「頭痛肩こり樋口一葉」でのお鑛さまの歌はこう続きます。
「世が世であればご直参。肩で風切るご直参」
「ちくしょうめ」
「誰が世の中変えたのさ、よけいなおせわだよ」
と。
これは、江戸幕府崩壊の時。
武士の商法で財産をすべて失い、お鑛さまは
超貧乏な樋口家にまで借金をしようとやってくるのです。
でもその260年前、江戸に徳川家がやってきたときは、
かつての関東の主、北条家の残党たちが同じ思いで新政権を見守っていました。
それまで名のある武将だった者たちが、
長屋に住んで徳川の中間ともっこを担いでの日銭暮らしとなっていきます‥。
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そんな北条残党の暮らす長屋にお六という美しい娘がいました。
「英勝院」の部屋子(かつて大奥には「部屋子」という制度があった)となり、家康最後の寵姫となります。
69歳と14歳。犯罪です。(もうすでに側室英勝院さまの存在からして犯罪ですが‥)
どんなに言葉を飾っても、69歳を夫に持つ14歳は
当時だとしても、相手が権力者だとしても「かわいそう」しかないと思います。
けれども、
そのころ、女性が生きるには誰かの夫人になるしかなかったのでは。
そんな時代に、栄達するにはやはり有力者の夫人になるしかなかったのでは。
そう考えると、超貧しい上、お母さんと自分と妹しかいない家でも「戸主」として一家の主であり、
「作家」という職業を持った樋口一葉はやはり絶対に不幸ではなかったと思いたい。
半井桃水の小説は誰も読んでないけど、一葉の書いたものはこれからも永久に残っていくことでしょう。
そしてそんな超貧乏生活がなければ「にごりえ」も「たけくらべ」も生まれないのです。
ちがうでしょうか。
「幸せの形」は自分がどう思っているか。
ちがうでしょうか。
そんなお六が「天下を取ろう」と家康を狙っていくのは江戸時代の初め。
その約60年前、
小田原北条が関東の覇権を決定的にする戦争がありました。
「河越合戦(夜戦)」です(天文15年1546年)。