【「健康長寿」を体現する350人の元気の素】

 

写真はすべてプロフォートサニー撮影

 

追いかけて追いかけて

 女性初の宰相の発言をなかばジョークで選出したのであれば、「流行語大賞」も捨てたものではない。働いて働いて働いてまいる彼女がよくも悪くも顔になった2025年師走の金曜日、岡山市のシゲトーアリーナ岡山に350人に及ぶママさんバレーボーラーの姿があった。年に3回、東、中、西日本の各会場に一日だけ集まって日ごろの成果を試す大会が「GRACECUP LEAGUE」。秋田、伊勢市ときて、1年の掉尾を飾るのは岡山。「晴れの国」にふさわしい冬晴れの一日、18歳以上、50歳以上、60歳以上、70歳以上の4部門に34チームが集まった。白いボールを追いかけて追いかけて追いかけてまいる女性たちの歓声が、アリーナに響く。

 

笑顔と仲間への思いで長寿に

 開会式で祝辞を寄せたのは、地元岡山大学医学部出身の金城実さん。全国ママさんバレーボール連盟による大会では競技開始前に全員で腕振り運動をするのが慣例だが、金城ドクターはこの運動の考案者で、麻酔科などの臨床医療を経験後、主に老化防止に取り組む予防医学の領域で道を拓いた先駆者だ。祝辞では「笑顔で仲間を思い合う気持ちが、長生きの細胞を生み出す」と、まさにママさんバレーボールの理念がシニアに有効と説いた。

 金城さんによれば、女性の健康長寿で全国でもトップがまさに岡山県で、滋賀県、京都府が続くという。70歳以上の部には岡山から3チーム、滋賀と京都から1チーム、60歳以上は京都が3、岡山と滋賀から各1チームが参加。1チームあたり2試合を行い、健康長寿チームは合計で9勝をマークした。

 

70歳以上の部で2勝したのぞみ(京都)

 

同じくモモおかやま

 

60歳以上の部で2勝は、ぴぃす笑(岐阜)

 

同じくひまわりV(愛知)

 

同じく美作さくら(岡山)

 

同県のライバルの存在が刺激

 12チームが参加した50歳以上の部は計12試合のうち、6試合がフルセットにもつれ込む熱戦続き。50歳以上の年齢制限で長年続いてきた「いそじ大会」を実態に合わせて55歳以上に変更して以降、うずうずしている元気な50歳超選手たちが集った格好だ。最多の4チームが参加した愛知勢は元来ママさんバレーどころ。最盛期にボールを追っていた世代が50歳代になり、レベルの高い争いが本格化しつつあるという。

名古屋市天白区を中心に活動しているunionは中央、左右とバランスの良い攻撃を持ち味にサーブ、レシーブも充実。奈良と岡山に2試合の失点30で2勝した。平均年齢は52.9歳と、3年前に「いそじ」を目指して結成されたチームだけに、この年代では伸び盛り。永田朋子監督(59)は「この大会にも愛知のレベルの高いチームが参加しているので、刺激になります」と話す。

 

50歳以上の部のunion(愛知)

 

52歳でもまだ「ひよっこ」

 他県との交流親善を旨としているだけに、同県同士の対決は組まれないのがこの大会。unionを横目に同じく2勝したのは52.2歳とさらに若い岡崎クラブ。初戦は岡山と1-1から入った最終セットも接戦だったが、堅い守りでひろい、攻めては巧みな軽打も織り交ぜて突き放した。「いつもスタートが遅くて」と深港直子監督。バレーが盛んな岡崎市で結成3年とまだ新しいチームで、「50歳以上ではまだひよっこ。東海大会などでも経験を積んで、安定した試合ができるようにしたい」と話し、2試合目は奈良を寄せつけず2勝とした。

 同じく2勝したのが一宮市から参加の尾張一宮クラブ。平均55歳と「新いそじ世代」になるが、苦戦した初戦を終えてキャプテン柚木亜紀さん(56)の膝に血がにじんだ。鼻血も出したというが、チームメートは「みんな血気盛んなので」と笑う。59歳の野田秀美さんが「2試合目はスタートから自分たちのペースで戦って勝つ」と宣言した通り、第2戦は滋賀に2-0で快勝した。8年前に大阪府で行われたいそじ大会で全国優勝したのが財産。「できれば優勝を決める大会にも出場したい」と口を揃えた。

