ある調査研究発表会に参加した。
その時、聴衆の質問に対して、尊敬するある研究家が「北条は滅びる運命にあった」と答えた。
ある「現象」があれば、その現象が起こる「要因」は必ずあるのではないか。
歴史というのは「現象」の連続である。
「滅亡」というマイナスな現象があったのなら、その要因を考察し検証することが、
歴史研究に対する社会の要請ではないだろうか。
そうした社会の要請を考えない研究は、小中学生がやっている「調べ学習」と大して変わらない。
「トリビア」的な「新発見」がもてはやされているように思えるが、
そんなことは、正直どうでもいいのでは。
それまで、関東を制圧しようとしていた大北条が「滅びた」ことは事実。
(いや、狭山藩として続いた、という考え方もあるが、 わずか1万石という規模)
(それを言っていいなら、劣勢だった太田道灌の後裔は幕閣となり、完全に北条を逆転している)
「北条は滅びる運命にあった」
社会の要請に応える研究のためにも、「史料の保存」は大切だ。
これをやってくださったことに敬意を表する。
しかし、私たちはとても貧しい。
帰り際、石灰で真っ白になっているあの山を見た。