川口市 草加市の税理士/相続税・遺言・成年後見ブログ 
Amebaでブログを始めよう!

公正証書遺言の効果と手順

公正証書遺言は法的拘束力があります


相続トラブルの大半はアンバランスな遺産分割が原因でおきます。公正証書遺言にはそのアンバランスを緩衝する役割があると思います



2次相続で特に効果があります


子供同士で遺産分割の話し合う必要のある2次相続は 相続トラブルが起きやすく、しこりが残るケースが多いです。公正証書遺言により親の意思を表明することにより、子供同士のムダな争いを抑止し、話しにくいおカネの話をスムーズにまとめる効果があります



市販の遺言本と公正証書の違いは 遺言執行者の立ち位置だと思います


市販の遺言本で遺言執行者を記載するとしたら 長男(長女)が多いと思いますが、相続直後は心理的に動揺し、相続全体をコントロールする余裕はないと思います。

法的拘束力もないことから、自分も含めた全体の利害調整が必要であり、トラブル抑止効果に限界があります 公正証書遺言に遺言執行者を指定することにより 遺言書通りに執行することが法的に決まっているので、相続全体をコントロールする必要がなくなります



少し多めに費用を払って専門家を遺言執行者にすれば、利害調整にも対応できます

手前みそですが、税理士だったら税金対策や財産相談もできるので、ぜひお近くの税理士に相談してみて下さい




公正証書遺言を作成する前に

1.どういう財産があるか洗いだす

2.どの財産をだれに相続するか考える


その相続案に問題点がないか、利害対立がないか、アンバランスがないか、納税資金不足がないか 考える 問題がなければ、直接 公証役場へ相談し 必要書類をそろえる



今の相続案に問題がある、問題あるかわからない場合 専門家に相談してみる


遺言や相続を前面に出している専門家は 弁護士、行政書士、司法書士、税理士


今付き合いのある専門家がベスト。遺言執行者になれる専門家がいい

専門家が遺言書の作成、執行に関わる場合 費用がかかるので事前に確認

手数料の違いは 作成時点より執行時点の付加価値の違い。

執行時点の利害調整能力や作成後の相続全体の相談などの付加価値がある。遺言書を作成するだけなら価格差に理由はない。

税理士の場合 税金や不動産まわりのフォローがある



公正証書遺言の作成に必要な書類は

1.遺言者の戸籍謄本、原戸籍(市町村で取り寄せ、本人証明があれば 郵便小為替により 郵送などでも取り寄せ可)

2.遺言者の印鑑証明(印鑑カードを持って 法務局、市町村で取り寄せ)

3.証人2人(遺言執行者が第三者の場合 兼務可。遠い親戚可)。本人証明書類と認印が必要

4.不動産がある場合 不動産登記簿(法務局で取り寄せ)

5.不動産がある場合 固定資産税評価証明書(市町村で取り寄せ)

6.預金通帳や株券などの財産がある場合 コピー



あとは公証役場で遺言者と証人が署名するだけ。当日持参するのは

1.遺言者、証人の印鑑

2.公証人費用(遺言財産により法律で決まっているので 事前に確認)

未上場株の事業承継税制

1.未上場株を後継者に承継する方法 

後継者に株を移転する方法
1. 贈与・相続により 後継者に株を移転する
2. 譲渡(対価有償)により 後継者に株を移転する
3. 移転方法により 税目・税率が違うのがポイント


各移転方法の税率と税目のあらまし
1. 贈与による移転:(贈与株式の評価額-非課税枠110万円)×10%~50%の贈与税あり
2. 相続時精算課税による移転:(贈与株式の評価額-非課税枠2500万円)×20%の贈与税あり
3. 相続による移転:(相続株式の評価額ほか-基礎控除5千万円-1千万円×相続人数)×10%~50%の相続税あり
4. 譲渡による移転:(株式対価-取得価額)×20%の所得税・住民税あり


事業承継税制の位置づけ
1. 相続と贈与による移転について 適用できる
2. 適用効果は 贈与税全額、株式に係る相続税の80%相当額


事業承継税制を検討すべきケース
1. 株価が高い(自己資本比率が高い)、創業が長い
2. 社長個人が不動産を保有している(相続税対策が必要)など


2. 事業承継税制のあらまし(1) 

非上場株式等の相続税・贈与税は 一定条件のもと 納税猶予される
1. 納税猶予とは 一定条件のもと納税しなくていいという意味(一定条件を充たさなくなった時に納税する)
2. 非上場株式に係る相続税の80%または贈与税全額の納税が猶予される


事業承継税制(相続税)適用の流れ
1. 先代社長の生前に経済産業省の確認を受ける
2. 先代社長の相続時に経済産業省の認定を受ける
3. 相続税申告書等を税務署に提出し担保を提供する→相続税が猶予される
4. 相続後5年間毎年 税務署に継続届出書を提出する
5. 相続5年後から3年ごとに税務署に継続届出書を提出
6. 後継者の相続時に税務署に免除届出書を提出→相続税が免除される


事業承継税制(贈与税)適用の流れ
1. 贈与前に経済産業省の確認を受ける
2. 贈与税申告期限までに経済産業省の認定を受ける
3. 贈与税申告書等を税務署に提出し担保を提供する→贈与税が猶予される
4. 贈与後5年間毎年 税務署に継続届出書を提出する
5. 贈与5年後から3年ごとに税務署に継続届出書を提出
6. 先代社長の相続時に税務署に免除届出書を提出→贈与税が免除される


3. 事業承継税制のあらまし(2) 

事業承継税制の適用要件ポイント
1. 対象者(先代社長、後継者、会社)要件を満たす
2. 先代社長相続前に 経済産業省の確認を受ける
3. 先代社長相続後に 事業継続要件を満たす


先代社長の適用要件ポイント(詳細後述)
1. 会社の代表者 かつ 筆頭株主であった
2. 先代社長等の株主グループが50%超保有


後継者の適用要件ポイント(詳細後述)
1. 先代社長の親族であり、現在 会社の代表者である
2. 後継者等の株主グループが50%超 かつ 筆頭株主


会社の適用要件ポイント(詳細後述)
1. 中小企業基本法に定義された中小企業であり、未上場会社であること
2. 一定の資産管理会社等に該当しないこと


先代社長相続後5年間の事業継続要件ポイント
1. 先代社長の相続後5年間 後継者が代表者であること
2. 雇用の80%を維持していること
3. 株式を保有していること


先代社長の相続前に経済産業省の確認不要のケース
1. 先代社長が60歳未満のケース
2. 公正証書遺言等により50%超保有となったケースなど


4. 事業承継税制の対象会社(1) 

事業承継税制の対象会社とは
1. 中小企業者に該当する会社(詳細後述)
2. 上場会社等に該当しない
3. 風俗営業会社に該当しない
4. 資産運用会社に該当しない(詳細後述)
5. 資産保有会社に該当しない(詳細後述)
6. 収入金額がゼロを超える
7. 従業員が1人以上
8. 関係子会社(対象会社と同族関係者で50%超所有する会社)が 上場会社等、大法人等に該当しない
9. 後継者以外の者が 拒否権付種類株主でない


事業承継税制の対象会社には 現物出資規制がある
1. 現物出資規制とは 後継者等が 相続3年以内に会社に現物出資・贈与した場合で
2. その現物出資等の資産価額/総資産価額が 70%以上のとき 事業承継税制は受けられないこと


中小企業者に該当する会社とは
1. 製造業:資本金3億円以下または従業員300人以下
2. 卸売業:資本金1億円以下または従業員100人以下
3. 小売業:資本金5千万円以下または従業員50人以下
4. サービス業:資本金5千万円以下または従業員100人以下(ソフトウェア、旅館業は別基準あり)


5.事業承継税制の対象会社(2)

事業承継税制を受けられない資産保有会社とは
1. 特定資産の簿価/総資産の簿価が70%以上の会社
2. 特定資産とは 現預金、有価証券、会社自ら使用していない不動産、ゴルフ会員権、同族者への貸付金等
3. 資産運用会社に該当する場合 原則 事業承継税制を受けられない


事業承継税制を受けられない資産運用会社とは
1. 特定資産の運用収入/総収入が75%以上の会社
2. 特定資産は 資産保有会社と同じ
3. 資産運用会社に該当する場合 原則 事業承継税制を受けられない


資産保有会社・資産運用会社であっても 次の要件をすべて満たせば、事業承継税制を受けられる
1. 相続日まで3年以上 継続して商品販売・資産貸付・役務提供を行っていること
2. 相続日に役員以外の使用人が5人以上いること
3. 相続日に事務所・店舗等を所有・賃借していること


不動産管理会社・持株会社の事業承継税制適用ポイント
1. 事業実態(3年以上の商品販売等、5人以上の社員)の整備
2. 特定資産を 特定資産以外の資産へ組み換え
3. 子会社がある場合 子会社が事業承継税制の要件を満たすこともポイント


6.先代社長の適用要件 

事業承継税制を受けるための先代社長要件 
1. 会社の代表者であったこと
2. 筆頭株主であったこと
3. 先代社長の株主グループで50%超を保有していること


会社の代表者であったこと とは
1. 納税猶予を受ける相続(または贈与)直前に 代表取締役等であった ということ
2. 相続直前に後継者が 会社の代表者であった場合含む


筆頭株主であったこと とは
1. 相続(または贈与)直前に 先代社長の総議決権数が株主グループ内で筆頭である ということ
2. 総議決権数には 後継者所有分と議決権制限株式数は除いて 筆頭判断する


先代社長の株主グループで50%超を保有している とは
1. 先代社長、親族、同一生計者、これらの者で50%超の議決権を所有された会社などの株主グループが
2. 事業承継税制適用会社の総議決権の50%超を所有している ということ


贈与税の納税猶予制度の場合の適用要件の違い
1. 上記要件のほか 贈与税の納税猶予制度を受けるには 先代社長が 贈与までに 役員を退任する必要あり



7.後継者の適用要件 

事業承継税制を受けるための後継者要件 
1. 会社の代表者であること
2. 筆頭株主であること
3. 後継者の株主グループで50%超を保有していること
4. 先代社長の親族(配偶者、6親等内血族等、養子も可)であること


会社の代表者であること とは
1. 納税猶予を受ける相続5ケ月(または贈与)の時に 代表取締役等である ということ
2. 事業承継税制の対象となる後継者は 1つの会社で1名


筆頭株主であること とは
1. 相続(または贈与)時に 後継者の総議決権数が 株主グループ内で筆頭である ということ


後継者の株主グループで50%超を保有している とは
1. 後継者、親族、同一生計者、これらの者で50%超の議決権を所有された会社などの株主グループが
2. 相続(または贈与)後に総議決権の50%超を所有している ということ


