受取配当金の益金不算入規定は法人と個人との間に発生する二重課税を排除するために設けられたものですが、昨年、2015年度の税制改正により、受取配当金の扱われ方が大きく変化しました。
そこで、今回は受取配当金の益金不算入制度についてご紹介いたします。
①受取配当金における二重課税とは
配当金を支払う法人に対して課される法人税と、
株主が配当金を受け取るときに課される所得税の間に生じる課税の重複のことを指します。
日本の法人税法では、二重課税を排除するため受取配当金の益金不算入制度が設けられています。
②受取配当金の益金不算入範囲
益金不算入制度は、あくまで配当金を受け取る段階での二重課税の排除を目的にした制度であるため、配当金を支払う法人において既に課税されたものに限定されます。
【益金不算入の対象となる配当等の範囲】
1.剰余金の配当・利益の配当・剰余金の分配の額
2.特定株式投資信託の収益の分配の額など
3.みなし配当金
【益金不算入の対象とならない配当等の範囲】
1.外国法人・公益法人・人格のない社団等から受ける配当
2.協同組合等の事業分量分配金
3.相互保険会社の基金利息
4.保険会社等の契約者配当金
5.名義書換失念株の配当金
6.資本積立金の資本組み入れ
7.短期所有株式等にかかる受取配当金
7.の短期所有株式等にかかる受取配当金とは、配当金の元本となる株式等を、配当の計算基礎期間の末日以前1ヶ月以内に取得し、かつ、その末日から2ヶ月以内に譲渡した株式等のことを指します。
この短期所有株式等の規定がない場合、配当を交付した後の配当権利落ちにより株価が下落しますが、その下落による売却損を損金として計上し、配当が益金不算入である場合には配当の受領を目的とした課税回避が行われる恐れがあります。
これを避けるために、益金算入される配当等の一つとして扱われることになっています。
また、上記した7項目の配当等は、支払法人で損金処理していること・株主として支払いを受けていないこと・二重課税に関係しないことを理由として、益金不算入の対象とならないものとされています。
③株式等の分類
2015年の税制改正で大きく変わった点は、持株割合とそれに対する益金不算入額の算出方法です。
以下の内容で見直しが行われました。
【改正前】
・完全子法人株式(株式保有割合が100%)…100%益金不算入
・関係法人株式等(株式保有割合が25%以上100%未満)…100%益金不算入(負債利子控除あり)
・上記以外の株式等及び証券投資信託…50%益金不算入(負債利子控除あり)
【改正後】
・完全子法人株式等(株式保有割合が100%)…100%益金不算入
・関連法人株式等(株式保有割合が1/3超100%未満)…100%益金不算入(負債利子控除あり)
・その他の株式等(株式保有割合が5%超1/3以下)…50%益金不算入
・非支配目的株式等(株式保有割合が5%以下)…20%益金不算入
※改正以前は益金不算入の対象だった証券投資信託については、改正後100%の益金算入となります。 また、特定株式投資信託(ただし、外国株価指数連動型特定株式投資信託を除く)の場合は、非支配目的株式等と同様の扱いを受けます。
④終わりに
今回ご紹介した税制改正は、昨年の2015年4月1日より施行されております。
法人税法の一部改正に伴う経過措置の原則によると、改正後の法人税法の規定は、施行日(2015年4月1日)以後に開始する事業年度所得に対する法人税について適用し、施行日以前に開始した事業年度所得に対する法人税については、従来の税法を適用するとされています。
つまり、受取配当金の益金不算入制度を適用する法人が12月決算法人である場合は、2016年12月期から適用されることとなっています。
すでに対策を取られている方もおられるかと思いますが、まだ対策を取られていない方は早めの検討をされることをお勧めいたします。