな歌手とか」
「徳永英明かな…声が好きなんはWANDS」
「ワンズ、聞いたことある、どんな歌?」
「スラムダンクの歌とか色々…」
「ちょっと歌って」
二人でモーレツ大合唱してたら
世界中のだーれ
よーりー
胸に……
別の利用者さんのご乗車です
「なんでゴニョゴニョ歌うん?」
「ゴニョゴニョってよりヒソヒソやんか、遠慮なく歌え」
「老犬さんこそ歌いや」
「オレはマズい…」
その利用者さんは二駅で降りましたが
すぐ彼女のおばちゃんがいる所です
「ミキ、口悪くないからヨロシク」
「えぇえぇえぇ?」
「難しいなぁ…黙っとくわ」
そしてそのおばちゃんが乗るなり
「ここ座ったら?」
「あぁ…こっちでいいよ…」
「………」
「………」
「………」
「アカン…耐えれん…」
「うるさい…だまれ」
「声ちっちゃ」
そうして
二人を乗せたバスは変な雰囲気のまま
定刻に駅に着き
老犬は少し血圧が上がったようです