以前の記事で構想を練っていた宇宙世紀100年前後に奔走した傭兵の物語のプロローグのようなものです。Gファイザーの主人公はこういう経歴がある、くらいに思っていただければ嬉しく思います。小説を書いた経験など微塵もないため拙い文章ですが、どうぞお付き合いくださいませ。
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人類が宇宙に移民先を求めて既に1世紀を迎えようとしていたこの時代。
ここサイド5(旧サイド6)コロニー【アスカ】
円筒の中に作られた人工の大地と都市。永遠かと思われた輝きは今そこには無く、辺り一面を焦げた肉や鉄の悪臭が包み込んでいた。
高層ビルが崩れた玩具のように崩れ落ち、至る所に人型兵器【モビルスーツ】の残骸が横たわっていた。
そのうち一機は学校らしき大きな建物を覆うように倒れている。その下のあちこちから、さっきまで人だったものが形を変え流れ出ている。
どれほどの命が、ここで未来を夢見ていたのだろうか。その未来が、無いとは誰も思いもしなかっただろうに。
そんな瓦礫の中に佇む一つの巨大な影。
生き残った者たちは誰一人としてその影を忘れる事は無かった。
その白いモビルスーツの姿を。
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ダルフィー・レイレアンスはサイド6のコロニー出身だ。幾度か宇宙規模の大きな戦争があったことは知っているが、その目で見た事は一度も無かった。
1年戦争。人類史上最も人口を減らした戦争の年に、円筒の中の世界で産まれた。
本や電子端末、テレビで観るものが、筒の外の世界を知る唯一の方法だった。
そのテレビの枠の中、暗い画面の中を縦横無尽に駆ける兵器に、彼は魅了されていた。
MS[モビルスーツ]。ジオニック社が初めて開発した巨大な人型のロボット。それは従来の大艦巨砲主義思想を打ち砕き、圧倒的な汎用性と、大型の機動歩兵という運用思想で戦場の主役を奪った
赤い一つ目を持つMS、ゴーグルのような目のMS、そして、二つの目を持つ白いMS。
数多の争いの中心で戦い、「時代を切り開いた機動戦士」とマスコミが謳う伝説のモビルスーツ。
その名前の由来には興味は無い。いや、もう意味はないだろう。ただ、その名前自体が力を持っている。そう思わせる程の機体。
ガンダム。
彼は、ガンダムに乗るのが夢だった。
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「ダルフ・レイレアンス君、で間違いないね?」
「はい」
「わかりました。ではこの書類を持ってあの右の通路を通り、リニアを使用してD-4区画の32番へ向かってください。」
書類とダルフに交互に目をやりながら、顔の大きな男性はボールペンで奥の通路を指した。
ここは月面都市フォン・ブラウンにあるアナハイム社、その一区画である。1年戦争終結後、ジオニック社、ツイマッド社など数々のMS企業を吸収し、世界一の巨大企業グループとして現在君臨している。
数万の子会社、下請先を持っており、彼はその子会社のひとつ、「フォールドック社」で働くことを決意し、今まさに配属されるところであった。
「ダルフ、きみの経歴についてはあらかた把握できているよ。操縦のセンスだけなら1年戦争当時のアムロ・レイに迫る勢いなんだってな。」
会社の心臓部と呼ぶにはあまりにも粗末な事務所の片隅で、ダルフは配属早々所長と一対一の面談をしていた。
「しかしそれはシミュレータ上の成績です。仮に本当にあのアムロ大尉と一戦交えることが実現したとしても、初手から一方的に動きを封じられ、一撃でコックピットを撃ち抜かれると思います。」
あのアムロ・レイが生きていたら、の話だが。
「ははは。謙遜かね。そんな貧弱なMS乗りはうちでは採用してないよ。」
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ダルフは馬鹿がつくほど真面目だった。キャンパスを卒業後すぐ軍にパイロットとして入隊したものの、僻地の基地に飛ばされ警備に当たっていた。士官の横領は日常茶飯事、同僚達はギャンブルと女遊びで税金を弄んでいた。実直なダルフが孤立し、軍を辞めるのに時間はかからなかった。
彼の転職を決定付けたのは「ガンダムに乗れる可能性」が出てきたからだろう。
連邦軍に入隊すれば、ガンダムに乗れると思っていたのだ。しかし現実では、片田舎の錆びた基地の周辺をRGM-179【ジムⅡ】でぐるぐる歩き回るだけの仕事が延々と繰り返されるだけだった。あの夢見たガンダムはどこにもいない。こんな僻地じゃどうあがいても昇進は出来ない。転属も遥か先だろう。
実際、現在連邦でガンダムを運用している部隊は極めてごく僅かであり、乗れる可能性など無に等しかったのだ。
それを上官から聞いた時、彼は自身の選択に大きく後悔した。
ここにいてはガンダムに乗れない。どこに行けばいいんだ。
そう路頭に迷いかけたとき、スクール時代の古い親友から一つの連絡があった。
『アナハイムがテストパイロットを募集してるって知ってた?!試作機のガンダムに乗れるかもしれないけど俺が話通しておこうか?』
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「話は聞いてるよ。ガンダムに乗りたいんだってね。」
「はい。そのためにここへ来ました。」
「そうか……」
所長がその一瞬少し目を逸らしたのを彼は見逃さなかったが、眉ひとつ動かさず話を聞き続けた。
「君がそれを強く希望して入社してくれたのは大いに歓迎したい。ここまで多種のMSを操縦できるパイロットはそうそういない。君なら、いずれガンダムタイプに乗ることもじき叶うだろう」
「…!!」
「しかし、この都合上我が社は仕事の量や危険度に応じて報酬が支払われる。夢を叶えられるかどうかは君自身にかかっているぞ」
「はい。覚悟の上です。そのためにここへ来ました」
また、一瞬目を逸らしてから所長の口が開いた。
「いい返事だ。その結果を観るのが今から楽しみだよ」
嫌味で言っているのだろうか。期待を込めて応援してくれたのだろうか。それを聞くことは出来なかった。
自身の部屋のキーと数十枚の書類を携えて、ダルフは貧相なオフィスを後にした。
待っていろ、ガンダム。
一枚の書類に記されたバイザーの旧式MS。
RGM-79GS【ジム・コマンド】
それが彼のここで最初に支給されたMSだった。