前世紀末からの世間で起きる事件を見ていると、日本人もいよいよ壊れたな、という印象を強く持つ。
以前は猟奇的な小説の中ぐらいにしか存在しえなかった事件が、次々に起きる。
親が子を、子が親を殺す。
あるいは弱い存在をターゲットに殺人を犯す。老人を、子供を、女性を。
被害者、あるいはその遺族には許し難い犯人。
だが、彼らもまた救いが必要な状態にあって、哀れなほど壊れている。
何とも嫌な時代だ。
私たちの世界はどうなってしまうのだろう。
このままでいいのか?
切実に感じる。
「リメンバー」を書こうと思ったのは、この嫌な時代のわずかなりとも風を吹かせたいというのが動機だ。
この殺伐とした世の中、よどんだ空気の日本に、一瞬でもよい、涼風を。
ただ物語というのは、いいことばかりでは作られない。
生まれて、愛されて、すくすく育ち、なに不自由なく成人し、希望の職に就き、幸せな結婚をし、子宝に恵まれましたとさ。
こんな物語を誰が読むのか。
TVドラマにせよ、小説にせよ、主人公はかならずなんらかの「負」を背負っている。
逆境、苦難、トラブル、悲しみ。
闇なくして光が光として感じられないように、負なくして「正」も語れない。
今、主人公は闇の中にいる最中だ。