贈与税の納税猶予制度の場合の適用要件の違い
1. 上記要件のほか 贈与税の納税猶予制度を受けるには 後継者が20歳以上であること、3年以上役員であることが必要


8.猶予された相続税等を払うケース 

相続税申告期限から5年以内に次に該当する場合 該当日から2ケ月以内に 猶予された相続税を払う
1. 後継者が代表取締役でなくなった場合
2. 雇用の80%を維持できなくなった場合
3. 後継者の株主グループの議決権数が50%以下の場合
4. 中小企業者に該当しなくなった場合
5. 上記1~4が 申告期限から5年経過後に該当した場合納税猶予は継続


相続税申告期限以後 次に該当する場合 該当日から2ケ月以内に 猶予された相続税を払う
1. 資産管理会社に該当する場合
2. 資本を減少した場合
3. 特例対象の自社株を譲渡・贈与した場合
4. 特例対象の会社が解散した場合
5. 継続届出書の提出を忘れた場合


猶予された相続税とともに利子税も払う
1. 利子税=猶予された相続税×年3.6%など×相続税申告期限~該当日2ケ月の期間


次の場合 猶予された相続税が免除される
1. 後継者が死亡した場合
2. 相続税申告期限から5年経過後に 特例対象の自社株を贈与し、事業承継税制を受ける場合
3. 特例対象の会社が合併・破産等により消滅した場合

不動産管理会社の設立

1.会社の設立手続とリスク対策 

設立登記の流れ
1. 商号、本店所在地、事業年度など決める
2. 代表取締役など印鑑証明書 法人の実印作成
3. 定款、設立時役員決議書、就任承諾書、出資払込証明書、設立時役員の調査書など作成し、押印
4. 本店所轄の公証役場に行って 定款を認証
5. 資本金を発起人名義の預金通帳に払い込む
6. 本店所轄の法務局へ登記申請をする


定款と事業リスク対策
1. 定款に譲渡制限を設け、取締役の承認なしに譲渡できないようにする
2. 定款に売り渡し請求を設け、相続により株を取得した相続人から 会社が強制的に買戻せるようにする
3. 定款に株式数と無関係の議決権を定め、事業に無関係の株主の議決権を奪う
4. 定款に 取得条項付 議決権制限付 など種類株式を定める
5. 株券不所持制度により 株券が流通しないようにする


オーナー会社(譲渡制限会社)の機関設計
1. 取締役と株主のみも可(監査役、取締役会不要)
2. 決算書の信用性を高める (資金調達を有利にするため) 税理士などが会計参与という役員となることも可  

 

2. 会社の設立と社会保険手続き 

設立時の社会保険手続き
1. 社会保険新規適用届
2. 労働保険関係成立届、雇用保険適用事業所設置届
3. 36協定の届出、就業規則の届出


社会保険新規適用届
1. 法人(社長1人の会社含む)及び 従業員5人以上の個人事業者は 社会保険に加入
2. 社会保険事務所に 5日以内に提出 


労働保険関係成立手続きなど
1. 従業員1人以上になった場合 労働保険(労災保険 雇用保険)に加入し 10日以内に提出
2. 労働基準局に労働保険関係成立届を提出
3. ハローワークに雇用保険適用事業所設置届を提出


36協定の届出
1. 従業員に法定労働時間を超える労働や 休日に労働させる場合 労働基準局に 協定開始日までに提出


就業規則
1. 従業員が10人以上になった場合 労働基準局に提出

そのほか 創業時雇用助成金、創業融資制度など活用


3.会社の設立手続き(税務) 

新設法人の税務手続き
1. 法人設立届出書(設立2ケ月以内)
2. 青色申告承認申請書(設立3ケ月か最初の決算日のいずれか早い日まで)
3. 給与支払事務所等の開設届出書、源泉所得税の納期の特例の承認申請書(社員10名未満の場合 半年に1度1月と7月に 源泉所得税を納付できる)
4. 棚卸資産、減価償却資産などの評価方法届出書
5. 申告期限延長申請の申請書(一定の場合 申告書の提出期限を延長することができる)
6. 都道府県市町村にも 法人設立届出書を提出


青色申告のメリット
1. 複式簿記により帳簿を作成し 会社に帳簿を備付け、7年間帳簿を保存することにより 青色申告の特典を受けられる
2. 青色申告の特典は 欠損金の繰越控除(当期の赤字を7年間 税額計算上控除できる)、特別償却(早期に、多額の減価償却計上できる) 特別控除(一定投資について 税額控除できる)など


消費税がポイント(不動産管理会社の設立で後述)
1. 1期、2期の消費税について 資本金1千万以下は免税
2. 設備投資を予定している場合 消費税還付の余地あり
3. 1期から3期まで消費税の課税をどうするかが 創業時の税務ポイント


4.法人なりのメリット

法人設立はカンタン
1. 個人事業より 法人の方が対外信用は高いです(借入する場合 店を借りる場合 採用募集の場合など)
2. 最低資本金制度廃止により 資本金がなくても法人設立できます
3. 個人事業時代に利用している固定資産などを現物出資することも可


法人なりの税金メリットはトータルで考える
1. 短期的な節税ではなく、退職金や相続も含めた長期的な節税プランが有効
2. 個人事業時の年利益が700万超える場合 役員給与として 社長や奥様などへ所得移転することにより 個人法人トータルで節税余地あり
3. 保険料、退職金について 損金にできるので、退職金原資を保険でカバーする試算は早めに行う
4. 社長所有の不動産を 法人へ貸したり、遊休土地に法人の建物を建てたりすれば 社長の相続対策にもなる
5. 社長所有の不動産を 法人へ売却すれば 不動産が自社株化し、後継者へ生前贈与しやすい
6. 資本金1千万円以下なら 1期2期は消費税免税


個人事業財産を法人へ引き継ぐには
1. 原則 時価により引継ぐ(個人事業者側は 譲渡となり含み益課税あり)
  

6.不動産管理会社の設立メリット 

不動産会社の3形態
1. 不動産管理会社は ①不動産を取得する ②不動産を一括借上げする ③不動産を管理する3形態あり
2. それぞれ 地主の不動産所得を 会社に一部移転し、会社から地主 家族へ所得分散することにより 所得税 相続税の節税を図る 


現物出資により 管理会社が不動産を取得する場合
1. 相続財産が不動産から 未上場株などに変換。後継者への贈与が容易
2. 地主の不動産所得が 会社へ移転(節税)
3. 会社から給与により 地主 親族に所得移転(節税)
4. 変態現物出資なので定款変更や不動産鑑定士評価など追加コストが必要


管理会社が地主から一括借上げする場合(個人が不動産所有しながら、転貸により法人に所得移転)
1. 管理会社は地主に賃借料支払い 賃貸収入を得る(不動産所得が 法人と地主の二者に分散)
2. 相続税評価が貸家建付地評価減(20%~30%)可
3. さらに事業用小規模宅地として50%評価減余地あり


管理会社が地主から管理業務委託する場合(個人が不動産を所有しながら、管理により法人に所得移転)
1. 地主は管理手数料(集金 掃除など)を支払う(不動産所得が 法人と地主の二者に分散)


保険共済の活用

3.年金と税金(公的年金等)

厚生年金・国民年金
1. 年金掛金(支払金額)は 社会保険料控除の対象であり、所得税の計算上 全額控除
2. 年金受給時は (年金-年金額に応じた控除額)を他の所得と合算して 5%~40%の所得税あり
3. 一定の遺族年金・死亡時一時金・障害手当金は非課税


健康保険(医師国保含む)
1. 保険料(個人負担分)は 社会保険料控除の対象
2. 保険料(事業主負担)は 経費として控除対象
3. 一定の療養費手当金、育児手当金、出産手当金、埋葬一時金などの受給は非課税
4. 医師会加入の小規模診療所などを対象とした 事業主負担なし・保険料金額の少ない医師国保も同様


小規模共済
1. 共済掛金は 小規模共済掛金控除の対象であり、所得税の計算上 全額控除
2. 医療法人加入不可(MS法人役員・個人院長加入可)
3. 解約した場合 (一時金-払込合計-50万円)×1/2を他の所得と合算して5%~40%の所得税あり
4. 退職金として一括受給した場合 源泉徴収で課税終了
5. 年金として分割受給した場合 公的年金等の雑所得課税(厚生年金受給時と同じ)
6. 加入者死亡時の受給は 退職金非課税枠利用可 



4.生命保険と税金のあらまし 

生命保険のポイント
1. 保険加入目的は何か→退職金原資、相続税資金、事業承継資金(借入返済原資、自社株買取原資)など
2. 契約者、被保険者、受取人は誰か→保険料支払時の税金、保険金受取時の税金が異なる
3. 保険期間はいつまでか、保険金はいくらか→被保険者が何歳まで いくら保障されているか
4. 保険料と解約返戻金の推移はどうか→いくら払って いくら戻ってくるか


法人契約の生命保険のポイント
1. 契約者貸付(保険会社からの借入制度)はあるか。解約返戻率の何%の借入が可能か
2. 払済終身に変更できるか
3. 退職予定時に解約返戻率がピークか。保険加入年の解約返戻率が極端に低くないか
4. 保険期間が短い生命保険(掛捨、10年定期など)で 長期的に見て 保険料が高くならないか
5. 1/2損金など損金性があるか


個人契約の生命保険のポイント
1. 保険金が 相続税、事業承継資金として十分か(トラブル回避策とともに納税資金対策を検討)
2. 保険金受取時に契約関係により 所得税・贈与税・相続税の課税あり(税目分散を事前に検討)
3. 医療・終身・年金・障害を広くカバーしているか 


5.個人契約生命保険の税金(1) 

個人契約の生命保険の税金のポイント
1. 契約関係により税目が異なり、不用意な生命保険契約には 高額の贈与税リスクがある
2. 贈与税には 毎年110万円の非課税枠がある
3. 相続税には 生命保険非課税枠(5百万円×相続人数)がある
4. 一時所得の所得税は 払込保険料と50万円を控除でき、通常所得税率の1/2の課税ですむ
5. 一時所得の所得税は 給与などの所得と合算され 所得税率が高くなるデメリットがある 
6. 満期保険金は 満期時に所得税・贈与税の課税がある
7. 生前受取の高度障害保険金・年金は 非課税になる
8. 個人年金保険でも 個人年金保険料控除(一般生命保険料控除と別枠)を受けられないものがある
9. 個人年金保険は 年金受給時に所得税がある
10. 従業員(親族以外)の退職金原資・福利厚生目的の個人契約の生命保険は 必要経費になる