 

息の合ったブロックを見せる岡崎クラブ(愛知)

 

初戦の逆転もふくめ2勝した尾張一宮(愛知)

 

名称もユニも単独チームから

 直接対戦しなくても同県には負けられないとばかりに愛知勢は碧南クラブも合わせて8勝とレベルの高さを見せたが、健康長寿県では上回る滋賀勢のパセリも元気だった。東近江市と彦根市の地域で活動するチームから希望者が手をあげて結成。普段はライバル的な存在の選手がこの大会のために集まり、2勝した。チーム名もユニホームも選手を送り出した単独チームのもの。村田善美監督(50)は「昨年は別のチーム名で出ていました。普段から対戦しているので、それぞれ特徴が分かっているし集まれば仲良しです」

 これからの時代の一つの工夫のあり方かもしれない。

 

滋賀のパセリも2勝をマークした

 

直接対戦しなくても、存在を意識する関係は、いわゆる一般の部の「18歳以上」でもあった。地元岡山県のライバル同士だ。倉敷市の四福同好会は1年前の「愛・チャンピオンズリーグ」で全国優勝。その大会で大暴れしたライトエースの田中麻美さん(42)の強打は健在で、初戦は滋賀に粘られたが、レフトの窪田麻衣さん(39)に集めてリズムに乗り、最後は田中さんで締めた。守備の中心であるキャプテンの菅谷望さんを体調不良で欠きながら、経験の豊かさを見せて2勝した。

 

まだまだ負けられない

 四福がリードし、美作市と総社市が争うのが岡山県の勢力図。総社市のスターママは近年力をつけてきたが、なかなか壁を破れない。キャプテンでレフトエースの横田美紗子さん(36)は四福の田中さんを目標とし、「田中さんが元気なうちに打ち勝ちたい」と公言する。昨年の初の全国大会は緊張から力を出せず、今回は地元の大会に満を持して臨んだ。初戦は奈良の強豪ベレッツァネオに序盤で大きくリードしながら第1セットを落とし、第2セットは粘りを見せて逆転でものにしながら苦杯。続くZero(奈良)戦は第1セットをものにしながらの逆転負け。流れを一度手放すと立て直せない課題が出て、横田さんは「技術は急に伸びないので、ミスを減らさないと」と唇をかんだ。

 

スターママは全員で粘ったが及ばず

 

田中さん⑤を中心に四福同好会は2勝

 

直接対決はなくても実績を見せた四福だが、田中さんは「最近、歳を感じて強打だけでなくブロックアウトや長めのアタックも織り交ぜています。でもまだまだ負けられない」と横田さんを意識する。予選なしの今大会だったが、来年以降の全国大会ではライバルとなる両チーム。田中さんはこうも言った。「他のチームは若手を入れてきているので、うかうかしていられない」

そんな静かなライバル関係が、コート上の笑顔の陰に隠れた親善大会でもあった。

 

取材・文/伊東武彦

 

大会結果

・18歳以上の部
2勝=四福同好会(岡山)、Zero、ベレッツァネオ(ともに奈良)
1勝1敗=河西クラブ(滋賀)
2敗=KANNA(岐阜)、晴嵐クラブ(滋賀)、スターママ(岡山)
・50歳以上の部
2勝=union(愛知)、パセリ(滋賀)、尾張一宮、岡崎クラブ(ともに愛知)
1勝1敗=エンゼル、美鷲クラブ(ともに滋賀)、Zero(奈良)、Regina(岐阜)
2敗=ベレッツァ5(奈良)、まにわ(岡山)、碧南クラブ(愛知)、ももおかやま(
岡山)
・60歳以上の部
2勝=ぴぃす笑(岐阜)、ひまわりV(愛知)、美作さくら(岡山)
1勝1敗=アンティ、ラベンダー(ともに京都)
2敗=洛友クラブ(京都)、滋賀クラブ、I.G.S(奈良)
・70歳以上の部
2勝=モモおかやま(岡山)、のぞみ(京都)
1勝1敗=岡山同好会、刈谷エース(愛知)、ファジィ三笠(奈良)、岐阜ミナモ
2敗=滋賀クラブ、チャオ倉敷(岡山)