読者を罠にはめるテクニック |  ZEPHYR

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    ゼファー ―― the field for the study of astrology and original novels ――

 作家として
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 心の泉から溢れ出るものを書き綴っています。

推理小説は構造的に「謎」を有する物語である。

「謎」→「解明」

というおおざっぱな流れが、推理小説のストーリーの骨格であるといっても過言でない。

ただし「解明」は、あくまでも論理性を有するものでなければならず、超能力や刑事の勘、あるいは場当たり的な成り行きで、解明もされずにただ犯人逮捕とか、そんなものではいけない。

読者が納得するだけの論理展開がなければならない。


推理作家はこの解明に至るまでの間に、いくつもの伏線を張り、こっそり情報提供を行っている。読者がその情報を見つけ、それを材料に推理できるようにするためのものだ。

これは絶対に必要ではないが、まったくないと読者はなかなか納得してくれない。

そんなものを必要としないタイプのミステリーもあるので、今回取り上げるのはあくまでも論理性で解明にいたるタイプのミステリーということで読んでもらいたい。


さて、作家はその伏線、情報提供に非常に神経を使う。

露骨に書いたら、すぐに犯人がばれてしまう。

だから、できるだけ読者の目を欺いたり、巧妙に隠したり、カモフラージュしながら提供を行う。

そのためのテクニックが、だいたい6つあると思う(ほかにもあるかもしれないが、多くは以下の6つ)。


1.目隠し。

 これはより大きな、目立つ謎や情報を、本当に解明のために必要とされる別な謎、情報の前に置くテクニックだ。これがより読者の注意を引く謎や情報であれば、読者はそっちに目を奪われ、真の情報を見逃してしまう。

2.木の葉は森に。

 数多くの情報の中に、真に必要な情報を紛れ込ませる。その数だけでも目くらましになるが、ほかの情報が本当に必要な情報の程度を軽くしてしまう効果を有する場合もある。つまり読者は全体を見て、なんということもない情報だと軽く考えてしまうことが多い。

3.最初の一手。

 囲碁の最初の布石のように、大事な情報であればあるほど最初に出しておく。その後ストーリーの展開や、他の情報の中に紛れ、読者はつい忘却してしまうことが多い。

4.叙述上の隠匿。

 解明に必要な情報の一部を、わざと伏せておく。ただ良く読み込めば、それと疑うこともできるような書き方をする。たとえば性別を明記しない、若い女性と思わせておいて、実は老婆だったとか、そういうテクニック。

5.常識を逆手に。

 一般的に信じられている固定観念を利用し、読者の思い込みの裏を付くテクニック。たとえば男は絶対に男性用トイレを使うとかいう常識的な決まり事の裏をかいたり、その社会では普通に一夫多妻が認められているが、日本人の常識にはそれはないとか、そういったものを利用するテクニック。

6.最新、あるいは特殊な知識や情報を解明に取り入れる。

 形状記憶合金とか、日々、進歩している科学技術や、特定の業種の人間だけが知っているような、専門知識を解明の材料にする。もちろん一般的な読者のほとんどは知らないが、ある程度、知識欲旺盛な人間なら調べられる程度のものに留めておくことがコツ。あまりにもその度合いがひどいと、読者は解けるわけがないので、納得してくれない。


など。

一般に推理作家は、「先入観念、錯覚、誘導による思い込み」などを利用し、読者を罠にはめているわけです。