契約関係ごとの死亡保険金の税金
1. 契約者(保険料負担者):父、被保険者:父の場合 相続税が課税(受取人が相続人の場合 非課税枠あり)
2. 契約者(保険料負担者):子、被保険者:父、受取人:子の場合 子に所得税が課税
3. 契約者(保険料負担者):父、被保険者:母、受取人:子の場合 子に贈与税が課税



6.個人契約生命保険の税金(2) 

保険料贈与の活用
1. 契約者:子、被保険者:父、受取人:子の場合で 父が保険料を負担している場合 
2. 原則 満期保険金収入時、子に高額な贈与税課税あり
3. 父から子へ保険料相当を贈与することにより 満期保険金収入時、子に一時所得税あり(1/2課税でたりる)
4. 年間保険料が110万円以下の場合 子に贈与税なし


契約関係ごとの満期保険金の税金
1. 契約者(保険料負担者):父、受取人:父の場合 満期保険金収入時に 一時所得税あり
2. 契約者(保険料負担者):父、受取人:子の場合 子に贈与税が課税


個人年金保険の年金受給後に受給者が死亡した場合
1. 契約者(保険料負担者):父、年金受給者:父、父の死亡後の年金受給者:母の場合、相続税が課税
2. 契約者(保険料負担者):父、年金受給者:母、母の死亡後の年金受給者:子の場合、子に贈与税が課税
3. 契約者(保険料負担者):父、年金受給者:母、母の死亡後 一時金を取得した場合、相続税が課税
4. 契約者(保険料負担者):父、年金受給者:母、母の死亡後の年金受給者:父の場合、雑所得課税のみ
5. 契約者(保険料負担者):父、年金受給者:母、母の死亡後 一時金を取得した場合、一時所得税あり

 


7.法人契約生命保険の税金(1) 

法人契約の生命保険の課税リスク
1. 法人契約の生命保険が 特定者のみを被保険者とする場合 被保険者に給与課税あり
2. さらに 被保険者が役員・役員親族の保険料は、役員給与の損金不算入規定により 法人税等の課税あり
3. 保険種類・契約によって 支払金額のうち損金計上できる部分と 資産計上すべき部分がある


定期保険のポイント
1. 定期保険は 保険期間が10年などの掛捨て保険で 保険期間内の保険事由発生時・解約時に保険金あり
2. 安い保険料で 高い保険金(保障)を買えるが、保険期間終了のつど 保険料が高くなるデメリットあり
3. 保険料支払時に全額損金(保険金支給時 全額課税)


養老保険のポイント
1. 養老保険は 保険期間内の保険事由発生時・解約時また満期時に 保険金・解約返戻金あり
2. 保険料支払時に全額資産(被保険者が全社員の場合 1/2は損金可。被保険者が役員の場合 給与課税)
3. 受取人が被保険者・被保険者家族の場合 給与課税


終身保険のポイント
1. 終身保険は保険期間を決めず、保険事由発生時に保険金あり
2. 保険料支払時に全額資産


8.法人契約生命保険の税金(2) 

長期平準定期保険のポイント
1. 長期平準定期保険は 定期保険のうち 保険期間が長いもの。解約返戻率(解約返戻金/払込保険料)が高いケースが多い
2. 長期的な保障を定額コストで買いながら、解約返戻率のピーク時に解約をして退職金に充当するなど 税金流出を抑えた財産還元が可能
3. 保険期間の前半6割期間は 1/2損金(1/2資産)
4. 保険期間の後半4割期間は 支払全額+資産計上額の期間配分額が損金
5. 被保険者:役員、受取人:被保険者の家族の場合 給与課税&法人税課税あり


逓増定期保険のポイント
1. 逓増定期保険は 定期保険のうち 年々保険金が増加する生命保険(保険料は定額)。逓減定期保険は逆
2. 保険期間の前半6割期間は 1/2、1/3、1/4を損金(ほかは資産)
3. 保険期間の後半4割期間は 支払金額+資産計上額の期間配分額が損金
4. 被保険者:役員、受取人:被保険者の家族の場合 給与課税&法人税課税あり


定期つき終身保険など主契約と特約がある場合
1. 主契約と特約ごとに区分


確定申告(株・信託)

1.株売却時の税金のあらまし 

株を売却した場合の税金のポイント
1. 平成23年12月まで 売却時の税率が、上場株と未公開株とで異なる
2. 所得税・住民税=(株譲渡収入-株購入代価等-売却手数料等)×税率
3. 株譲渡収入×5%を 株購入代価とすることができる
4. 株譲渡損失は 原則 他の所得と損益通算できない


譲渡所得の確定申告が必要なケース
1. 証券会社の一般口座で売却した場合
2. 証券会社の特定口座(源泉徴収なし)で売却した場合
3. 証券会社の特定口座(源泉徴収あり)で売却した場合で還付を受けるとき
4. 証券会社を経由しないで売却した場合
5. 未公開株を売却した場合


上場株を売却した場合の税金(大口株主以外)
1. 平成23年12月までの税率は所得税7% 住民税3%(平成24年1月から所得税15% 住民税5%)
2. 平成13年9月以前に取得した上場株を売却した場合 『平成13年10月1日の終値の80%』を 株購入代価とすることができる
3. 上場株の譲渡損は翌年以降3年間 株譲渡所得金額から繰越控除できる
4. 上場株の譲渡損は 上場株の配当所得と損益通算可(平成22年から特定口座源泉有で確定申告不要)


2.金融資産の売買益の税金

売買益に係る税金のあらまし 
1. 売買益は 確定申告する金融資産と 源泉徴収されて完結する金融資産がある
2. 確定申告する金融資産の税金は総合課税(所得税率5%~40%)と申告分離課税(所得税率15%)がある


ゴルフ会員権・書画骨董の売買益に係る税金
1. 原則 総合課税(売買損は 他の所得と損益通算可)
2. 所得税=(売買益-最大50万円)×5%~40%
3. 取得日以降5年超の売買益は 上記の1/2
4. ゴルフ場が倒産した場合の売却損は損益通算不可


公社債の譲渡・期中分配金・償還差益に係る税金
1. 公社債・公社債投資信託受益権の譲渡益は非課税
2. 公社債投資信託の期中分配金は源泉徴収
3. 利付債の償還差益は総合課税、利子は源泉徴収
4. 割引債の償還差益は源泉課税(税率18%など)
5. 国外で発行され国内で取引した割引債(ゼロクーポン債)の譲渡益・償還差益は 総合課税
6. 新株予約権付社債の譲渡益は分離課税、利子は源泉徴収、償還差益は総合課税 


株式先物取引の差益に係る税金
1. 反対売買による決済差益は雑所得など分離課税
2. 株式の受渡しによる精算差益は総合課税(雑所得など)



3.ストックオプション制度のあらまし   

一定のストックオプションの行使益は非課税
1. 株価80円の株を60円で取得した場合 差額20は経済的利益の供与を受けたものとして 課税される
2. 一定のストックオプションの場合 経済的利益20は課税されない(課税の繰延効果あり)
3. 株価100円のとき この株式を売却した時に 行使価格60円と売却価格100円の差額40に課税される


ストックオプションのあらまし
1. 会社から 役員などが付与された新株予約権のこと
2. 役員は新株予約権を行使することにより 自社株を取得
3. 会社から 配当収入を得るか 市場などで売却することにより 売買益を得る


非課税となる税制適格ストックオプションの要件
1. 税制適格の要件は 次の全てを充たし かつ 会社が税務署に 一定調書を提出しなければならない
2. 新株予約権の行使期間が 付与決議日から10年以内
3. 新株予約権の年間行使価額が 1200万円以下
4. 証券会社等に保管等を委託し、権利行使された株は証券会社等が保管


みなし譲渡課税に注意
1. 相続・贈与により保管委託された株が返還・移転した時 その時の株価により譲渡されたものとして課税
2. 税制適格要件を充たさなくなった場合も課税あり


4.諸事情により株を売買した場合の特例

保証人が保証債務の履行のため株を売買した場合 
1. 株を売却対価を 保証債務の弁済にあてた場合 一定要件のもと 譲渡益は課税されない
2. 一定要件とは 債務者の債務超過状態が継続している場合、会社更生法等・任意整理により債務整理している場合などが該当 


特定口座内の上場株が清算結了となった場合
1. その株の取得価額を譲渡損として計算する
2. 上場廃止により 特定口座から一般口座(特定管理口座)に移管し、その法人が清算した場合等が該当
3. 譲渡株式等の譲渡損失の繰越は適用できない


相続申告期限後3年以内に株を売買した場合
1. 相続税のうち一定額を 株の取得費に加算できる
2. 株売買益計算上 控除できる取得費は 被相続人の取得費を引継ぐ(相続税評価額が取得費にならない)
3. 株売却対価×5%を 株の取得費とすることもできる


株式交換等により新株を取得し、旧株を譲渡した場合
1. 旧株の譲渡がなかったものとする(課税の繰延)
2. 株式交換等により 旧株を親会社に売却し、親会社から新株の交付を受けた場合が該当
3. 新株を売却した場合 売買益(売却対価-旧株取得費など)に課税あり


5.証券税制のポイント(1) 

上場株式等についての改正
1. 平成21年~23年までの配当所得金額の税率は 配当金額に関わらず 所得税7%、地方税3%
2. 平成21年~23年までの株式譲渡所得の税率は 譲渡所得金額に関わらず 所得税7%、住民税3%
3. 平成21年5月でタンス株の特定口座受入が不可
4. 平成21年4月以降 相続等の一定事由に限り 特定口座へ受入可能


投資信託の償還・解約時の税金のあらまし
1. 投資信託の償還金等-信託元本=配当所得
2. オープン型証券投資信託の償還金等-信託元本=配当所得(信託調整金は考慮しない)
3. オープン型証券投資信託の特別分配金(収益調整金)は非課税
4. 株式(公募)証券投資信託の償還金等-取得価額=譲渡所得
5. 公募以外の株式証券投資信託などの償還金等の場合 償還金等-信託元本=配当所得、信託元本-取得価額=譲渡所得となる


一定配当について 配当控除不可
1. 一定の配当所得について 配当控除不可
2. 一定の配当とは 公社債等運用投資信託、外国株価指数連動型特定株式投資信託、特定外貨建証券投資信託、特定目的信託など


6.証券税制のポイント(2) 

先物取引の差金決済に係る税金のあらまし
1. 先物取引の差金決済は 雑所得等の分離課税(他の所得と合算しないで税額計算する)
2. 税金=(先物取引の収入額-手数料)×所得税率15%・個人住民税5%
3. 先物取引の差金決済損失は 他の先物取引の差金決済益から控除できる(他の所得から控除不可)
4. 先物取引の差金決済損失は 3年繰越控除できる


