会社が納める税金のひとつに事業所税という税金があります。
事業所税という税金を初めてお聞きになる方もいらっしゃると思いますので、まずは概要から説明したいと思います。
概要①
事業所税は、都市環境施設の整備及び改善に必要な財源の確保を図るための目的税です。
概要②
事業所税は東京都や政令指定都市など全国で76団体のみで課税される税金です。
つまり、それ以外の市町村では課税されません。
概要③
事業所税には、事業所等の床面積を対象とする「資産割」と 従業者の給与総額を対象とする「従業員割」とがあります。
「資産割」...税額→1㎡につき600円
※合計事業所床面積が1,000㎡以下は免税
「従業員割」...税額→従業者給与総額の0.25/100
※合計従業者数が100人以下は免税
上記の通り、課税の対象となる範囲が狭いことで一般的にあまり馴染みがありませんが、事業拡大を考えていくうえで、新たに事務所や倉庫を賃借する際や将来の人員配置などに関わってくる税金のひとつだと考えられます。
そこで今回のブログでは、事業所税の中の「資産割」にスポットを当ててお話したいと思います。
●事業所等の範囲●
ここで言う「事業所等」とは、所有者に関係なく事業を営むために設けられた人的設備及び物的設備です。
その場所で継続して事業が行われる、という点から事務所や店舗、工場等はもちろんのこと、倉庫や資材置場、ガレージ等も含まれます。
●課税標準●
資産割の課税標準は、その算定期間の末日現在における事業所床面積の延床面積(各階床面積の合計)をいいます。
(法701の31①(4))
●算定期間●
法人→事業年度
個人→1/1~12/31(原則)
(法701の31①(7)(8))
事業所税について注意すべきポイントとしては、
①1,000㎡以下であっても800㎡超であれば申告が必要。
②100人以下であっても80人超であれば申告が必要。
③法人は事業年度終了後2カ月以内、個人は翌年3月15日までに申告納付しなければなりません。
④賃借している事業所も納税義務があります。
⑤特殊関係者(親族その他特殊関係にある個人又は同族会社)と、同一の家屋で事業を行っている場合には、その特殊関係者の行う事業は共同事業とみなされます(みなし共同事業)
この場合、免税点判定は特殊関係者の事業と合算して行います。
※納税額は合算せず個別で計算します。
この⑤のみなし共同事業という概念から、単独では納税義務がなくとも、同族会社などグループ会社と同じビルで事業を行っている場合、合算すると納税義務が発生する可能性があるので注意が必要です。
以下は、判断に戸惑うことが懸念されるケースの一部をご紹介致します。
●みなし共同事業
事業主が親族その他の特殊の関係のある個人又は同族会社などの特殊関係者を有していて、その特殊関係者の事業と事業主の事業とが同一家屋で行われている場合、その特殊関係者の事業は、特殊関係者を有する者との共同事業とみなされ、これらの者が連帯して納税義務を負う制度です。
(法701の32(2)、取通(市)第9章3(4)ウ)
●賃貸物件で事業を行っている場合の共用部分
賃貸用ビルの一部を借りて事業を行っている場合は、事業用スペースの他に階段やエレベーター等の共用部分についても、事業用床面積に含めます。
また同一ビル内で複数の事業者が事業を営んでいる場合は、共用部分の面積を各事業者が使用する専用床面積の割合で按分し、自己の専用床面積と合算して申告します。
(令56の16(2))
●従業者が常駐していない施設
上記に記した通り、事業所税における「事業所等」とは自己の所有に関係なく、事業のために設けられた設備であり、そこで継続して事業が行われる場所をいいます。従って従業者が常駐していない倉庫なども、該当します。
(取扱通知 1章6)
●不動産賃貸を営んでいる場合
貸ビル業を営んでいる場合は、「管理人室」や「管理用品倉庫」等、管理の為の施設は貸ビル業者の事業用施設となりますが、賃貸している事務所・事業所等は貸ビル業者ではなく賃借人である事業者の事業用床面積に含まれることとなります。
(取通(市)9章3(4)ア)
●福利厚生施設
食堂や娯楽室、保養所など、事業主が従業員の慰安・娯楽等便宜を図るために常時設けられている施設で、直接事業の用に供されていない施設は非課税とされます。ただし、名称が「保養所」であっても、その施設で研修や会議を行う場合、実質的に事業の用に供しているとみなされ、業務用施設として課税対象となるので注意が必要です。
(令56の41、法24の1(4)、取扱通知 2章9)
事業所税については、この他にも数多くの規定が存在し、且つ、複雑な要素を含んでいます。
適正な納税をするためにも、事業所税について再確認する必要がありそうです。
事業所税「従業員割」については、後日改めて触れていこうと思います。