土星の侮れない効果について |  ZEPHYR

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 作家として
 占星術研究家として
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 心の泉から溢れ出るものを書き綴っています。

土星は試練や苦難の星ということをお話ししましたが、これは万人に共通です。
ただ、その作用の仕方は千差万別です。

土星をうまく解読できる占星術師は一流とまで言われます。
それほど奥が深いのが、土星という星なのです。
ちょうどカクテルで、「マティーニに始まってマティーニに終わる」という言葉があるようなものです。基本であり、奥義でもある。しかもうまく作るのは非常に難しい。またどんなマティーニがうまいと感じるかも、人によってずいぶん違っていて、それをバーテンダーは見極めなければなりません。
ほんとによく似ています。
どんな業界、どんな道にも似たようなシンボルがあるものです。

その土星。
たとえば5ハウスに土星が入ると、これは恋愛や遊興の部屋ですから、ここに深刻さがもたらされ、遊びの恋愛ができなくなったり、また気楽に遊ぶと言うことができにくくなります。遊びでやっていることが真剣そのものになっていき、もはや趣味の領域ではなくなっていきます。
5ハウスは子供の部屋でもあるので、子供の問題で悩まされる、子供が試練となる、ということがもっとも基本的な読み方です。しかし、それはきわめて単純な解読の仕方で、その人の人生における成長プロセスの中で、子供が重荷と感じられたり、子供が引き起こす様々な問題が、その人自身にとってまさにもっとも必要とされる出来事であったりします。

土星が社会活動を示す10ハウスに入ると、権力志向が強化される、そして出世を望むというのもあります。しかし、同時にそこに「不運」が持ち込まれるため、ある時失墜することもあり得ます。
土星はどんな人にとっても、強いこだわりとなって現れることが多く、また「苦しいこと」「乗り越えるべきもの」の象徴ですから、これが10ハウスにあると、自ら社会の中で苦闘を演じることを無意識に好む選択をしやすいのです。

1ハウスは自分自身の人生全般や性格の部屋ですが、ここに土星が入ると、その人の成長は非常にゆっくりと時間をかけたものになりがちです。いわゆる奥手な子供というのがこれです。これは自我の形成にもある種の抑圧がかかるため、取り込んだ情報を自分の中に整理するのに時間がかかるためです。
「どうしてうちの子は、他の子と違うんだろう」「なんでこんなに物わかりが悪いんだろう」「よその子はもう○○ができるのに、うちの子はまだこんな程度……」などと思う親御さんは、わが子がこのケースに該当していることを想定してみると良いかも知れません。
土星が1ハウスにあると、どうしても成長はゆっくりとしたものになります。そしてそれはその子の個性であって、罪ではありません。
たとえば7ハウスに土星があれば、概してその人は晩婚になりがちです。これは土星の「遅らせる」効果のためです。晩婚になるのは、その人の罪というわけではありません。それと同じです。
しかし、1ハウスに土星のある子は、長じるに連れて権威と落ち着きを身につけ、しっかりとした人間に形成されます。だから、それを信じてやることが大事です。

またたとえば土星が金星と強いアスペクトを作っている女性の場合、これは良く働けば「生真面目な恋愛観」や「現実的な愛」という傾向を作りますし、「年上の男性との愛」というようなこともあり得ます。しかし、これが悪く働くと「愛の欠乏」や「冷めた愛」「不感症」といったことにもつながります。
金星と土星のハードアスペクトは、愛情の問題に暗い影を投げかけやすいことはたしかです。しかし、このタイプの女性が土星の抑圧や逆境の中で、金星(愛)をしぼませてしまっているばかりなのかというと、これもまた間違いです。中には、金星が猛然と反撥行動を起こし、土星(枠、規制)を打ち破った行動を取っている場合があります。たとえば、ものすごく奔放で淫らな生活を送っているとか。
堅実で保守的な女性と、奔放で淫らな女性の背景にあるものが、実は同じ金星と土星の合だったとか、そんな意外なケースもあるのです。
これだから、土星の解読は始末に悪いのです。

人生の流れの中で、土星が作用するとき、人は試練や苦難と感じる出来事に遭遇しやすいのですが、その度合い、出方も人それぞれです。
出生ホロスコープの中で、土星が重要な星とハードアスペクトを作っている場合、土星が同じハードアスペクトで巡ってきたときに、かなりきつい出方をします。
しかし、もともと土星が静穏な状態の人は、比較的試練もゆるいものです。

今、土星・天王星のハードアスペクトの洗礼を世の中全体が受けているわけですが、今後、土星の影響力は非常に強まります。
景気は失速し、世界経済も停滞するかも知れません。
しかし、人に試練の波があるように、世界にも同様な波があるだけのことです。

それまでのやり方では上手く行かなくなってきたとき、「それじゃ、ダメなんだよ」と教えてくれるのが土星なのです。

人の心に愛が、世界に調和が満たされますように。