つなぐ。
「個バレー」の祭典をはじまりの島で

 西海岸といえば、いま関西では淡路島のこと。観光スポットとしてインバウンドやコロナ明けの観光客に人気のエリアだ。魅力の一つがアクセスの良さ。神戸三宮から50分もあれば橋を渡れるし、南端は四国の徳島ともつながる。大阪湾側の東エリアは昔からにぎわっていたが、大手派遣企業の進出によって、西側に開発の重点が移った。もともと播磨灘に面して海の幸は豊富。食に加えてキャラクターや著名なグルマンをこれでもかと呼び込んでのテーマパーク化が進む。
 2024年のママさんバレーシーズンの口開けが、今年はこの淡路島であった。6月7日と8日の2日間で開かれたコロナ前からの通算で9回目になる「Volleyballま~みんFesta」。個人でも参加できる新しいスタイルの祭典で、昨年の宮古島に続いての島開催になった。
 参加者は埼玉から徳島の全国10県から集まった約70人。たまねぎ、渦潮など開催地にちなんだ愛称のチームにバラバラに振り分けられ、初日は顔合わせを兼ねた懇親バーベキュー、2日目は交流試合2試合と阿波踊りコンテストで親睦を深めた。「一期一会」の催しだが、短い間でもバレーボールという共通言語は強い。1試合目でいわゆる「お見合い」のような場面もあっても、やる気に火がついた2試合目になると真剣なまなざしでのラリーの応酬。6チームが仲良くほぼ星を分け合う結果になった。
 くしくもチーム登録から個人登録へと全国連盟の登録方法を原点に戻した初年度。フットサルには「個サル」という個人参加の仕組みはあったが、「個バレー」のニーズは人口減によるチーム再編と地域バランスという社会課題によって、将来に向けて避けられない流れがある。
 東京都から唯一参加した久保理恵さん(47)は、三重県松坂市のチームで長くプレーしていたが、子どもの学校の都合で1年前に上京。地元の区内のチームを3つ掛け持ちしてボールを追いかける毎日だ。今回はチャレンジ精神で単身参加。最初はちょっとドキドキしたが、年上の明るい即席のチームメートに救われたと笑う。名前から覚えなければならないところからのゲームだったが、2試合目の第2セットは4連続でサーブポイントを決め、最後は競り勝ってセットを取り、笑顔がはじけた。「ケガもあってできないことが多くなる年齢ですが、バレーをやっているときだけは大声を出せて笑いあえる。来年も機会があれば参加したい」と話した。
 国生み神話の舞台として知られる「日本最初の島」で始まった、新しいママさんバレーの時代。今年度は滋賀県での全国ママさんバレーボール大会の8月開催に続き、年齢別大会や新しい趣向のイベントも計画され、個人の輪をつないでいく。

 

 

 


取材・文

伊東武彦 1961年東京生まれ、サッカーマガジン編集長などを経て朝日新聞社スポーツ事業部でママさんバレーを担当。2013年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。23年7月より全国ママさんバレーボール連盟広報専任アドバイザーとしてママさんバレーの広報をサポート。