なんというのか、予想外です。
何がって、「ノー・ソリューション」の世間での反応ですね。
とりあえず「答えはWEBで」という部分だけが、一人歩きしているようなのですね。
「まえがき」にも書きましたが、筆者としてはこれはミステリー・イベントの原作小説の特性を生かそうとしただけの意図で、さしたる野望はないのですね。
たとえばこのコンセプトで宣伝し、売ってやろうとか(そりゃ、売れたら本音は嬉しいですが、それを決めた時点では実はとても軽い気持ちだった)、そういう打算はあまりなかったように思います。ま、心の片隅に、ほかでやらないことをしなきゃ、本の定価が高めに設定されそうなので売れないだろうなあ、とはたしかに思いましたが(笑)。
ところが刊行してみると、その部分だけがやたらと話題に。
考えてみると、当然の帰結かも、と反省。
これは本当のことですが、実は私はこの「答えはWEBで」という(このフレーズは出版社がつけたものですが)コンセプト、自分が最初なのかどうか知りませんでした。
前にやっている人がいるのではないかという気がしていて、ホント、こういう形態でのミステリーも今後はありだろうぐらいにしか思ってなかったのですね。
出版社に対して、この提案を行ったのは、たしかに自分です。
それは間違いないです。
でも、自分としては先人がいてもおかしくないよなあ、という程度の感覚だった。
ところがところが、蓋を開けてみると、どうやらミステリーのWEB解決に関しては「ノー・ソリューション」は初出だったらしい。
おやおや。
そりゃ、話題になるかも。
そして、新しい形態のものが世に出たときには、当然、賛否両論が巻き起こる。
これも水が低いところに流れるといったのと同じくらい、普通の自然現象なのですね。
私は普段、ネット上の評判などは気にしない(見もしない)のですが、今回はちょっとチェックしています。
なぜかというと、解決編を収録していない小説なので、当然、読んだ人の反応が気になるのです。
「簡単だったぜ」とか「これで上級編とは笑わせる」とか、そういう辛口コメントでもいいのですが、目にしてみたいので。
それによって自分の書いたものの水準を計りたい。しかし、これはWEBでなくても、普通の作品でもファンレターやら、ネット上の書評などでも行われていることなので、このコンセプトだからどうこういうほどのものでもないのです。
しかしながら、そういう中身に関するコメントはよそのネット上では今のところ見かけず、「答えはWEBで」に関するご意見ばかり。
「ノー・ソリューション」はミステリーの謎解きの楽しさに焦点を絞った作品集なので、本当は謎解きに関する反応こそが知りたい。
しかし、それは今のところ無し。
コンセプトは面白いが、肝心なのはそのコンセプトに耐えうるプロットやストーリーやキャラクターなどを持っているかどうかだというご意見も。
そうなんです。
こっちもその中身に関する反応が知りたいんです。
謙虚に。
そのあたりのことは、もう筆者の手を離れているので、普通のミステリーと変わらないんですよね、実は。
つまり読者の評価という十字架にかけられているわけです。
今回、私は100枚程度の中編小説三つに、それぞれ難易度の異なる謎かけを行いました。ストーリーや人物にもそれぞれの物語が要求するものが用意されました(もちろんこれが最上などということはあり得ないのですが)。
謎解きが「ノー・ソリューション」の主眼ですが、それを除いても、読むに耐えうる作品にそれぞれ仕上げたつもりではいます。三つの作品、どれも、それぞれにテーマ、謎解き、人物設定、現時点の自分の力を注ぎ込んだつもりではいます(もちろんまだまだ未熟は痛感していますし、上級編などといってもかなり限られた制約の中でやっていることなので、私よりもずっと本格ミステリーの才能に溢れた人が手がければ、さらに高度なものになることは間違いないでしょう)。
しかし、本人の思いこみと世間の評価は違います。
学校のイジメのような悪態は別にして、率直な評価に対しては、こちらも真摯に受け止めなければと思っています。
こっちはまな板の上の鯉。
いや、フナぐらいですかね。