「ゼネラリスト、一番奥にいますよ」
と、厩務員さんに言われて早足で奥に行きましたが、一番奥の馬房には何もいませんでした。その後、親切な会員さんが追いかけてきてくれました。2ショット写真を撮ってくれるというのです。
「あの、いませんけど」
「いるわよ~。あの馬は、首を出さないのよ」
「は?」
会員さんが呼びかけると、奴は暗闇からぬっと顔を出しました。いたんだ。完全に気配を消していたのです。
「気安く呼ぶんじゃねえ」と一瞬、鬼のような顔でした。が、みるみる目が優しくなり、「なんだ、お前か」という感じで私にも慈愛の目を向けました。
「私、かわいがっているから」と会員さん。
(よかった)と思いました。
「でも、この馬噛むよ」というのです。
ゼネラリストと言えば、今や「ミッキーに大けがをさせた気性の悪い馬」とだけしか知られていません。
そして、これは想像にすぎませんが、そんな自分をゼネラリストは知っているのだと思ったのです。
年を取っているということもあるかもしれません。
出来るだけ外部からの刺激を避けて、馬房では首も出さずに気配を消しているのではないでしょうか。
どうでしょうか。