情報 | 抑鬱亭日乗

抑鬱亭日乗

複数の精神疾患を抱える者の独言を忌憚なく収録する
傾いた視線からこの世はどのように見えるのか

 一人で残業中に不審者が入ってきた。

 警察官を名乗るが、名を名乗らず、身分証の提示はない。

 最初に身分証の提示を求めなかった当方にも過失はある。

 ヘルメットをかぶり、マスクを着用している。

 相手の顔はほとんどわからない。

 

 「駅前の交番から来ました。」

 「この事業所はいつからやっていますか?」

 「夜間の警備体制はどうなっていますか?」

 「何時まで仕事をされていますか?」

 「貴重品の管理はどうされていますか?」

 

 「アホ、アホ、ドアホ!」

 

 警察にしてはアホな質問を繰り返す。

 この時、新たな情報入手の手法だと小生は認識した。

 近年の特殊詐欺グループの一員は銀行員や行政機関等の職員に扮して被害者に接触する。

 詐欺師は現金やキャッシュカードを受け取り、即座に現金を引き出す。

 

 ついに小生の前に詐欺師が現れたと確信した。

 夜間に警備状況や、勤務時間等を聞き出し、詐欺グループへ情報を提供するに違いない。

 目の前にいる御仁は詐欺グループが手配したのかもしれない。

 50代のオッサンに警察官風のの制服を着せると、中年警察官に見える。

 巧妙な情報入手の手法である。

 

 そのような御仁に情報提供をするほど小生はアホではない。

 質問に対し、小生はのらりくらりと敵意を表し返答する。

 

 全く情報を得られないと判断したのか「後日また来ます」と言って立ち去った。

 あれから数日が経過するが、あの御仁は来ていない。

 警察官を装って、事業所の情報を聞き出すとんでもない野郎である。