本日は執筆9です。
アクセス解析にてたくさんの方に読んでもらってるな~ なんて、、、
この物語の中から
サブタイトルにあるように”中小企業の為の実践的マーケティング” そして”展示会成功の秘訣”をお伝えできればと思います。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^さて続きです。
谷田はひどく真面目な目をしていた。
へらへらした男だと思っていたのに、こんな顔もするのか。
驚いてまじまじ見つめていると、視線が遭った。
「——よね? だから、展示会にでるんだよね。だから、ここに来たんだよね」
「はい」
「応援するよ」
その言葉に背を押されるようにして、前田は思わずこう返していた。躊躇いはなかった。
「スペシャルプランでお願いします」
後から思えば、谷田が体の良い詐欺師であればすっかり鴨となっていただろう。
だが、これが前田の会社を日本一のマネキンメーカーに、そして株式市場に上場する快進撃の始まりとなる。しかし、その道のりは決して平坦なものではなかった。
◆
次の打ち合わせの日、前田の後ろにはむすっとした顔で「凄い展示会」オフィスの中を見回す轟の姿があった。
髪を結び、スーツを着てマネキンを抱えて歩く彼の見た目は、あまりサラリーマンには見えまい。
スペシャルプランの件を彼に伝えるときは、正直緊張しなかったといえば嘘になる。
任せるとは言われていたものの、一緒に決めた予算を無視し自分一人で決めてしまった形になっていたからだ。
ところが轟の返事は、「まあ、お前がいいと思うんなら」とあっさりしたものだ。
正直、反対されるかもしれない、と思っていただけに、前田としては拍子抜けする気持ちすらあった。ただし、と続いた言葉はさらに意外なものであった。
「次の打ち合わせには、俺も連れて行け」
そのようなわけで、こうしてマネキンを担いで出向くことに相成ったわけだが、谷田はいつもと同じように目を細めて二人を出迎えた。
「前田様と轟様。お待ちしておりました」
前回よりも丁寧なのは、轟がいるからだろうか。
そばにマネキンを設置し、席につく。
「このマネキンがADENです。機能性はお伝えした通りです」
「ほう、なるほど。この支柱が例の……」
立ち上がった谷田が支柱部分のネジを緩めると、マネキンが自動で15センチ跳ね上がる。
彼の作り笑顔に一瞬だけ嬉しげな表情が浮かんだのを前田は見逃さなかった。
どこか誇らしい気持ちになる。
谷田は機能性や意匠を確かめるように、マネキンをしげしげと眺めていたが、ようやく満足したのか、椅子へとかけて口火を切った。
「さて、打ち合わせを始めましょうか。まずはブースの打ち合わせをしましょう。どんなブースにしたいか、お二人にイメージはありますか?」
「はい、イラストを持ってきました。こんな感じがいいかと」
取り出したスケッチブックには、前田が自分で描いたブースのイメージ図が広がっている。
デッサンなんて大学以来だものだから、轟に見られるのは少々気恥ずかしくはある。とはいえ、マネキンをショーケースに入れ、すっきりとまとめたブースのデザイン案自体はそれなりに自信があった。
「こういった展示に相応しいショーケースはありますか?」
ところが、谷田の反応ははかばかしいものではなかった。
「マネキンをショーケースに入れる? ……服を着せて?」
冗談でしょう、とでも言いたげだ。むっとする。
「ショールームに飾っているイメージを来場者に持ってもらいます。とはいえ、実際に触ってもらいたいので、ショーケースの裏は解放して自由に触れられるようにしようと——」
「それはやめましょう」
遮るように谷田は
「それではよほど強い興味のある方にしか、ADENを触ってもらうことができません。来場者の皆さんは、マネキン自体は間に合っているお客様が多いのではないですか?」
「イノ」、と鋭い声を出す。それがスタッフの苗字であることに前田が気づいたのは、パンツスーツの女性が応接室に入ってきてからだった。
「デザイン課の井野です」
淡々とした話し方が特徴的な、眼鏡のよく似合う美人だ。
眼鏡美人は、持ってきた三枚の図面をテーブルの上に広げた。
描かれているのは、マネキン三体をそのまま通路面に配置したシンプルな構成の図であった。
今回予算の関係で1コマという小さなスペースだったが、全面を無駄なく使用している。
詳細な図面が一枚と、壁面2面を示す図面には、ADENを表したビジュアルとキャッチコピーが配置されている。
「あなたのショップの売り上げを上げます」
「“マネキンの着せ替えの時間従来の1/7” ※当社調べ」
「“圧倒的低価格”」
そして・・・
「話さないですが、とびっきり優秀な販売員」
などとキャッチーなコピー そして「話さない優秀な販売員」をイメージさせるビジュアル
前田は心のなかで呟いた。
「このブースでたくさんの方にADENを売り込める・・・」
「井野、ご苦労」
涼しげな顔をして、谷田が言う。
用意してくれていたのなら、言ってくれればよいものを、人が悪い……と思わないでもない。
轟はというと、身を乗り出して図面を眺めている。
集中しているときの癖だ、釣り込まれているらしい。
その様子に口の端を軽く上げて、谷田は続ける。
「あなたのお客様は誰ですか」
「お客様は何に困っていますか」
「そのお客様の困りごとをどうやって解決しますか、もしくは解決してきましたか」
「御社の圧倒的競合優位性は何ですか」
お渡ししたフレームに詳しく書いて頂きましたね
そちらを元にできたものです。
「先に頂いていたADENの写真もよかった。プロのカメラマンのお仕事ですね!いいブレーンをお持ちですね」谷田はいつもより饒舌に続ける・・
デザインをしたのは私たちですが、業界のこと、ADENの事を知っているのは、
他でもない前田さんや轟さん、貴方方です。
ですから、私達に出来ることはサポートだけです。
こうしてデザインを用意はしても、それを採用するかどうかを最終的に決めるのは貴方たちです。
だから、用意してあると申し上げなかったのですよ。
谷田は憎らしいほどに綺麗な笑みを浮かべた。
しかし、よくできている。”凄い展示会ノート”にそういや書いてあった・・・
3秒で”何を売っているのか” ”来場者が抱えている問題を解決するイメージを一瞬でもってもらう”
こういうことか・・・ また前田は心の中で呟いた。
「これで行こう」
代わって口にしたのは、轟であった。前田もゆっくりと頷く。そうせざるを得ないだけの、魅力あるデザインだった。
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今日はここまで^^
前のお話は↓
http://ameblo.jp/zensin/entry-11996204412.html
初めから読む方は↓
http://s.ameblo.jp/zensin/entry-11981618309.html
あっ物語にでてくる「凄い展示会ノート」は実在します。
ご請求の方は→http://zensin.jp/sugoi/seikouhousoku.html
「凄い展示会」をプロデュースする株式会社ゼンシン 前田雄一
http://zensin.jp