裸の王様 中国と… |  ZEPHYR

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ダライ・ラマ14世が来日した。
そして非暴力、中国でのオリンピック開催を支持すること、チベットの独立ではなく自治を求めること、などを訴えた。
私が今月、ローマ法王が何らかの動きを示すかも知れないと、4月の予測で述べたが、法王違いだった。当然、これは非常に高位な宗教的指導者の動きの暗示が読み取れたからなのだが、ローマ法王に匹敵する仏教界の指導者といえば、ダライ・ラマ法王をおいて他にいない(ローマ法王がなんらかの動きを示す可能性も、まだ残ってはいるが)。

チベットで、本当に今、なにが起きているのだろうか。

サンフランシスコでのオリンピック聖火リレーは、直前にインターネットで告示されていたコースさえも、突如、完全に変更してしまい、妨害の入る余地のない高速道路まで使い、ゴールは空港という有様だった。
ロンドン、パリと妨害事件が連続して起きていることからの警戒と、緊急的な措置だったのだろうが……。
スポーツと政治は切り離すべきというのが、世間的な良識と信じられている。
個人レベルではそうだろう。四年に一度の祭典に向けて、人生を賭した努力をしてきているアスリートたちのことを考えたら、政治的判断や介入で参加不参加を決めるなどというのは、あまりにもかわいそうだし、平和の祭典というオリンピックの意義を考えたら、それを行うことこそが平和につながるという考え方もあるだろう。

暴走の4月。
オリンピックと連動したチベット争乱。この問題は、やはり沈静化しそうにない。
4月の予測で、今月もっとも凶意の強くなる配置は、19、20、21日前後、それに次ぐ強さが11、12、13日前後、27日前後ということを述べた。
このままでは、これらの時期のどこかで、さらに大きなトラブルが発生し、より深刻な国際問題に発展する可能性もある。
もっとも単純で早い解決方法は、中国政府がダライ・ラマ14世との対話テーブルに着くこと。そして世界中のメディアに、チベットでの取材報道を解放すべきだ(後ろ暗いところがなければできるはず)。
ダライ・ラマはチベットは中国の領土でいいと言っているのに、なぜ話し合いに応じようとはしないのだろうか。
なぜ、聖火リレー妨害がチベット亡命政府の陰謀だと断定し、チベットの争乱もダライ・ラマが操っていると公言してはばからないのか。

百歩譲って(あくまでも百歩も二百歩も譲っての話だが)、そのような事実があるとしても、証拠も挙げていないうちにそのような言葉を、超大国になろうとしている政府が簡単に発していいのか? 断言するのなら、同時に証拠の提示があるべきではないか。
とはいえ、過去、アメリカ合衆国も似たようなことをやっている。アメリカがイラクに仕掛けた戦争は、大量破壊兵器への危険を未然に制圧することが名目だったが、結果的にそれは存在しなかった。つまり、ないものをさもあるかのように吹聴し、同盟国同調国を扇動して起こしたものだ。
確信犯的嘘。あるいは事実の誤認。
そのどちらかに基づいての軍事行動だった。
客観的に言えば、アメリカのやったことは、今、中国政府が取っている態度と質的にまったく変わりがない。その結果、失われた人命の量的な部分では、さらに罪過が重い。

超大国という肩書きがつき始めると、どうやら国もヤクザと変わりなくなってくるらしい。白でもおれが黒と言ったら黒なんだ、という親分気質の本性が、見苦しいほどに見えてしまう。
近隣の住人に言いがかりをつけて回り、時には暴力もふるうヤクザの家で、「今度、町内の親睦会をするから来てくれ」と言われて、喜んで参加する住人がいるだろうか?
親睦を深めたいなら、日頃の行いを何とかしろと言いたくなるのが人情だろうし、国家的にも同じだろう。
なぜなら国家が人を作るわけではない。
人の集合が国家を結果的に作っているからだ。

イラクを叩きたかったアメリカ。
チベットを手放さず、弾圧し続ける中国。
本音は別にあるんでしょう? というのが、ある程度理性的な人間には分かっている。
私たちにもむろん分かっている。

裸の王様である。
滑稽なだけ。
哀れなだけ。
しかし、この上なく迷惑な王だ。
そして、私たち日本人と日本も、このような王に振り回され、荷担させられる国の1つだ。