有償ストックオプションの評価でよく登場するブラック=ショールズモデルの前提は「株価の対数が正規分布に従う」というものです。
つまり株価そのものではなく、“倍率的な変化”を山型の正規分布で近似することで、株価が常にプラスになり、現実に即したモデル化ができるわけです。
ブラック=ショールズ式の面白い点は、無限にある未来の株価シナリオをひとつひとつ追いかけなくてもいいこと。
確率密度(正規分布)を使って、
各株価水準でのオプションの最終価値(ペイオフ)
×その水準になる確率の大きさ
を掛け合わせ、その総和=期待値を数学的には積分という形で一度に計算してしまいます。
しかも、この積分は正規分布の性質によって綺麗に整理でき、最終的には N(d1), N(d2) というシンプルな公式に簡約化されます。
だから「公式に数字を代入するだけ」で、一瞬で理論価格が出てくるのです。
要するにブラック=ショールズは、
未来の無限の可能性を一つひとつ数えるのではなく、確率分布と積分で“一発で平均値”を計算する仕組みです。