議論と検討
195. 収益を総額で表示すべきか否かについては、現行の国際的な会計基準においても、区別するための基本的な考え方や、具体的な判断指標等が示されている。我が国では、ソフトウェア取引については、一定の指針が示されているものの、収益一般についての定めはなく、現行の国際的な会計基準における定めや、IASB とFASB の共同プロジェクトにおける議論の動向も参考にしつつ、我が国における取引の実情も踏まえ、判別の考え方や、具体的な判断指標の整備に向けて検討を行っていく必要があると考えられる。
196. 第 188 項及び第191 項で触れたように、現行の国際的な会計基準では、経済的な便益の流入のうち、本人として受領する部分のみを収益として計上するという考え方に立っていると思われる。現在IASB とFASB が検討を進めている提案モデルにおいては、顧客との契約上の履行義務の内容と、これに対応する対価請求の権利を分析し、顧客から受け取る額のうち、顧客に対して負っている履行義務に対応する部分のみを、履行義務の履行に対する対価として収益認識の対象とするという考え方になるものと思われる。
197. モデルの構成が異なるために、表現の仕方は異なるが、その本質においては変わらないと考えられる。すなわち、対象となる財やサービスを、当該企業自らが提供する場合には、現行の国際的な会計基準においては、そのような財やサービスの提供取引に本人として関わっているものとみて、顧客から受け取る額の全体を本人として自己の計算で受領するものとして収益を表示し、提案モデルでは、履行義務の内容が、そのような財やサービスの提供義務と判断されて、顧客から受け取る額の全体が、その履行義務に対応する対価として収益認識の対象とされることになると考えられる。他方、対象となる財やサービスの提供は第三者が行い、当該企業はその手配を行うだけである場合には、現行の国際的な会計基準においては、当該企業はそのような財やサービスの提供取引に代理人として関わるものとみて、収益として表示する自己の計算において受領する部分は手数料部分だけということになり、提案モデルでは、履行義務の内容が、そのような手配を行う義務だと判断されて、顧客から受領する額のうち、当該企業の履行義務の対価である手数料部分のみが収益認識の対象となるものと考えられる。
198. このように、顧客から受領する経済的便益の流入のうち、企業が本人として自己の計算において受領する部分だけ、若しくは、企業が顧客に対して負っている履行義務の履行の対価と考えられる部分だけを、収益として計上するという考え方には、一定の合理性があると考えられる。
199. ただし、仮に我が国でもそのような考え方を採り入れるとしても、具体的な取引について当てはめる場合には、本人として関わっているのか、代理人として関わっているにすぎないのか、あるいは、顧客に対して負担している履行義務の内容が何であるのかの判断が適正に行われることが重要であると考えられる。
この点、現行の国際的な会計基準においては、当該取引におけるリスクの負担関係等、複数の指標を列挙して、この点に関する適正な判断を確保しようとしているものと思われる。しかし、取引には多様なリスクがあり、それらは必ずしもいずれかの取引当事者のみに一方的に帰属するとは限らず、各当事者がリスクの一部を分担して負担することも多い。したがって、この論点に関しては適切な判断規準ないし指標を示すことが重要な課題と考えられる。
脚注43
本人として収益の総額表示を行うべき場合の指標としては、次のようなものが掲げられている。
(1) 主たる債務者は、当該企業
(2) 在庫リスクの負担
(3) 価格設定に関する裁量権の存在
(4) 財やサービスの使用の決定に加わっている
(5) 物的損失リスクの負担(受注後、発送中)
他方、代理人として収益の純額表示を行うべき場合の指標としては、次のようなものが掲げられている。
(1) 主たる債務者は、供給業者
(2) 稼得する金額の確定
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195. 収益を総額で表示すべきか否かについては、現行の国際的な会計基準においても、区別するための基本的な考え方や、具体的な判断指標等が示されている。我が国では、ソフトウェア取引については、一定の指針が示されているものの、収益一般についての定めはなく、現行の国際的な会計基準における定めや、IASB とFASB の共同プロジェクトにおける議論の動向も参考にしつつ、我が国における取引の実情も踏まえ、判別の考え方や、具体的な判断指標の整備に向けて検討を行っていく必要があると考えられる。
196. 第 188 項及び第191 項で触れたように、現行の国際的な会計基準では、経済的な便益の流入のうち、本人として受領する部分のみを収益として計上するという考え方に立っていると思われる。現在IASB とFASB が検討を進めている提案モデルにおいては、顧客との契約上の履行義務の内容と、これに対応する対価請求の権利を分析し、顧客から受け取る額のうち、顧客に対して負っている履行義務に対応する部分のみを、履行義務の履行に対する対価として収益認識の対象とするという考え方になるものと思われる。
197. モデルの構成が異なるために、表現の仕方は異なるが、その本質においては変わらないと考えられる。すなわち、対象となる財やサービスを、当該企業自らが提供する場合には、現行の国際的な会計基準においては、そのような財やサービスの提供取引に本人として関わっているものとみて、顧客から受け取る額の全体を本人として自己の計算で受領するものとして収益を表示し、提案モデルでは、履行義務の内容が、そのような財やサービスの提供義務と判断されて、顧客から受け取る額の全体が、その履行義務に対応する対価として収益認識の対象とされることになると考えられる。他方、対象となる財やサービスの提供は第三者が行い、当該企業はその手配を行うだけである場合には、現行の国際的な会計基準においては、当該企業はそのような財やサービスの提供取引に代理人として関わるものとみて、収益として表示する自己の計算において受領する部分は手数料部分だけということになり、提案モデルでは、履行義務の内容が、そのような手配を行う義務だと判断されて、顧客から受領する額のうち、当該企業の履行義務の対価である手数料部分のみが収益認識の対象となるものと考えられる。
198. このように、顧客から受領する経済的便益の流入のうち、企業が本人として自己の計算において受領する部分だけ、若しくは、企業が顧客に対して負っている履行義務の履行の対価と考えられる部分だけを、収益として計上するという考え方には、一定の合理性があると考えられる。
199. ただし、仮に我が国でもそのような考え方を採り入れるとしても、具体的な取引について当てはめる場合には、本人として関わっているのか、代理人として関わっているにすぎないのか、あるいは、顧客に対して負担している履行義務の内容が何であるのかの判断が適正に行われることが重要であると考えられる。
この点、現行の国際的な会計基準においては、当該取引におけるリスクの負担関係等、複数の指標を列挙して、この点に関する適正な判断を確保しようとしているものと思われる。しかし、取引には多様なリスクがあり、それらは必ずしもいずれかの取引当事者のみに一方的に帰属するとは限らず、各当事者がリスクの一部を分担して負担することも多い。したがって、この論点に関しては適切な判断規準ないし指標を示すことが重要な課題と考えられる。
脚注43
本人として収益の総額表示を行うべき場合の指標としては、次のようなものが掲げられている。
(1) 主たる債務者は、当該企業
(2) 在庫リスクの負担
(3) 価格設定に関する裁量権の存在
(4) 財やサービスの使用の決定に加わっている
(5) 物的損失リスクの負担(受注後、発送中)
他方、代理人として収益の純額表示を行うべき場合の指標としては、次のようなものが掲げられている。
(1) 主たる債務者は、供給業者
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