税制改正のポイント(上場カバードワラント)
1. 商品先物取引、有価証券オプション取引のほか 平成22年以降 上場カバードワラントの差金決済が 先物取引の差金決済の分離課税対象に追加
2. カバードワラントとは 権利行使日に権利行使価額と決済価額との差金を受け取る権利を証券化したもの
3. カバードワラントの権利行使、放棄、譲渡により雑所得等の金額を計算(平成22年以降 分離課税 所得税率15%、個人住民税5%)
4. カバーワラントの差金決済損失は 他の先物取引の雑所得金額から控除可、3年繰越可
5. 平成21年までの上場カバードワラントワラント差金決済は 総合課税(5%~40%)で損益通算不可、繰越控除不可
6. 取引業者等は カバーワラントの差金決済をする者の氏名・住所等の告知を受け、税務署に調書を提出



7.信託税制のあらまし 

信託による財産承継の仕組み
1. 信託とは 委託者が財産を 信託会社(受託者)に運用・処分を依頼し、運用益を 受益者に還元する仕組み
2. 信託契約終了時 信託財産を返還するか 信託財産を売却し、売却対価を委託者に還元するか いずれか


不動産管理信託の流れと税金のあらまし
1. 委託者は 貸アパートを信託会社に信託(所有権移転)し、受益者は信託会社から信託収益をえる
2. 受益者が貸アパートを所有しているものとして 信託財産に係る収益・費用から 所得税・消費税を計算
3. 信託契約終了時 信託会社が貸アパートを売却した場合 信託収益を受ける受益者が 譲渡したものとして 

譲渡所得税・消費税を計算


投資信託・貸付信託等の流れと税金のあらまし
1. 委託者は 金銭等を信託会社に信託し、受益者は信託会社から信託収益をえる
2. 受益者が信託収益を現実に受領した時 所得税を計算
3. 一定の信託会社による特定受益証券発行信託について 信託収益は配当所得として課税(配当控除不可)


受益者連動型信託の流れと税金のあらまし
1. 財産の受益者について 承継順(1次相続時は配偶者 2次相続時は長男など)を設定した信託
2. 信託設定時に 受益者に 贈与税等が課税

確定申告ポイント

1.自分で計算して申告する税金のあらまし 

自分で申告して払う税金のあらまし
1. 所得税・住民税(1年間にえた利益に応じて支払う)
2. 消費税(1年間で消費者から預かった消費税から払った消費税のうち一定の金額を控除した金額を支払う)
3. 贈与税(もらった財産に応じて支払う)


申告をしない場合
1. 本来 自分で税額計算を行い、翌年3/15日(消費税は3/31)まで 税務署に申告書を提出する
2. 申告をすべきなのにしなかったことが判明した場合 納付すべき本税+無申告加算税(本税の15%~20%)+延滞税(本税の年14.6%)などを払う、


確定申告(所得税)のあらまし
1. 収入の内容によって 合算して税率をかけて税額計算するものと 他とは分離して税率をかけるものがある
2. 合算して税額計算する場合 赤字があれば 他と利益と通算できる
3. 確定申告書を税務署へ提出すれば住民税の申告不要


所得税・住民税の節税ポイント(詳細後述)
1. 特別償却など利益を前倒しで減らす制度、小企業企業共済制度など所得金額を減らす制度をもれなく活用
2. 住宅ローン控除や耐震リフォーム控除など税額を減らす制度をもれなく活用



2.確定申告のあらまし

合算をして所得税計算するものの例 
1. 株式などの配当収入
2. 貸アパート収入・駐車場収入など不動産収入
3. 診療所などにおける事業収入(付随収入含む)
4. 勤務医・産業医・嘱託医・学校医分の給与収入
5. ゴルフ会員権売却収入の譲渡収入
6. 生命保険の満期保険金の一時収入
7. 講演・原稿料の雑収入
8. 年金など公的年金収入


収入の種類により引ける経費が異なる
1. 不動産賃貸収入と事業収入の場合 実額の事業経費及び青色申告特別控除最大65万円が引ける
2. 給与収入の場合 年収に応じて決まった給与所得控除額(65万円~年収×5%+170万円)が引ける
3. ゴルフ会員権の場合 取得した時の価額と売却手数料及び最大50万円が引ける
4. 生命保険の満期保険金の場合 支払った保険料及び最大50万円が引ける
5. 公的年金の場合 12/31現在65才以上か未満かにより異なり、年金控除額(70万円~年金×5%+155.5万円)が引ける


所得税・住民税の節税ポイント
1. 不動産・事業・ゴルフ会員権の収入から経費を引いた金額が赤字の場合 合算の際 一定額をマイナスできる


3.節税チェックポイント(1)   

配当収入がある場合
1. 株式取得にあたり借入した場合 利子を経費計上可
2. 配当控除(配当額×10%など)により税額控除可
3. 上場株の譲渡損と配当所得を損益通算可


給与収入がある場合
1. 給与収入以外の所得金額が20万円以下の場合 確定申告不要
2. 通勤手当・転居費用・出張旅費などの手当は非課税


確定申告により源泉徴収された所得税が戻るケース
1. 年の途中で退職し、年末調整を受けていない場合
2. 一定額(10万円以上など)の医療費を支払った場合 
3. 災害・盗難(詐欺は対象外)の被害を受けた場合 
4. 借入金で住宅を購入・リフォームした場合


医療費控除のポイント
1. 医師・歯科医師による診療費、入院費、通院費
2. 治療のための医薬品購入費
3. はり師・きゅう師などによる治療費
4. 一定の介護施設サービス・居宅サービス
5. 控除限度額は200万円で、確定申告に領収書などの添付が必要
6. 美容・健康増進・疾病予防のための費用、親族への世話代、治療以外のメガネ代などは医療費控除対象外



4.節税チェックポイント(2)

保険金の課税を分散して節税を図る 
1. 保険料の支払者、保険金の受取方法(一括か年金か)、保険金の種類(死亡保険金か満期保険金か)により課税が異なる
2. 個人に課される税目(所得税・贈与税・相続税)は累進課税なので 分散すれば節税可


一時所得課税対象の保険金は2分の1課税で有利
1. 保険料の支払者が自分、一括で受取る満期保険金は 一時所得課税
2. 保険料の支払者が自分、被保険者が他者、一括で受取る死亡保険金は一時所得課税
3. 所得税額=(保険金額-支払保険料など-50万円)×1/2×合算所得に応じて5%~40%
4. 保険料の支払者が自分、年金形式で受取る満期保険金は雑所得課税で 2分の1しないで合算課税
5. 保険料の支払者が自分、被保険者が他者、年金形式で受取る死亡保険金は雑所得課税


相続・贈与課税は非課税枠と低税率を活用して節税可
1. 保険料の支払者が他者、被保険者が保険料支払者の死亡保険金は相続税課税
2. 保険料の支払者が他者、被保険者が保険料支払者以外の死亡保険金は贈与税課税
3. 保険料の支払者が他者の満期保険金は贈与税課税



5.節税チェックポイント(3) 

住宅関係の減税制度のあらまし
1. 住宅ローン減税:借入金で住宅を購入した場合 年末借入残×1%などを減税
2. 長期優良住宅(200年住宅)減税:100万円まで
3. 住宅耐震改修費用減税:一定の改修費用×10%減税
4. バリアフリー・省エネ工事減税:工事費×10%減税
5. 各制度に減税限度額、併用不可があり減税試算が必要


小規模企業共済控除
1. 従業員20名(サービス業5名)以下の個人事業主・会社役員が加入できる政府が運営する退職金制度
2. 共済金を所得金額から控除可(月7万円まで加入可)
3. 給付金を受ける時に 退職金また公的年金等として課税(解約の場合 一時所得課税)


個人型年金加入者掛金控除
1. 国民年金基金・各生損保が運営する確定拠出型年金
2. 給付金額が個人の運用に変わるが、運用益は非課税
3. 掛金を所得金額から控除可(月6万8千円まで加入可)
4. 給付金を受ける時に 退職金また公的年金等として課税(60才まで解約不可)
  

6.節税チェックポイント(4) 

青色申告特別控除・青色事業専従者給与のあらまし
1. 5棟(または10室)以上の不動産収入または診療所などの事業収入がある場合 一定書類の提出により 10万円か65万円の概算経費を控除可
2. 複式簿記による記帳や会計ソフトにより貸借対照表が作成できれば65万円控除可(他は10万円控除)
3. 職務実態に応じて、同一生計の親族者に給与を支給可(所得分散による節税可)


減価償却費のあらまし
1. 減価償却費は 固定資産の取得(リース含む)にあたり、取得価額を耐用年数にわたり配分された経費
2. 配分方法は定額法と定率法があり、初期に多く経費化できるのは定率法(建物は定額法強制適用)
3. 中古資産を購入した場合 耐用年数を短縮可(法定耐用年数×0.2など)
4. 固定資産を廃棄した場合 未償却の簿価を経費計上可


修繕費・消耗品費・少額減価償却資産のあらまし
1. 20万円未満(または3年内周期)の修理は経費可
2. 通常の維持管理費、き損部分の現状回復費は経費可
3. 60万円未満の修理は資産性が不明の場合 経費可
4. 10万円未満の固定資産は経費可
5. 10万円超20万円未満の固定資産は3年で経費配分可
6. 青色申告者は30万円未満の固定資産を経費計上可(上限300万円)
 


7.節税チェックポイント(5) 

特別償却制度のあらまし
1. 特定期間に青色申告者が新品の特定資産を取得した場合 取得年度などに割増償却費を計上できる制度
2. 割増償却費(取得価額の一定割合)は制度により異なる
3. 適用を検討するにあたり資産の明細がわかる資料、カタログが必要 


次の場合 特別償却の適用余地あり
1. 新品の機械・IT事務機器等を取得した場合
2. データーベース管理ソフト・ファイアーウォールソフトなど情報基盤強化設備等を取得した場合
3. 障害者自立支援法の適用者から商品等を購入した場合
4. 障害者を雇用している場合
5. 中心市街地に優良賃貸住宅を新築した場合
6. 高齢者向けの優良賃貸住宅を新築した場合
7. 高度医療用機器を購入した場合
8. 新型インフルエンザ対策機器を購入した場合
9. 建替え病院用の建物を取得した場合
10. 一定物流拠点区域で倉庫用建物を取得した場合
11. 一定の耐震改修工事により建物を取得した場合



8.節税チェックポイント(6) 

経費のあらまし
1. 事業に直接関係あるもののみ経費計上可2. 家事関連費(事業と家事が区分不明の経費)は原則不可だが、事業分について経費計上余地あり
3. 翌年払う経費でも当年分は未払経費計上可
4. 事業と関係ある取引先への接待飲食費・贈答費・慶弔費など経費計上可
5. 職員の慰安食事費、レクレーション費、研修参加費、慰安旅行費(4泊5日以内で社員の50%以上参加などの旅行)など経費計上可
6. 会費など経費計上可(会費のうち年金・生命保険は経費不可)。事業に係る税理士費用・弁護士費用も可


