占星術理論にはVoid(ボイド)というものが存在します。
どういうものかというと、ある星座の中で月が最後に他の惑星となんらかのアスペクト(意味ある角度)を形成してから、その星座を抜けるまでのブランクの時間を指して、ボイド・タイムというのです。
ボイドとは形容詞としては「空虚な」とか、名詞としては「虚無」、他動詞としては「無効にする」などの意味がありますが、この占星術上の時間帯は2~3日に一回は必ず訪れます。
そして生まれ星座と同じ星座に月がいるときに発生するボイド・タイムは、その人にかなりの影響力があるといわれます。
効果のほどは? というと、まさにその言葉通り。
その時間帯に決めた物事は、うまくまとまらなかったり、後で白紙撤回されたりするのです。まさに空虚、無効にする効果があるのです。
そしていやしくも占術家であれば、この時間帯の占い、鑑定は厳に避けるべきと言われています。
なぜならこの時間帯の占いは、どんな名手であっても間違う可能性があるからなのです。
そうは言っても、その時間帯しか来られないとか、さまざまな事情で鑑定せざるを得ない場合も出てきます。
以下のお話は、私がそのボイド・タイムにある男女のことを鑑定したときのものです。
ボイドの効果のすごさを知り、そしてこの男女の幸せを、皆さんも願わずにはおれなくなると思います。
某日。
携帯電話に入った連絡を受けて、私は鑑定に出向きました。その途中で、「しまったな、ボイドだ」ということに気づきました。
しかし、無自覚にボイドに突入するのと、それと知りつつ鑑定を行うのでは、雲泥の差があります。
たしか午後4時半ごろまでがボイド・タイムだったと思いながら、慎重な鑑定を心がけようと決意。
やがてその場に現れた若い男女は、まず女性が先に、後から男性がという順番で、交代に私の前に座りました。
女性は20代半ば(もちろん私は生年月日を聞いていますが、匿名性を保つため)のかわいらしい女性Aさん。その顔立ちや上品な印象から、私はいつもの調子で「出生時間は今日は聞いていないとのことだが、うーん、蠍座のASC(東の地平線)か、いや、天秤座かも」などと考えながら、鑑定を開始(注・ASCは出生の星座のことではありません。その人が生まれたとき東にあった星座のことです)。
やはり相性のことが知りたいご様子。
今は席を外しているお相手の男性との未来。
その男性との別れが占星術でも、タロットでも濃厚に出ました(タロットを行うとき、私はボイドであってもかならずタロットは真実を照らし出してくれると確信を心に持ち、自分でも鑑定を過つことなきよう、気持ちを引き締めました。でないと、タロットのようなシンクロニシティを利用する占術は、鑑定士の心理が影響してしまい、『間違うかも』と不安に思えば、本当に間違った結果が出てしまうことがあるのです)。
Aさんはかなりショックのようで、泣きそうです。しかし、私もどこかで割り切れないものを感じていました。さまざまな角度から考察を重ねましたが、やはりお二人の関係に、いずれ大きな変化が訪れるのは必定に思えました。
彼女の鑑定はボイド・タイムにずっぽりはまっていました。4時半。ボイドが抜けると同時に、お相手の男性Bさんと交代。
Bさんは転職を考えておられるとのこと。今は絶好機で、OKです。
そしてやはり彼女との相性の話題に。
先の鑑定を踏まえながら、私は二人の相性を説明しました。
「相性は悪くない。悪くないが、別れの暗示がつきまとってしまう」
そんな意味のことも、ややぼかしながら説明を。
すると彼の口から、衝撃的な事実が。
彼のご両親、そして祖父母、二代にわたって、結婚後、どちらかがすぐに亡くなるという連鎖が起きていることが不安だと。
「これだ!」 私は直感しました。
これこそが欠けていたピース、Aさんの鑑定をしたときに私が見抜けなかった真実だったのです。ボイドを抜け、私の前に真実が差し出されて来たのです。
さらに鑑定を推し進め、運気を調べていくと浮上してきた未来のシナリオ。
それはBさんとAさんは2年後くらいに結婚し、そしてその後、Bさんが亡くなってしまうというものだったのです……。
私は占いきれなかった部分もあるので、二人に出生時間を調べて教えてくれるよう依頼しました。
そして後でAさんからメールで出生時間が届きました。
ホロスコープを再作成。
やはりAさんはASCが天秤。金星が地平線上に上昇しているので、とてもかわいらしく魅力的です。
しかし、これは……。
判明したのは、驚愕の事実。
Aさんは恋人を失ったり、配偶者が結婚後に消えてしまったりする運気の持ち主。
Bさんは家系に関係した特質を強く持ち、そのことが原因で死ぬ可能性があり、愛する者をこの世に残して去ってしまうかもしれない運気。
二人は結ばれるべき運命の二人だったのです。
パズルのピースとピースが、ぴたりと合うように、二人は出遭うべくして出遭い、愛し合うべくして愛し合い、そして……。
二人はパーフェクトです。相性がどうのこういういうレベルを超えた、運命の男女だったのです。
「では、男のBさんのほうは未来に死んでしまうのか? それでパーフェクトだっていうのか?」
そう思われることでしょう。
よく考えてみて下さい。
そんな二人の未来が、シナリオ通りに事が進むのであれば、なにも私のところに占いになど来なくて良いのです。
彼らはシナリオを書き換えるために来たのです!
だからこそ、それに気づくであろう占い師の元を訪ねてきて、そのための助言をもらう必要があったのです。それは私でなくても良かったかもしれない。
だが、きっと彼らにとって一番いい位置に私がいたのでしょう。
私は彼の命運を変えるためにはしなければならないことを伝えました。たぶん彼らはそれを受けて行動を起こしてくれるでしょう。
本当なら失われてしまったかもしれない愛。それを守るために。
私が送った長いメールに、Aさんが返信をくれました。
「衝撃を受けましたが、運命の相手ならとても嬉しく感じました。私は絶対に彼を失いたくありません!!!」
「ずっとずっといっしょに居れると信じています」
皆さん、この二人のために祈ってやって下さい。名前などわからなくても、きっと皆さんの祈りが二人に愛と光をもたらし、予定されていた未来をひっくり返してしまうでしょう。
Void(空虚、無効)、そんなものは二人の間に本当はいらないのです。
どうか幸せに。二人で愛を守り抜いていって下さい。
この記事はご当人の了承を得て、UP致しました。