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― the field for the study of astrology and original novels ―
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私が中学生の頃だったと思う。
少年ジャンプで、なんともおどろおどろしい画とストーリーの漫画が連載されていた。
「暗黒神話」(諸星大二郎)である。



左が初版、右が集英社文庫のコミックス版で改訂されたもの。
タケシという一人の少年が主人公で、謎めいた事件に巻き込まれ、彼は化け物のような神々から蛇の文様の聖痕を身体の各所に刻みつけられていく。
その神々とは、タケミナカタやオオナムチといった古代日本の神々であり、彼はやがて自分が選ばれた者、アートマンであると知る。
アートマンは全世界を支配する転輪聖王(てんりんじょうおう)となるか、仏陀の道を選ぶかの選択を迫られる者であり、ブラフマンという巨大な力によって選ばれた者なのだ(この物語の中での、アートマン、ブラフマンの定義は、インド哲学のそれとは異なっている)。

タケシは古代の英雄、ヤマトタケルの転生した姿であり、彼はヤマトタケルと同じ西征、東征のルートを旅しながら、アートマンへの野望に燃えた菊池一族の若い当主との確執を経、まるで神話をコピーするかのような運命を辿っていく。
そして旅を終えたとき、彼は殺された父の復讐を果たし、身体にはオリオン座の形に聖痕が刻みつけられていた。

邪馬台国の謎、神話の岩戸隠れの真相、そしてアマテラスを苦しめたというスサノオの正体。
アートマンとしての運命を受け入れた彼の前に、すべての真相が明かされる。
オリオン座の馬頭暗黒星雲。
それこそが神話上、スサノオとして語られる宇宙の力であり、また彼に与えられた乗り物でもあった。
暗黒星雲を伴い、地球に舞い戻った彼は、世界を破滅させるのか、それとも救うのか?

衝撃の結末。

すべての謎が解かれ、すべてのパズルがぴたりとはまる。
この漫画から、すべてが始まった。
私が神話好きになったのも、神社好きになったのも、邪馬台国論争に関心を持つようになったのも、すべてこの一冊の漫画からだった。
ほぼ同時期、ジャンプに「巨人たちの伝説」(星野之宣)というSF漫画が掲載されていた。
これも有史以前の過去から未来へと貫かれた、壮大な人類と宇宙の物語であった。
「暗黒神話」と「巨人たちの伝説」の二つから大きな啓示を受け、私は高校時代に処女作である「黙示録神話」を書いた。

一冊の漫画が、人の運命を変えることもある。
私にとっては、他のいくつかの小説と共に、「暗黒神話」こそが運命の一冊だったように思う。