未払経費の例
1. 未払消費税・未払固定資産税
2. 締め後12月末日までの給与
3. 当年中のカード払経費・仕入・外注費・家賃・広告費・水道光熱費・消耗品費などで未払のもの


節税法人の活用
1. 不動産管理会社、MS法人へ業務委託料を払うことにより個人所得税率を下げ 税率の低い法人へ所得移転
2. 専従者給与か節税法人からの給与か個人法人トータルの税金を算出し節税試算
3. 業務委託の実態性確保のため 契約や業務報告などの文書化がポイント

住宅の税金

1.住宅取得と税金のあらまし 

住宅の取得方法により税金・税目が異なる
1. 相続により取得した場合 相続税を払う
2. 贈与により取得した場合 贈与税・不動産取得税を払う
3. 自己(借入含む)資金により取得した場合 不動産取得税を払う。親族からの借入の場合 贈与リスクあり
4. 贈与された資金により取得した場合 贈与税・不動産取得税を払う


住宅取得・所有に係る税金のあらまし
1. 建物に係る消費税=建物対価×5%
2. 土地・建物の不動産取得税=(固定資産評価額-1200万円など)×1/2×4%など
3. 不動産登記の登録免許税(固定資産評価額×0.4%など)+司法書士登記手数料
4. 不動産契約書の印紙税(対価により2百円~54万円)+不動産会社手数料
5. 土地・建物の固定資産税・都市計画税=固定資産評価額×1.7%など


住宅贈与・住宅資金贈与に係る税金のあらまし
1. 原則 (贈与価額-非課税枠110万円)×10%~50%の贈与税あり
2. 一定配偶者への贈与は 非課税枠2千万円追加
3. 親等から子への贈与は 非課税枠5百万追加
4. 親から子への贈与は 相続時精算課税制度と選択可



2.住宅取得と贈与税(1)

個人が贈与により住宅を取得した場合の税金・税目
1. 個人(父)から個人(子)へ住宅を贈与した場合 個人(子)が贈与税を払う
2. 法人から個人へ住宅を贈与した場合 個人が一時所得税を払う(個人が役員の場合 法人にも課税余地あり)
3. 死因贈与(父に相続が生じたら子に贈与するなど)の場合 相続が生じたときに 子が相続税を払う
4. 相続時精算課税制度により 父から子へ住宅を贈与した場合 贈与時に子が贈与税を払い、相続時に住宅以外の財産の相続税を払う


贈与と認定される親子間のやりとり
1. 借入実態がない(返済事実がない、返済条件が不明確、契約書・借用書がない)
2. 課税上弊害のある低金利の借入をする
3. 子名義の金融機関借入を 親が負担する
4. 住宅の所有者名義を登記簿上 変更する
5. 住宅の共有割合と 住宅資金の負担割合が異なる


親子間の負担付贈与の注意点
1. 親が子に譲渡する場合 対価は時価(相続税評価額でなく)で評価し、親が譲渡所得税を払う
2. 親子間の負担付贈与は 借入金額を対価とする譲渡行為のため 原則 親が譲渡所得税を払うが
3. 借入金額が 住宅の時価より低ければ 差額について 子が贈与税を払う


3.住宅取得と贈与税(2)   

平成22年住宅取得に関する贈与税の非課税枠
1. 住宅取得等資金贈与制度の1500万円非課税枠
2. 暦年贈与制度の年間110万円非課税枠
3. 相続時精算課税制度の2500万円控除制度
4. 配偶者控除の2000万円控除制度


住宅取得等資金贈与制度のあらまし
1. 平成22年の 直系の父母・祖父母から子・孫への住宅取得資金の贈与は 1500万円まで非課税
2. 贈与を受けた子・孫が居住していなければ適用不可
3. 贈与者が複数いる場合も 非課税枠は1500万円まで
4. さらに暦年贈与制度の非課税枠110万円を利用可
5. 暦年贈与制度に代えて、相続時精算課税制度を選択した場合 1500万円非課税枠+2500万円の控除可


暦年贈与制度のあらまし
1. (贈与財産の相続税評価額-110万円)×金額に応じた10%~50%の贈与税を 贈与を受けた者が払う
2. 住宅取得資金の贈与税額=(贈与金銭-1500万円-110万円)×贈与税率
3. 住宅の贈与の場合 土地は路線価等により評価し、建物は固定資産税評価額により評価
4. 持分贈与の場合 上記評価額×持分割合により評価
5. 贈与税を親が負担する場合 贈与税の課税対象となるので 贈与税相当額の金銭を課税対象に含めて申告



4.住宅取得と贈与税(3)

相続時精算課税制度のあらまし
1. 65歳以上の親から20歳以上の子への贈与に選択可
2. 住宅取得資金贈与の場合 非課税枠4千万(1500万円+2500万円)を超える部分の20%の贈与税を払う
3. 相続時に贈与財産を含めて相続税を計算し、贈与税を控除した相続税を払うことにより精算する制度


相続時精算課税制度により不利になるケース
1. 暦年贈与を長期的に利用できるケース
2. 評価額が下がるケース
3. 住宅地など小規模宅地の特例対象地のケース 
4. 上記のほか 相続時に贈与財産が加算されるので 相続のアンバランスが生じるリスクあり
5. 年齢通りに相続が生じるとは限らない、配偶者など直系以外に承継されるなども 念頭に置いて適用を検討


配偶者贈与の特例制度のあらまし
1. 婚姻20年以上の配偶者へ住宅・住宅取得資金を贈与した場合 非課税枠2110万円
2. 配偶者が居住し 今後も居住予定の場合 特例適用
3. 土地のみ・建物のみの贈与、共有なども可
4. 前年以前に配偶者贈与を受けている場合 不可
5. 売却時、相続時、離婚時の財産分与など 各々のケースの税金・特例の有無を念頭に置いて適用を検討
 
 
5.住宅取得と所得税減税(1) 

次に該当する場合 所得税減税制度あり
1. 住宅の取得・増改築にあたり、借入金がある場合(住宅ローン控除制度)
2. 既存の住宅に省エネ工事、バリアフリー工事、耐震改修工事を行った場合(借入金がなくても可)


住宅ローン控除制度のあらまし
1. 住宅の新築・中古住宅の取得、100万円超の増改築・主要構造の大規模修繕について ローン控除制度あり
2. 年末借入金残高×1%を 10年間 所得税から減税(50万円など減税上限あり)
3. 借入期間10年以上の金融機関の住宅ローンが対象
4. 床面積50㎡以上(店舗併用の場合 店舗含む)
5. 中古木造住宅の場合 築20年以内(鉄骨住宅などは築25年以内)
6. 適用年の12/31まで引き続き居住


住宅ローン控除を受けられない場合
1. 合計所得金額が3千万円を超える場合
2. 一定親族から住宅を取得または贈与を受けた場合
3. 別荘の場合、引き続き居住していない場合
4. 繰上返済などにより返済期間が 10年未満の場合
5. 転勤した場合(単身赴任の場合 適用可、再入居した場合 適用可)
6. 譲渡所得税の特例を受けている場合



6. 住宅取得と所得税減税(2) 

200年住宅の減税制度のあらまし
1. 認定長期優良住宅(200年住宅)を新築した場合 ローン控除か税額控除を選択可(選択したら変更不可)
2. ローン控除は 年末借入金残高×1.2%などを 10年間 減税(60万円など減税上限あり)
3. 税額控除は 標準的性能強化費用(上限1千万円)×10%を 減税(控除しきれない場合 翌年繰越可)


住宅ローン控除の適用期間中に相続が生じた場合
1. 被相続人の準確定申告で 住宅ローン控除適用可
2. 住宅と住宅ローンを相続した相続人は 住宅ローン控除適用できない


途中で適用要件を満たす場合(満たさない場合)
1. 転勤により転居した場合 再居住した年にローン控除適用可
2. 所得制限により適用不可でも 所得金額3千万円以下の年は ローン控除適用可
3. 繰上返済により 当初借入月から最終償還月の期間が10年未満になった場合 ローン控除適用不可
4. 要件を満たさない住宅ローンから 金融機関の住宅ローンに借換した場合 ローン控除適用可 
5. 第三者に住宅を貸し付けた場合 ローン控除適用不可
6. 別生計の親族から住宅を取得し、その後 その親族と生計が一になった場合 ローン控除適用可 



7.住宅売却と譲渡所得税 

住宅を売却した場合の譲渡所得税のあらまし
1. 譲渡所得税額={譲渡対価-取得費(または譲渡対価の5%)-譲渡経費-特別控除}×税率
2. 取得費=土地・建物の購入費-建物の償却費(建物購入費×事業用資産の1.5倍の耐用年数×経過年数)
3. 譲渡費用は 登記費、仲介手数料、一定の取壊費など
4. 特別控除は 3千万円など


住宅を売却した場合の税率のあらまし
1. 取得から譲渡年の1/1まで所有期間が 5年以下の場合 所得税・住民税で39%
2. 所有期間が5年超10年以下の場合 所得税・住民税で20%
3. 所有期間が10年超の場合 譲渡所得金額のうち 6千万円までは 所得税・住民税で14%、6千万円超部分は 所得税・住民税で20%(一定控除あり)


住宅を売却した場合の特例控除・特例税率の留意点
1. 土地と建物を共に売却しなければ 特例適用できない
2. 土地と建物の所有者が異なる場合(夫の土地 妻の建物)で 別生計・賃貸借のケースは 特例適用できない
3. 生計同一の親族等へ売却した場合 特例適用できない
4. 店舗併用住宅の場合 店舗部分に適用できない
5. 前年・前々年・当年に 一定の譲渡所得の特例を受けている場合 適用できない



8.住宅の買換と所得税

住宅の買換(旧住宅の売却+新住宅を取得)の税金
1. 旧住宅の売却について 前記の特例控除(3千万円)&特例税率と 買換特例 のいずれか選択できる
2. 買換特例とは 旧住宅の売却益課税を 新住宅の売却時まで 繰延べる制度のこと
3. 平成22年~23年末までの 住宅の買換について適用


買換特例は 次の要件を満たしている場合 適用可
1. 旧住宅の売却対価が2億円以下(売却年の前々年~翌々年に住宅を売却した場合 対価が2億円以下)
2. 旧住宅の取得から売却年の1/1までの期間が10年超であり、旧住宅に 譲渡者が10年以上 居住
3. 新住宅の床面積が50㎡以上(中古の場合 25年以内など)
4. 売却年かその翌年に 新住宅を取得し、取得年の翌年までに居住(相続人引継可)


