ボイドに関する私見 |  ZEPHYR

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 家族を持つ一人の男として
 心の泉から溢れ出るものを書き綴っています。

先日のセッションの時にも話題に出たのですが。
西洋占星術には、ボイド・オブ・コース(Void of Course)という特殊な時間理論があります。
ホロスコープは地球を中心にしてみた宇宙の図です。
12星座。
10の天体。
これが基本ですが、地球の衛星である月は、当然のことながら、地球を中心にして見ているので、すごく動きが速い。
そして人の感情や心理にも深く関わっている天体です。

この月は一つの星座を、約二日半ほどで通過してゆきます。
様々な星々とアスペクトを結びながら。
そして、メジャーなアスペクトを最後にどの星かと結びますが、その後、星座を出るまでの間、月が新しい天体とのアスペクトを結ばなくなる時間帯があります。
これをボイド・オブ・コースといいます。

ボイドとは「空虚」といった意味です。
占星学者ウィリアム・リリーは、この時間帯に占星術鑑定を行うと、相談者と占者の間の意思疎通が悪くなることを指摘し、この時間帯を「魔の時間」(Void of Course of the Moon)と呼ぶようになったのです。
一般的にこの時間帯には、

新規な事業の立ち上げ
約束
旅行の出発
重要な会議や決定


などは行わないほうが望ましいと言われます。しかし、日常的な業務や仕事はそのまま行ってけっこうです。
しかし、ボイドの時間帯では情報の伝達ミスや過誤が多くなると言われ、そのために重大な事故や業務上の失敗、停滞、障害を引き起こすことはあります。

たとえばボイドの時間にプロポーズされたら?
それはけっこう危ういことになります。
約束は無効化されてしまう可能性があります。

ボイドの時間帯に、お店をオープンしたら?
うまく行かず、廃業することになる可能性があります。

こんな危険な時間帯が、ほぼ二日に一回、長いか短いか、そのときのチャートによって違いますが、存在しているということは、けっこうな脅威です。

「え~、そおなの~。じゃ、このあいだの彼氏の告白は~?!」
とか。
「その日に受験なんだけど、どうなの?」
とか。

いろいろと心配が噴き上がってきます。
実際、占星術師の間でも、この時間帯は重視されていて、セッションの時も神戸から来られたHさんから、そのことについてのお話がありました。
ボイドの時間帯ではできるだけ占わないようにしているとか、タロットは使わないようにしているとか、その時間帯には間違いを犯す可能性があるので、割引しているとか。
これらもひとつの対処法として、ご立派な態度、誠意ある行いだと思います。

私は普通に鑑定を行っていますが、ボイドの時間帯であるということは、認識した上でやっています。
そこで、私なりのボイド解釈、その対処法について、今日は書こうと思っています。

ちょっと長くなりますが、お付き合い下さい。

実際、ボイドの影響を受けやすい人、受けにくい人がありそうだということは、これまでの経験から分かっていました。
じつは私はボイドの影響をさほど受けません。

ボイドというのは、月のその星座での最終アスペクトから次の星座に移るまでの空白時間帯ですから、スケジュールはばっちり決まっています。万人共通です。
Aさん、Bさん、Cさん、関わりありません。
にも関わらず、ボイドの影響をもろに受ける人と、そうでない人がいる。

「でも、そんな違いってあるの? じつはみんな、影響を受けているんじゃないの?」
という考え方もあります。
でも、それならボイドの時間帯に決めたことは、100%、全部だめになるのでしょうか?
ボイドの時間帯って、二日に一回くらいあるわけで、そのときに会社では重要会議が行われてしまうことだってあります。
世界中で会議がその時間に行われています。
そのすべてがだめになる、無効になる。

あり得ないと思います。

もちろんボイドの効果は、かなり大きなもので、ボイドの時間帯に創業した会社、店、これは危険です。
あえてその時間帯に創業する必要もないし、わかっていればその時間帯に会議なんかするな、ということは絶対的に言えます。

神戸のHさんは、ボイドの影響をわりともろに受けられる経験をなさっているようです。
実際、私もボイドの時間帯に受けた依頼には、手を焼かされることがありました。
たとえば出生時間に関する情報が間違っていたり、質問者自身、質問の意図が明確でなかったり。
紆余曲折を経て、何度か鑑定を繰り返し、ようやく解決に至ったりと。

しかし、世の中に存在するすべての人に等しく、同じ効果、ということはないと、私は思っています。

占星術理論の基礎には、ホロスコープ・チャートに表れる動きは、人の内面の表現であるという考えがあります。
もちろん具体的な出来事も表現するのですが、それを見て受ける人の印象というのが、そこに表現されている。

たとえば冷酷無惨な大量殺人事件が起きる。
それを知る人々がいる。

すると、チャートはどちらかというと、その「認識」に関わった部分で表示していることが多いのです。
事件発生と発覚があまり間をおかない場合、あまり意味はありません。
しかし、重大事件であればあるほど、その発生時と発覚時に隔たりがあればあるほど、発生時にはチャート上隠れていて、発覚時にもろに出ているものです。

