とっても情けない話から、昨日のストーリーは始まります。
私、まったやってしまいました。
そう。あれです、あれ。
……腰をやっちまったのです。
ホテルの仕事の最中、超重いグランドピアノを一人で持ち上げようとし……
↑
(妄想)
いやいや。できるわけないでしょ

しょーもないんですけれど、宴会のわずかな空き時間におしぼりを巻いていたんです。
そうですね。
時間にして、20分くらいでしょうか。
その間、なんというのか、微妙に前傾している、腰に負担がかかるような姿勢だったことはたしかです。
しかし、なんということはないと思い込んでいました。
と、突然。
予約のお客さんが到着したという連絡。
慌てて動き出しました。
そのときに、ふいに自覚が。
腰が痛い?
いや、これはあの春の時のような痛み……。
もしかしてまた

予感はぶっちぎり的中しました。
仕事をする内にどんどん痛みが増して行き、なんというのかもうすでに赤色回転灯が回り始めたかのような……(サイレンはまだ鳴ってないんですが)。
仕事を終え、一度帰宅し、昨日はその後、ミュージカルの練習がありました。
私はキャスト決めのために出なければなりませんでした。
自宅で過ごす内に腰はもう「ピーポーピーポー♪」いってました。
でも、今日は絶対に出席しなければならない


演出のM先生と共に主要なキャストを決定しなければ(。>0<。)
しかし。
しかしっ! こ、これは痛いぞ

座っている状態から立つのも厳しい。
歩くのも厳しい。激痛がして、右足を前に出すのが辛い。
「すまんが、運転してくれ」
役者志望で参加している娘にお願いし、やっとこさ会場へ。
時には娘の肩を借りないといけない有様。
娘も希望しているキャストの決まる日だけあって、大変なのに。
娘はこの日のために、練習をしっかりしていました。
母(私の妻)の助けを借りて、歌の練習をしていました。
奥さんは音楽畑の人間なので、ピアノ演奏などはできるので、希望する役を獲得するために、娘は一生懸命でした。
じつは。
父親が今回の脚本を書いたミュージカルに、初期、娘はそう重要な役回りは考えておらず、どこかで出られたらいい、というようなことを言っていました。
私はそれを真に受けていたのですが、前々回の集まりの時に、「誰か、この役をやりたいって思ってる人はいる?」とM先生が質問したとき、娘を含めて三人の女性の手が。
三人とも同じ役の希望、かなり重要なKという役どころでした。
私は「娘よ、おまえ、そうだったの?」みたいな感じで、驚いたのでした。
前回の集まりの時、三人の内の一人、新規参加したIさんの歌唱力が飛び抜けて高いことが判明。
Iさんは某大学のミュージカル科卒。
娘は「たぶんもうダメだ~」的なことを言いながら、一生懸命練習していたのです。
父としては娘にやらせてやりたいけれど、それは私情。
この件に関しては、M先生に判断を委ねようと決めておりました。
これまでの経緯から、私がミュージカル全体の成功のために、絶対に欠かせないと思っていたのは、同じK配ぜんの仲間、Hさんでした。
これは客観視できます。
彼女のために当て書きまでしたキャラクターもあります。
たとえその役を他に譲ることはあっても、他のどこかのメインキャストの中に、彼女が存在しているべきでした。
彼女がいなくなるということは、ミュージカル全体の損失につながる。
てなことは、それは他人だから言えるんですよね~。
でも、娘の後押しは、なかなかできません。
親ですから、正確な判断を欠くということもあるでしょう。
しかし、M先生と私の話し合いになったとき、私が特別にひいき目で見ているわけではないことが分かりました。
M先生は娘のことを、なかなか高く評価してくれていました。
希望するKという役どころも、Iさんか娘だろう、と。
圧倒的にIさんのほうが有利かと思っていた私には驚きでした。
「娘さんも歌、うまくなってる。ただねえ……」
M先生は二人のどちらかをK役に当てはめた場合のプラス面とマイナス面を考えていました。
それは私の考えていたことと、まったく同じでした。
私は腰の痛みをこらえつつ、その日の回し読みを聞きながら、出演希望者の方々がどの役に当てはまり、どれには当てはまらないか、消去法で考えていました。
キャストというのは、役と役者との間に相性があります。
集まってもらった人たちの中には、能力的に高い人が多く、言ってしまえば、誰もがどの役もこなしてしまう可能性がありました。
しかし、それでもやはりこの役柄には、あまり適任ではないとか、逆にはまるだろうとか、出てくるのです。
K役のことだけでなく、他のすべてのキャスティングについて、さまざまなことをM先生と話し合い、結局、立ち稽古的なことをやらせて、歌を歌わせたらどうかということに。
読み合わせと違って、動かしたら演技もまた違ってくる。
と、M先生の提案で。
話し合いに使われた二階の部屋から階段を下りるのにも、娘の手を借りなければならない私。
「実質的にはおまえとIさんの二人に絞られているから、演技をがんばんなさい」
父としてはそれくらいしかいうことがありませんでした。
そしてオーディションを兼ねた立ち稽古が。
娘、精一杯やっていました。
緊張しているよう。
最後の歌も歌いきりました。
K役というのは、主役ではないし、出演回数もちょっと控えめ。
けれど、ミュージカルとしてのストーリーの中では、非常に重要なものを担っています。
歌で観客を酔わせるぐらいのものがあればベスト。
Iさんの演技が始まる(この子、舞台映えしそうな、一種の華めいたものがあるんだよな~と、非常に客観的に考えている私)。
そして、歌。
課題となったシーンの歌に関しては、できあがったのが最近で、あきらかにIさんは娘に比べて練習不足でした。
けれど。
娘が精一杯のところでも、彼女はまだ余裕がある。
さすが専門にこういったことを勉強してきた人だけのことはある。
私はこの歌のあるシーンをやらせてはどうかと、M先生に提案したのですが、この比較的難しい歌を、娘とIさんがどう歌うのか、確認したかったのです。
M先生と最後の話し合い。
結局、K役はIさんに。
けれど、娘も他の重要なキャスティングの中に(娘がKから外れた場合は、こっちがいいとM先生が提案してくれていた)。
重要なキャストから漏れてしまった人はショックだろうなと思いつつ、このミュージカルの舞台に立ちたい、メインキャストをやりたい、という熱意、熱気を私は肌で感じ取っていました。
その人たちのまっすぐな眼差しを感じ取りながら、
「今ここに集まっている人たちが、このミュージカルを作るための最良の集まりだと思う。お客さんに喜んでもらえる舞台にしましょう」
と話す内容は良いんだけれど、なさけな~く腰の痛みをこらえつつ椅子に座ったまま話して終えました。
途中、奥さんからメール。
「パパちゃんの具合と娘の役はどうなりました?」
私から返信。
「腰はひどい。娘はY役に」
帰宅した私たちを、奥さんと息子が待っていました。
奥さんの作ってくれたおでんを食べながら、娘と乾杯しました。
希望していた役どころからは外れましたが、M先生が良い評価をしてくれたこと、メインキャストの一人になれたことで、娘は喜んでいました。
「がんばれたのは、練習を手伝ってくれたお母さんのおかげ」と、娘。
奥さんも嬉しそう。
おでん、ほこほこ。
(我が家は夏でも鍋をする家です)
奥さんの作ってくれるものは、何でも美味しい

今日あったこと、そしてこれからのこと。
そして腰のこと。
zephyr家の熱い(痛い)一日は、こうして終わったのでした。
う……痛い……(ノ_-。)