買換特例の留意点
1. 旧住宅売却対価>新住宅取得対価の場合 差額部分に長期譲渡所得課税あり(3千万控除適用不可)
2. 売却年の翌年までに 新住宅を取得できなかった場合、取得年の翌年までに 新住宅に居住出来なかった場合 翌4月末までに 修正申告・納税あり
3. 旧住宅を同一生計の親族へ売却した場合 適用不可
4. 新住宅の土地と家屋の所有者が異なる場合 適用不可(親族が所有者で使用貸借の場合 適用可)

遺言と相続税

1. 相続が起きたら いつまでに何をするか  

相続が起きたら いつまでに何をやるか
1. 相続7日以内に、市町村へ死亡届を提出
2. 年金停止・寡婦年金移行、葬儀給付・高額医療費の請求を 市町村・社会保険事務所で相談・手続する
3. 相続3月以内に、財産調査、遺言書の確認、預金閉鎖、生命保険請求→債務が過大の場合 相続放棄・限定承認を弁護士に相談
4. 相続4月以内に、所得税申告書を税務署へ提出し、所得税を納付(事前に税務署・税理士へ相談)
5. 相続10月以内に、相続税申告書を税務署へ提出し、相続税を納付(事前に税務署・税理士へ相談)
6. 相続1年以内に、遺留分減殺請求


遺言書がない場合
1. 相続放棄、限定承認を選択しなかった場合、債務も含めて財産を承継(単純承認)
2. 相続人全員で遺産分割協議を行い、協議が整った場合は遺産分割協議書に署名・押印
3. 協議が整わない場合は家庭裁判所へ調停を検討


遺言書がある場合
1. 公正証書遺言の場合 遺言執行者により 遺言執行
2. 自筆証書遺言などの場合 封をしたまま、家庭裁判所に検認を請求
3. 遺言書に記載のない財産がある場合、遺言による取得を望まない場合、相続人全員で遺産分割協議を行う


2.遺言書がある場合の相続・相続税

遺言による財産取得は 相続税の対象となる
1. 個人の死亡により、個人が相続・遺贈・死因贈与により財産を取得した場合 相続税の対象となる
2. 遺贈とは 遺言により 財産を無償で与えること(遺言者の死亡により、遺贈の効力が発生する)
3. 相続権がなくても 遺贈により財産を取得した場合 取得した者(受遺者)は 相続税の対象となる


遺贈制度のあらまし
1. 受遺者は 遺贈を放棄できる(遺言を開封して初めて財産取得を知るケースもあるため)
2. 受遺者が相続人の場合 遺贈放棄は 遺言を白紙にして、相続人全員と分割協議をすることを意味する
3. 受遺者が相続人以外の場合 遺贈放棄は 遺産放棄を意味する
4. 遺言者の意思を 制限するため 一定の相続人には遺留分制度(詳細後述)がある


遺贈方法・遺言内容のあらまし
1. 遺言者の全財産を 取得者ごとの取得割合(100%含む)により 遺贈する包括遺贈と
2. 特定財産を特定者に遺贈する特定遺贈 がある
3. 負担をつけて、財産を遺贈する負担付遺贈もある
4. 包括遺贈の受遺者は 遺贈でなく、相続の承認・放棄手続(詳細後述)を経る
5. 遺言執行者などが 遺言内容を実行する


3.相続人の修正と相続税(1) 

相続人は、配偶者と先順位の血族相続人
1. 被相続人に子(孫)がいる場合 配偶者と子(孫)が相続人。後妻の連れ子は 相続人でない
2. 被相続人に子がいない場合 配偶者と被相続人の父母(祖父母)が相続人。配偶者の父母は相続人でない
3. 被相続人に子と父母がいない場合 被相続人の兄弟が相続人。兄弟が死亡していた場合 子が相続人 


養子縁組・遺言により相続人を増加するケース
1. 内縁関係にあり、(父が)子を認知していない場合 遺言により認知して、相続権を与えた上、トラブル回避のため 遺言により 相続財産を指定
2. 後妻の連れ子を養子縁組により相続権を与えた上、トラブル回避のため 遺言により相続財産を指定
3. 生活介護をしてくれた長男の嫁などに 遺言による遺贈をする(養子縁組により相続権を与えても可)


相続人が増加した場合の相続税計算
1. 相続税計算上 非課税枠(5千万円+1千万円×法定相続人数)あり
2. 法定相続人数が養子縁組により増加した場合 1人(実子がいない場合 2人)まで 非課税枠計算に算入可
3. 孫養子、兄弟など一親等以外の者は 通常の相続税に20%加算する(一親等の代襲相続人は加算なし)
4. 一親等の者とは 被相続人の子、養子(孫養子除く)、父母をいう


4.相続人の修正と相続税(2) 

相続人に一定の非行があれば相続権を廃除できる
1. 特定の相続人に、虐待、重大な侮辱、著しい非行がある場合が対象
2. 生前または遺言により、家庭裁判所に申立て、家庭裁判所が相続人の廃除を認めた場合、相続権を失う
3. 廃除された相続人は 遺留分請求権がない→遺言者の自由意思による財産承継が可能
4. 一定の犯罪行為をした相続人に対して、家庭裁判所の判断なしで 相続権を奪う相続欠格制度もある
5. 相続権を失った相続人に子がいる場合 代襲相続あり


相続人が減少した場合の相続税計算
1. 相続税計算上 非課税枠(5千万円+1千万円×法定相続人数)あり
2. 相続権を失った相続人分は非課税枠計算に算入しない
3. 相続権を失った相続人に子がいる場合 代襲相続人は 非課税枠計算に算入できる


生前贈与・死因贈与による財産承継割合の修正
1. 相続権の修正が困難な場合、相続財産の取得割合の修正で対応
2. 贈与者と贈与を受ける者の合意(死因贈与の場合 書面)により、財産を贈与できる
3. 生前贈与は贈与税、死因贈与は相続税が課税
4. 相続3年以内の贈与、相続時精算課税制度の贈与は相続税計算し、納付した贈与税を引いた金額を納付


5.相続人の修正と相続税(3) 

相続人は相続を放棄できる
1. 相続開始3ケ月以内に、家庭裁判所へ申述することにより、相続財産(債務含む)の取得を放棄できる
2. 債務を相続したくない場合、特定相続人のみに相続させたい場合(ほかの相続人が放棄する)に利用
3. 相続人各人でも 相続放棄の申述ができる


相続を放棄した場合の相続税計算
1. 相続税計算上 非課税枠(5千万円+1千万円×法定相続人数)あり
2. 相続放棄がなかったものとして、法定相続人数を計算


相続人は限定承認できる
1. 限定承認とは 取得した財産を限度として、債務を引き継ぐこと
2. 相続人全員が 相続開始3ケ月以内に、家庭裁判所に申述することにより、限定承認できる


限定承認の場合の税金計算
1. 限定承認の場合 被相続人に譲渡所得税が課される
2. 相続財産の相続時の価格(相続税法評価ではなく)から取得費等を控除した金額(含み益)に対して課税
3. 譲渡所得税の特例のうち 親族間譲渡適用不可のもの(居住用財産特例など)は、適用不可


相続放棄、限定承認を選択しない場合 単純承認となる


6. 相続財産の持分調整と相続税 

寄与分により貢献度を反映できる
1. 被相続人の財産増加・維持に 特別貢献した相続人には、寄与分を加算調整できる
2. 寄与分は相続人の協議により決まり、協議しない場合 家庭裁判所が決める
3. 被相続人:社長 、子:役員のケースで、子が社長の財産(事業利益)の増加に貢献した場合などが該当


相続税計算の考え方(寄与分について)
1. 相続税は 財産取得の割合に応じて負担する(寄与分により相続財産が増加した場合 相続税も増加)
2. 配偶者には 法定相続分(また1.6億円)まで課税されない減額制度がある→一定の寄与は反映


相続対策では 特別受益持戻し制度のケアが必要
1. 特別受益持戻しとは、過去の贈与財産を 相続財産に取り込んで、相続人の相続持分を計算すること
2. 被相続人から子への住宅資金や事業資金援助、被相続人が負担した医学部など高額な学費などが該当
3. 遺言書に 持戻免除の意思表示をできる


相続税計算の考え方(特別受益持戻しについて)
1. 相続時精算課税制度による贈与分について、持戻して相続税を計算
2. 暦年贈与分のうち、相続前3年以内の贈与分のみ 持戻して相続税を計算


7.相続財産の分割と相続税(1) 

3つの分割方法
1. 現物分割(相続財産を現物で相続人に分割する)
2. 換価分割(未分割のまま 相続財産を金銭化して相続人に分割する)
3. 代償分割(相続財産を現物で取得した相続人が、バランスをとるため、他の相続人に代償金を払う方法)


遺言により分割方法を指定できる
1. 遺言により分割方法を指定した場合、遺言執行者が指定された分割方法(指定分割)により執行する
2. 遺言により分割方法の指定がない場合 相続人の協議により分割(協議分割)する
3. 相続人の協議がまとまらない場合 家庭裁判所の審判により分割(審判分割)する
4. 審判分割は 原則 現物分割による


遺言と代償分割により、法定相続割合を修正する
1. 遺言により、相続人の持分を指定する
2. 遺言により、代償分割を指定する(指定持分と法定相続割合の差を代償金で調整)
3. 持分>法定相続割合の相続人の代償金原資を、生命保険金や生前贈与で準備(遺言により持戻し免除)
4. 後継者に不動産・自社株を 遺言により 指定相続する場合、相続トラブル回避のため代償分割を検討
5. 代償金原資を 固有財産(相続財産含む)の譲渡により調達する場合 譲渡所得税に注意


8.相続財産の分割と相続税(2) 

相続財産が分割しない場合の相続税デメリット
1. 法定相続割合(また包括遺贈割合)で相続税計算
2. 配偶者の税額軽減・小規模宅地評価減など 節税対策に有効な制度が使えない
3. ただし申告期限から3年以内は適用余地あり
4. 物納・納税猶予など納税対策に有効な制度が使えない


分割協議を修正した場合の注意点
1. 民法上 分割協議のやり直しが認められるのは 民法上無効とされる事由のある場合(法定解除)と全相続人の合意がある場合(合意解除)のみ
2. 錯誤等で分割協議が無効判決になった場合 更正の請求(嘆願含む)により 相続税計算修正
3. 全相続人による合意解除は、贈与税、譲渡所得税(特例なし)になる可能性あり