つまり認識する人がいっさい存在しなければ、チャートなどなんの意味もない、ということなのです。
これは量子物理学の理論にも通じています。
量子理論では、月が夜空に存在しているという事実さえ、人の認識に関わっていると考えるからです。


さて占星術では、この人の内面にとくに関わっている月。
これは情緒、感情などの動き、またそうしたセンサーの役割を果たしています。
月が一つの星座の中で、他の星とアスペクトを取っているとき、その星座のテーマに沿った反応を、他の星々との間に次々に結んでいきます。
が、最後の一つとの関係が終わると、月はその星座の中でもう宙ぶらりんの状態になってしまいます。

ワーカホリックになっていた人が、いきなり定年を申し渡され、やることがなくなって情緒不安定になるのと同じです。

ここにボイドの本質があります。
ボイドの時間帯の人々の反応というのは、こう考えることができます。

ボイドの時間帯には、月というセンサーがブランク(空白)になり、普段は抑制されている感情(月)が過剰反応し、そういったことが原因で、この時間帯での会議はやたらと長引いたり、あるいは論議の土台となる情報に過誤があったりして(情報の発信源の人の情緒が乱されるため)、有益な結論を得られないまま、またもう一度やり直すはめになったりということが起きてくる。またこの時間中に決断したことや始めたことは、決断や決定が人の過剰反応した感情によって為されることが多いため、判断ミスといったことを含め、当初の考えとは違う結末になったりする。

赤字の部分は、従来ボイドに関して言われていることに私なりの理論的な加筆をしたものです。
ということは?

そう。
ボイドの時間帯には、普段の自分とはちょっと違っている可能性があるということなのです。
だから、その時間帯にプロポーズしたとしたら、それはブランクになって過剰反応している月が言わせている可能性があり、そのために後で「早まったかな」みたいな理性が戻ってきて、結果的に「無効」になってしまう。
会議も、多くの人が過剰反応しているので、普段は言わないような暴言になったり、また暴走的な考えが飛び出して議論が紛糾したり、ということになってくるのです。

つまり。
普段通りの自分であればよい、ということだと私は考えています。
ボイドの時間帯でも、日常の業務はして良い。
つまり占星術鑑定でも、ボイドであろうがなかろうが、変わらずに行っていけばよい。
もちろん、私もボイドということが分かっていれば、あえてその時間帯に鑑定は行いません。が、どうしても都合が合わず、その時間になってしまうことは、比較的よくあります。
なので、その時間帯に鑑定を受けても慌てず騒がず、普通にやってゆきます。
もちろん、情報の過誤、入力ミス、こういったことがないか、チェックは普段よりも念を入れます。
そしてきわめてたんたんと、落ち着いた態度で、相談者の意図が明確でない場合などは、それをはっきりとさせるようにディスカッションします。

そうすることで、日常と変わらずに鑑定ができます。
これを繰り返せば繰り返すほど、ボイド時間帯での鑑定というのが、「日常業務」になって行きます。
ボイドであろうと、日常的なことは行って良いわけですから、注意さえすればなんの問題もない。

人の心理などが影響しそうなタロットなどはどうなのか?
これについては私は前々から、自分のタロットは周囲のコンディションにまったく影響されず、正しい答えを導き出すと信じています。
これは盲信とかではなく、そうでなければならないのです。

タロットは人の潜在意識がカードを引かせているので、たとえばなにかちょっとした不都合があると間違った結論が出てくるのではないか? というような恐れを抱いていたら、タロット自体の信頼性が自分の中で揺らいでしまいます。
たとえばそばで煙草を吸われたら、もう汚れてしまってうまく答えが出ないのではないか? というような恐れや揺らぎがあると、それは本当にそうなるはずです。
しかし、私はたとえば私が頭痛を起こしている、とか、なんか風邪っぽいとか、かりにそのようなコンディションにあろうと、また相談者が絶望の中にいて超悲観的になっていようと、ボイドの時間帯に入っていようと、タロット自体はそのようなものに影響を受けずに、正しい答えを出してくると確信して取り組んでいます。
そのように確信して行わなければ、タロットの能力自体に条件付けをしてしまう。

もちろん理性的な検証は必要です。
しかし、取り組むときにはそうでないといけない。

これらが私自身の、ボイドとの向き合い方です。
もちろん個体差がある話なので、一概に人に押しつけるつもりはありません。
セッションのときに神戸のHさんと「太陽度数が星座の終わり頃だと影響を受けにくいのでは?」という仮説をお話ししたのですが、これは影響を受けるHさんもそうだということで、この仮説は否定されました。これもまた非常に有益なディスカッションでした。

とすれば、あと考えられるのは月自体のポジションと性質などかな、と考えています。
その人の出生チャートの中で、月が安定して、理性的な人ほど、当然ボイドの影響は受けにくいのではないか?

これについても今後の研究課題したいものです。


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