欠損金の繰越控除制度について | アークス総合会計事務所のブログ

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欠損金の繰越控除

法人の各事業年度において欠損金が生じた場合、その欠損金額を翌事業年度以降に繰り越して所得金額から控除する繰越控除制度がありますが、平成28年の税制改正により、その見直しが行われました。

今回は、その内容について触れていきたいと思います。

<制度の概要>
1.青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度

①制度の概要
法人の各事業年度開始の日前9年以内に開始した事業年度において欠損金が生じた場合、その欠損金に相当する金額を各事業年度の所得金額の50%相当額を限度として損金算入することができます。平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始される事業年度については損金算入の限度額は65%となっています。

また、資本金若しくは出資金の額が1億円以下の一定の法人・公益法人・協同組合・人格のない社団法人等を含む中小企業等については、
各事業年度の所得控除前の金額が控除限度額となります。

②適用対象
この制度は欠損金が生じた事業年度において、青色申告による確定申告書を提出し、かつその後の事業年度についても連続して確定申告書を提出している必要があります。なお、欠損金が生じた年に青色申告による確定申告書を提出していれば、その後の事業年度において提出した確定申告が白色申告でも、繰越控除を適用することができます。ただし、欠損金の生じた事業年度に係る帳簿書類を9年間保存しておく必要があることに注意が必要です。

2.災害による損失金の繰越控除制度

①制度の概要
法人の各事業年度開始の日前9年以内に開始した事業年度において、震災等の災害により、固定資産・棚卸資産・繰延資産を損失したことによって生じた欠損金がある場合、各事業年度の所得控除前の金額の50%を限度額として損金に算入することができます。

1.の繰越控除制度と同様、平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始される事業年度については所得控除前の金額の65%が損金算入限度額です。

②適用対象
この制度の適用するには、災害による欠損金額が生じた事業年度の確定申告書、修正申告書または更正の請求書に、損失の金額を計算した際の書類を添付していることが必要です。またその後の事業年度においても連続して確定申告書を提出する必要があること、欠損金に関する帳簿書類の保存期間については、1.の繰越控除制度と同様です。

3.欠損金の更正の請求期間

法人税の申告書に記載した税額の計算に誤りがあり、欠損金の記載がなかった又は欠損金の額が過少だった場合、税務署に対して更正の請求を出すことができます。更正の請求とは、申告の際に納税額を過大に申告してしまった場合、納税額を減らすために行われる税務手続きのことです。

更正の請求ができる期間は、法定の申告期限から9年以内と定められています。

4.欠損金等の繰越期間等の延長

平成29年4月1日以降に開始する事業年度において生じた欠損金額の繰越期間が9年から10年に延長することと定められています。また、これに伴い、帳簿書類の保存期間と更正の請求期間についても9年から10年に延長されることとなりました。

<平成28年度税制改正における改正点>
①青色申告書を提出した事業年度の欠損金額等の控除限度額の見直し

資本金の額が1億円を超える大法人について各事業年度の控除限度額の割合が段階的に下げられることになりました。以下が改正前、改正後の規定を比較したものです。この改正により税負担が増える可能性が高まりました。

②欠損金等の繰越期間等の延長時期の見直し

従来の繰越控除制度では欠損金の繰越期間を9年から10年に延長する措置を、平成29年4月1日以後に開始する事業年度において生じた欠損金について適用するとしていましたが、今回の改正により、適用対象となる期間が1年見送られ、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金について適用することになりました。

これに伴い、以下の措置についても平成30年4月1日以降に開始する事業年度において生じる欠損金額から適用されることとなりました。


・帳簿書類の保存期間を9年から10年に延長すること

・欠損金に係る更正の請求期間を9年から10年に延長すること

・欠損金に係る更正の期間制限を9年から10年に延長すること

4.まとめ

中小企業にとっては、控除限度額割合に変更がないこと、また欠損金の控除期間が延長されることによって長期的な減税効果が見込めますが、大法人にとっては将来的に控除限度額の割合が下がるため、結果的に税負担が重くなる可能性が高まったと言えます。

繰越控除を行う前に欠損金が切り捨てられてしまう可能性もありますので、欠損金が残っている場合は注意しましょう。

<参考URL>
国税庁HP:青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除https://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5762.htm

国税庁HP:法人税関係法令の改正の概要
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2016_4/01.htm