遺言と異なる分割協議も有効だが
1. 申告期限後の場合 贈与税が課税されるケースあり


相続時精算課税制度を活用した生前分割
1. 相続時精算課税制度は生前贈与を一律20%贈与税で相続人に生前分割する制度
2. 相続時に贈与財産(贈与時評価額)を相続財産に加算して相続税を計算し、贈与税との差額を納付する
3. 不動産や自社株など相続トラブルが事業に影響を与え、かつ評価が高くなるものの生前分割制度として有効

不動産の承継

1. 不動産承継の流れ 

個人地主の場合の承継対策の流れ
1. 相続人・後継者(候補)の確定
2. 承継案の作成(どの不動産を誰に承継させるか)
3. 現状の不動産評価及び相続税(相続税率)の把握
4. 現状の納税資金を確認の上 生命保険による手当や延納・物納の検討
5. 不動産ごとの採算性(資産利益率)を予測
6. 承継案を修正しながら 不動産評価引下策、法人への現物出資、相続人等への生前贈与・売買などの検討
7. 遺言制度・成年後見制度・財産管理契約の検討


法人地主の場合の承継対策の流れ
1. 後継者、株主構成・株主割合・議決権割合、役員構成の確認(社長交代後の役員候補の確認)
2. 定款の売渡請求条項、種類株式(議決権制限・全部取得条項・拒否権)の確認
3. 現状の自社株評価及び相続税の把握
4. オーナー社長の退職金原資を確認の上 解約返戻性の高い生命保険、不動産による現物退職給与を検討
5. 自社株承継計画を策定の上 自社株評価引下策、後継者出資の別法人設立の検討
6. 事業承継税制、相続時精算課税、暦年贈与、法人から後継者へ売買を検討
7.法人解散による承継、法人売買(M&A)による承継の検討



2. 不動産承継に係る税金のあらまし 

親から子へ不動産を承継した場合の主な税金
1. 親から子に贈与した場合 子が不動産評価額の10%~50%(一定の非課税枠あり)の贈与税を払う
2. 相続精算課税制度の場合 20%の贈与税を払う
3. 親から子に不動産時価で売却した場合 親が売却益×20%(短期の場合39%)の所得税・住民税を払う
4. 低額で不動産を売却した場合 親が所得税等を払い、子が時価差額の贈与税を払う
5. 親の相続により子が承継した場合 子が不動産評価額の10%~50%(一定の非課税枠あり)の相続税を払う  


親から子へ不動産保有法人を経由して承継する場合
1. 親から子に自社株を贈与した場合 子が自社株評価額(不動産評価額など法人評価額)に係る贈与税を払う
2. 親から子に自社株時価で売却した場合 親が売却益×20%の所得税・住民税を払う
3. 親の相続により子が承継した場合 子が自社株評価額に係る相続税を払う 
4. 親が株主の法人から子が株主の法人に不動産を時価で売却した場合 親の法人が売却益に係る法人税等を払う(低額で売却した場合 両方が法人税等を払う)


ムダな税金流出を抑えるポイント
1. 各税目の非課税枠・特例の活用
2. 分散承継により 累進課税税率を抑える
3. 不動産の適正評価額で承継し、評価引下策を実行する


3. 不動産評価のあらまし 

概算評価額を知ることが不動産承継のスタート
1. 不動産評価額が承継方法を判断するポイント
2. 土地と建物の所有関係・使用状況・近隣相場等により評価方法・評価額が異なる
3. 主な評価方法は 相続税法評価、公示価格(相続税法評価÷80%など)、鑑定評価など
4. 概算評価額と実際取得価額の差(含み損益)を把握


所有関係・使用状況ごとの土地の名称の違い
1. 親が土地・建物を所有し、親が土地・建物を使用している(自用地)
2. 親が土地・建物を所有し、親が第三者に貸している(貸家建付地)
3. 親が土地を所有し、親が第三者に貸しており(貸宅地)、その借主が建物を所有している(底地権)
4. 親が借りている土地に 建物を所有している(借地権)


所有関係・使用状況ごとの相続税評価方法の違い
1. 自用地の相続税評価額は 路線価×地積×補正率
2. 貸家建付地・貸宅地の相続税評価額は 自用地評価×(1-借地権割合など)
3. 借地権の相続税評価額は 自用地評価×借地権割合
4. 家屋の相続税評価額は 固定資産税評価額など(建物の時価を算定するにあたり 簿価も検討余地あり)
5. 建物の簿価とは 取得価額-取得時から今までの減価償却累計額


4.借地権の注意点(1)

不動産承継にあたり借地権課税を回避する
1. 親の土地に 子(又は法人)が 建物を建てる場合 親が底地権者、子(又は法人)が借地権者になる
2. 親から子(又は法人)に借地権部分が移転することになり 贈与税・所得税・法人税の課税リスクが生じる

親の土地に子が建物を建てる場合
1. 子が権利金・地代を払わない場合(使用貸借) 子に贈与税はないが、不動産評価額は自用地評価
2. 子が通常の権利金・地代を払う場合(賃貸借) 親に譲渡所得税はあるが、不動産評価は貸宅地評価(借地権割合分 評価減)
3. 子が権利金を払わない代わりに 相当地代(土地価額×6%など)を払う場合 親に不動産所得税はあるが、親の譲渡所得税や子の贈与税はない
4. 子が払っている地代が相当地代未満の場合 子に贈与税がある  


貸宅地評価と貸家建付地評価の違い
1. 貸宅地は土地のみ所有・賃借しているケース、貸家建付地は土地と建物を所有・賃借しているケース
2. 貸宅地評価は 自用地評価より借地権割合分 評価減
3. 貸家建付地評価は 自用地評価より借地権割合×借家権割合(30%)分 評価減
4. 借地権を生じさせない承継で貸家建付地評価減を使うことも選択肢


5.借地権の注意点(2) 

法人を経由して不動産を承継する場合で借地権のケアが必要なケース
1. 親の土地を法人(親が株主)に貸し 法人が建物を建てるケース(親から子へ株を承継)
2. 親の土地を法人(子が株主の法人を設立し)に貸し 法人が建物を建てるケース


法人が親(地主)に通常の権利金を払う場合
1. 親に譲渡所得税などがあり、法人に課税なし
2. 親の不動産評価は 自用地評価×(1-借地権割合)
3. 法人の株(不動産)評価は 自用地評価×借地権割合


法人が権利金を払わないで 相当地代を払う場合
1. 親に譲渡所得税なし、法人に課税なし
2. 親の不動産評価は 自用地評価×80%
3. 法人の株(不動産)評価は 自用地評価×20%


法人が権利金を払わず、相当地代未満の支払の場合
1. 親に譲渡所得税は原則なし(譲渡所得の時価課税なし)
2. 法人に権利金相当の法人税課税あり
3. 上記場合でも 法人と親が 土地の無償返還届出を提出した場合 法人税課税なし
4. 親の不動産評価は 自用地評価×80%
5. 法人の株(不動産)評価は 自用地評価×20%
6. 使用貸借の場合 親の不動産評価は 自用地評価(法人の株評価は ゼロ)


6.不動産の承継方法(1) 

不動産の承継方法のポイント
1. 土地と建物は分けて 承継方法を考える
2. 土地の共有や 土地と建物を異なる所有者にするなど 権利関係を複雑にするとトラブルが多いため 単独所有などシンプルな権利関係にする
3. 父→母→子、父→子、父→法人→子の3プロセスで不動産の承継を考える
4. 相続税の納税資金対策(生命保険・退職金)と相続トラブル対策(遺言制度)も一緒に考える


土地の承継方法のポイント
1. 居住用、事業用、遊休地に分け、事業用は採算性(資産利益率)を把握する
2. 居住用と事業用は 承継者候補を決め 相続と贈与の試算をする
3. 遊休地と不採算土地は 用途変更、第三者売却、物納を考える


建物の承継方法のポイント
1. 建物は 時間の経過により減価するので 承継時期は遅い方が 低い評価で承継できる
2. 借地権課税を回避しながら 法人に建物を売却し 不動産と自社株のトータル評価減を図るのも効果的
3. 親が法人(親が株主)へ賃貸している不動産のうち 建物を子に贈与し 財産から外した上で 法人との賃貸借契約を維持し 土地を貸家建付地で評価   


7. 不動産の承継方法(2) 

父→母→子の承継プロセスで検討する特例
1. 贈与税の配偶者控除制度(婚姻20年以上の配偶者への居住用土地・建物を贈与した場合の2110万円の非課税枠)
2. 相続税の配偶者軽減制度(配偶者が相続した財産のうち 1.6億円など一定金額まで非課税枠)
3. 父→母と母→子の 2度の相続分の基礎控除(5千万円+1千万円×相続人数)
4. 父→母または母→子の 2つの承継プロセスについて 暦年贈与制度(年間非課税枠110万円)と相続時精算課税制度の判断


相続時精算課税のあらまし
1. 65以上の親から、20歳以上の子へ贈与した財産について、相続時精算課税を選択した場合、2500万円まで贈与税非課税(2500万円超は20%の贈与税)
2. 承継プロセスごと 1度しか使えない(1度使ったら 暦年贈与制度が使えない)
3. 贈与時から相続時の評価上昇分について課税されない(評価下落分も考慮されない)
4. 高収益の不動産を子へ贈与することにより 所得移転


父→子の承継プロセスで検討する特例
1. 相続時精算課税制度と暦年贈与制度
2. 法人(不動産保有会社を活用する場合 事業承継税制
3. 含み損の物件と高収益物件の売却による損益通算


8.不動産の承継方法(3) 

法人を活用して不動産を承継するポイント 
1. 親→法人→子の承継プロセスで考える
2. 親→法人のプロセスでは 不動産所得の移転(管理会社方式)か、不動産の移転(現物出資方式)を考える
3. 法人→子のプロセスでは 株を通して承継するか 不動産そのものを承継するか考える 
4. 法人がすでに不動産を保有している場合 退職金として妥当な範囲で不動産を子に承継するのも検討価値あり


親→法人→子の承継プロセス
1. 現物出資方式の場合 親の不動産を株にして 各特例を活用して 贈与・相続により計画的に承継
2. 現物出資方式の場合 暦年贈与・相続時精算課税の生前贈与試算がポイント
3. 自ら使用していない不動産が70%以上(または 収入の75%以上が不動産収入)の資産管理会社は 事業承継税制の相続税納税猶予の適用不可
4. 管理会社方式の場合 不動産利益を子へ分散し 不動産は相続により子に承継
5. 管理会社方式の場合 貸家建付地評価減メリット・借地権課税リスク・管理費否認リスクのケアがポイント


