中村靖彦『日本の食料が危ない』（岩波新書、2011年）を読了した。
現在の日本の農業が抱えている問題点を指摘するとともに問題解決への提案を行っている。
農地の問題、農業従事の問題、食料自給率の問題、TPPについて等、コンパクトにまとめられている。
論旨が明快であるため、著者の意図をつかみやすい。
私が注目した問題は農地に関する問題点である。
耕作放棄地を有効活用するための著者の提言が問題解決の一助となるだろう。
現在の農地は所有するという形態をとっているために、農地を有効に利用できないでいる。
では、耕作放棄地等の農地を有効活用するにはどのような策が望ましいのか。
それは農地を「所有」から「使用」へシフトさせることを提言している。
耕作放棄地は農地を「所有」することにより、生じる問題である。つまり、手入れをする人間がいないと、農地が荒地になってしまう。
一方、農地を「使用」するという点に立脚することで農地を有効利用できるとする。
農地を公用の財産と考える。食糧生産のための公的な財産として農地を位置づけ、農業に従事する組織や個人が利用できることにすると、現在よりも農地を有効利用できるとしている。
問題解決への道のりはまだ続く。