拝ヶ石巨石群:熊本市西区河内町東門寺
基本的な態度として、オカルト、心霊現象の類は疑うことにしているので、公開するのは少し躊躇したが、折からの酷暑もあり、涼しくなる話題としてはありかなと思うので投稿してみる。まずは写真を。
石だけでなく、近くに立っている木の看板も透けているがそれは後程。
熊本市内のホテルに投宿してから、撮った写真を確認して背筋がゾッとした。もちろん、肉眼でこのように見えるわけはない。撮影したのは数代前のiPhone 5S。撮影は四月上旬、気象は薄曇りで時折陽が射していた。何も特別なことはしていない。いつものようにディスプレイのシャッターを押しただけなのだ。
熊本駅前でレンタカーを借りて走ること三十分。拝ヶ石巨石群は、金峰山の外輪山の山頂にある。山頂とはいっても標高447.8m、実際に登るのは200m程度だ。近くには小中学校や農協の支所があり、町の裏山といった体で一帯には聖地らしさはない。登り口には看板があり、遊歩道のようなものも整備されているが、中途半端な感じだ。訪れる人もあまりいないのだろう。
しばらく登って行くと右側に方位石の看板が立っており、それらしき巨石がでんと座っている。
「この石は、拝ヶ石と三の岳を結ぶ線上にある。表面にはレリーフ上の模様と星座を思わせるペッキング穴があり、強烈な磁気異常もある」と記されている。既にこの時点で撮影した写真の光が変で、ハレーションを起こしたように写っている。午後三時前後に西を向いて撮影しているが、逆光ではこのように写らない。
どうやって作ればこんなに登りづらくなるのか理解に苦しむ階段の両脇に巨石が見えてくる。
山頂に出る。いきなり巨石群にお目にかかる。まるで石の砦だ。大きいもので高さ7~8mはあろうか。巨石に囲まれて木造、トタン葺きの覆屋がある。中には不動明王、両脇に仁王が立ち、御幣が手向けられている。
正面から右手の山の斜面には、これも5m程の高さのあるメンヒルが斜めに屹立している。少しだが看板が透けている。
奥に進む。環状列石様の散らばった六個の巨石がある。看板には「6個のストーンサークルをなす環状型列石群で、最北を指す岩が頂上石。上面には神を意味する3個の盃上穴が三角形をなし、中心に向かい磁石がすべて北を指す。」とある。光は、風が通り抜けるように真横に、石を貫くように縦に走る。
さらにその奥にあるのが冒頭の写真、亀石だ。生き物然とした表情をしていて、のそのそと動き出しそうだ。何かをじっと考えている風でもある。胴にあたる部分には、文様状に線刻のような跡が認められる。ヒエログリフだという見方もあるようだが、それは解釈次第か。
不動明王の存在からも、拝ヶ石は金峰山一帯を行場とした修験が祀ったものだろうということはわかる。だが、それは早くても山岳宗教と仏教が習合した飛鳥時代以降ではないか。僕には巨石そのものはもっと以前からこの場にあったように思えるのだ。残念ながら、記録らしきものはなく、由来は辿れない。だからこそ、文字が普及する前からこの地に存在したということにはならないだろうか。また、付近の環境や、線刻のように石に手が加えられた跡がいくつかあることから、この巨石群は自然の状態としてではなく、なんらかの祭祀を意図してこの場に運び込まれ、構成されたもののように思う。
いったい誰が何を祀っていたのか。
当地を訪れてから6日後。僕は東京、四谷荒木町の坊主バーにいた。たまたま居合わせたスワニミズムの会員のお二方に、透ける巨石の写真を見せていた正にその時。やってきた酔客がドアを開けるなり、店中に聞こえる大声で叫んだ。
「おい、熊本が大地震だってよ」
写真は前触れだったのだろうか。
亀石の頭はとれて転がってしまったようだ。
(2016年4月8日)