不動産の現物退職金の活用
1. 法人にとって株評価引下効果あり、さらに事業承継税制の検討余地あり
2. 退職金としての妥当性(職務・功績)が税務上のポイント

貸地・貸アパート経営

1.財産をどう組替えるか 

まずは財産の現在価値分析から
1. 財産を預金・金融財産・不動産の3つに区分
2. 預金の現在残高と利回り(金利)を一覧表にする
3. 金融財産の支払価額と現在相場、差額利益と取得期間から年平均利回りを算出し、一覧表にする
4. 不動産の支払金額と現在価値(固定資産税評価額や相続税評価額なででも可)、事業用不動産の場合 平均利益を算出し、一覧表にする
5. 自分の現在の総財産現在価値に占める預金・金融財産・不動産の比率を求める


他の財産から不動産への組替えを検討するケース
1. 不動産が換金しにくいデメリットを承知の上で、より大きな財産を税金流出を抑えて、次世代以降へ承継したい
2. 今は借入可能であり 貯金があるので、将来の年金不安・金融不安に備えて 安定収入を得たい


不動産区分内の組替えの例(詳細後述)
1. 貸地トラブルを避けるため、所有権へ組替え
2. 低収益の貸アパート、駐車場を高収益へ組替え
3. 更地の相続税トラブルを避け、収益化へ組替え
4. 農地を宅地にするか農地保全するかの組替え
5. 上記組替えを譲渡所得税の特例を検討しながら 実行するのが ポイント
6. その他、家賃保証契約から通常管理契約へのシフト、1Kや高齢者向けなど居住対象者のシフトも有効


2.貸地トラブルのあらまし 

貸地は収益性が低くても、財産の組替えができない
1. 土地所有者(底地権者)が、長期的に土地を貸し、借りた土地に建物を建てると、借地権が生じる
2. 長期的な土地賃貸借契約なので、地価が上がって固定資産税などコストが上がっても、地代は上げられない
3. 自分の土地なのに、土地を売却したくても承諾が必要
4. 土地賃貸借契約の更新料をもらえない
5. 貸地により相続税を物納する場合、適格要件が必要


貸地トラブル回避方法の一例
1. 底地権者と借地権者で、契約について詳細を決める(賃貸借期間、期間中の家賃改定条件、双方の承諾が必要な事項を限定列挙、転貸・転売時の条件、立退料・更新料、相続が生じたときの取扱いなど)
2. 底地権者による建物の買取を検討(買取資金が必要)
3. 借地権者による底地の買取を検討(買取資金が必要)
4. 交換により、双方を土地単独所有者に権利変換
5. 共同で売却し、対価を分割


ポイントは財産評価と税金特例の活用
1. 底地権と借地権の財産評価額を、相続税法・公示価額より算出し、各々の持分を決める
2. 譲渡所得税の軽減策、相続税の軽減策を試算しながら、底地権者と借地権者で両者が節税になる協調契約にするのがポイント(不動産屋さんより税理士を活用)



3.貸アパート・駐車場経営の前に   

駐車場経営のメリット・デメリット
1. 少額投資で、更地の収益化が可能(撤退も容易)
2. 借主との滞納・敷金返還・夜逃げトラブルや建設時の近隣トラブルが少ない(解決費用も少ない)
3. 家賃を近隣相場以下にしなければ、空き率が高くなる
4. 近隣の駐車場空き状況、利用者の現地調査が必要(一時か月極か、人が集まる公共機関、大会社、社宅など)
5. 収入が1千万円超などの場合 翌々年に消費税納税があり、駐車場10台以上の場合 事業税納税がある


貸アパート経営のメリット・デメリット
1. 投資額が過大だが、将来の安定収入が可能(自身の相続後の安定収入も確保)
2. 修繕コスト、トラブル対策、解決コストが必要
3. 相続税を減らし、納税対策が容易
4. 内装やターゲットにより、家賃幅が自由設計できる(キャッシュフロー予測がポイント)
5. 管理会社への依存度が高く、管理会社の裁量・能力により キャッシュフローが変動し、管理会社の倒産により影響が大きい
6. 中古物件などにより初期投資を低くしたり、サブリース契約により空き室トラブルを吸収させることにより、投資回収の安全性を高める工夫ができる(副業でも可能)

相続(配偶者・子息への財産承継、税金対策)も含めて、不動産運用を考えるのがポイント


4. 貸アパート経営とリスクヘッジ策

貸アパート経営は、リスクヘッジ策がポイント
1. 相続税の納税リスク(金銭納付すると生計に窮する上に、延納・物納ができないケース)のヘッジ策が必要
2. 家賃滞納、敷金返還の訴訟リスクのヘッジ策が必要
3. 不動産購入にあたり借入をした場合、完済前に相続したときの債務リスクのヘッジ策が必要
4. 火災・異臭などアパートから生じた損害により、近隣から賠償請求を受けた場合のヘッジ策が必要


まずは生命保険・損害保険の分析から
1. 財産を貸アパート(不動産)に組替えることにより、財産評価を減らすことで、相続税を減らすことが出来るが、金銭や金融財産と違い、不動産は換金困難
2. 相続税納税資金対策として、生命保険を活用(納税資金+生活資金分の生命保険に加入)
3. 不動産購入の借入金に、団体信用生命保険をつければ 相続人はローン残を払うことなく、不動産収入のみを承継できる
4. 損害保険の保険範囲を明確にする(火災、水害、地震、盗難、事件の想定できる被害に対応しているか確認)
5. 借主責任と貸主責任が不明確なケースを想定した損害賠償保険や、建物自体の損害賠償保険を検討する


賃貸借契約時の文書説明・署名が被害を広げないコツ
1. 家賃滞納時の保証人への請求手順、敷金返還ガイドラインの説明と署名、入居前の室内写真が効果的


5.貸アパート取得形態による違い

中古物件、競売物件のメリット・デメリット 
1. 初期投資額が少なくて済む高利回りが可能
2. リフォーム代の見積がポイント(どれくらいのリフォームをすれば空き室が減るのかを考慮して、新築貸アパートと利回りを比較検討)
3. 過去の事件・事故、占有者、入居者情報、家賃滞納履歴を確認の上、敷金の精算・再契約が必要
4. 競売の場合 裁判所で物件情報を確認し、外観調査・占有者調査を行った上で、競売手続きを行う
5. 中古物件や競売物件は、借入が困難で、時間がかかるので、金融機関に事前相談(収支計画を早めに作成)


サブリース(一括借上)のメリット・デメリット
1. 主に住宅メーカーがアパート建築・管理・家賃保証を行うシステムであり、副業による安定収入が可能
2. 管理会社の倒産・変更により、手取減のリスク
3. 管理手数料は家賃の10%~であり、手取の利回りが通常より低いため、修繕時は赤字(持ち出し)もある
4. サブリース対象地域は、立地条件のいいケースが多く、通常管理契約(家賃の5%~)の方が有利の場合あり


ワンルームマンション投資のメリット・デメリット
1. 初期投資が少なく、一括借上方式の場合 安定収入可
2. 営業マンの利回りは第三者により検証した方がいい(空室・借入金利・家賃・管理料の試算が必要)
3. 不動産所得が赤字になることによる節税は、本末転倒
 

6.農地の転用・譲渡を考える(1) 

農地転用のポイント
1. 転用できるか調べる(市町村の都市計画課、農業委員会で市街化区域であり、生産緑地の指定がないことを確認)
2. 転用して過大な相続税・贈与税・利子税がないか調べる(相続税・贈与税の申告において納税猶予制度を受けていないか調べる)


納税猶予制度のあらまし
1. 納税猶予とは、一定の農地は贈与・相続に際し、一定要件を充たし続けるかぎり 納税不要となる制度
2. 一定農地とは、特定市街化区域以外の農地であり、自ら耕作しているもの(貸付農地は不可)
3. 農地を相続した者が、農業経営を継続的に行う場合に納税猶予制度を適用できる
4. 猶予される税額は、農業投資価格(国税局が決める)により計算した税額と 通常評価による税額の差額


相続税申告期限から20年経過すれば納税免除される
1. 納税猶予を受けた場合でも 申告期限から20年経過すれば納税免除される
2. 農地を宅地化しても、相続税・贈与税・利子税はない


相続した者が死亡した場合 納税免除される
1. 納税猶予を受けた者が死亡した場合 納税免除され、再度納税猶予を受けるか検討


7. 農地の転用・譲渡を考える(2)

猶予された相続税と利子税を納付するケース
1. 農地の20%超を譲渡・転用した場合、全部納付(20%以下の場合も一部納付あり)
2. 農業経営をやめた場合や3年毎に提出すべき届出を提出しなかった場合など
3. 将来に転用を考えている場合、納税猶予を適用できる農地は全て適用を受け 分母を大きくしてから、転用比率を20%以下にすれば 全部納付は避けられる


優良住宅地として譲渡する場合の特例
1. 譲渡年1/1において所有期間が5年超の土地を、優良住宅地等のため譲渡した場合 譲渡益2千万円以下について所得税10%・地方税4%の特例あり(通常の場合 所得税15%・地方税5%)
2. 優良住宅地等とは、都市再開発法・マンション建替円滑化法などによる買取証明書、国土交通大臣の認定事業証明書類などを受けた事業者が買取るもの


農業委員会のあっせん等により譲渡する場合の特例
1. 農業委員会のあっせん、農地合理化法人への譲渡について、特別控除制度がある
2. 譲渡収入-農地取得価額(または譲渡収入×5%)-譲渡経費-800万円の残額に税率をかける
3. その他 国・地方による収用、区画整理事業、住宅造成事業により、土地を譲渡した場合 特別控除制度がある



8.等価交換のあらまし 

等価交換により 追加資金なしで、不動産を取得する
1. 土地の一部をマンション業者に譲渡し、その対価の代わりに、建物を一部取得する(そのマンションは 元地主とマンション事業者の共同になる)
2. 譲渡所得税の買換特例の適用により、譲渡益課税を一部繰り延べるのがポイント
3. 課税を繰り延べるとは、新たに取得したマンションを譲渡したときに、課税されるという意味


等価交換のメリット・デメリット
1. 自用地から貸家建付地へ評価減(相続税軽減メリット)
2. 減価しにくい土地から、減価しやすい建物に財産が組み替えられる(相続税軽減メリット)
3. 賃貸部分について 安定収入が可能
4. マンション業者と交換条件の折合いがつかない場合あり(土地の評価と建築価額、付随コスト算出がポイント)
5. 等価交換で取得した不動産を売却時に 課税が大きくなるデメリット(所有期間が引継がれないため、売却時に税率の高い短期譲渡所得課税になる場合あり)


土地と土地(借地権)の交換の場合 課税繰延あり
1. 時価差額が20%以下など一定要件をみたす土地の交換は、一部 課税繰延できる
2. 交換する土地は1年以上所有しており、交換前の用途と交換により取得した土地の用途が同じの場合に限る