会社が赤字になった場合、翌期以降の税金の負担を抑える「欠損金の繰越控除制度」と前期に支払った法人税の還付を請求する「欠損金の繰戻還付制度」の2つの制度を選択することができます。
今回は、繰戻還付制度の概要と、繰越控除制度を比較した時の選択のポイントについてお伝え致します。
1.欠損金の繰戻還付制度の概要
(1)制度について
欠損金の繰戻還付制度とは、欠損金が生じた場合において、その欠損金を欠損金が生じた事業年度の前事業年度に繰戻して、前事業年度において納付した法人税の還付を求めることができる制度です。また、繰戻還付制度は法人税が対象であり地方税の還付は認められておりません。
(2)適用対象
この制度は青色申告書を提出する法人となります。
なお、資本金が1億円以下の中小法人や協同組合公益法人等を除く、平成4年4月1日から平成28年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額については適用が停止されています。
(3)還付金額の計算式
還付請求できる金額は下記の式で計算することができます。
還付請求できる金額=前期の法人税額×当期の欠損金額/前期の所得金額
※分母の金額が限度額
2.欠損金の繰戻還付制度の計算例
前期の課税所得が500万円で法人税額が75万円の事業者で当期の課税所得が△200万円の場合、30万円が還付されます。
3.繰戻還付と繰越控除の選択のポイント
上記の例で翌期の課税所得500万円の黒字の場合において、どちらの制度が有利なのかを検討した場合は次のとおりとなります。
上記の図の法人税額に着目します。
法人税額はどちらの制度も120万円と等しいことから、長い目で観ると支払う税金は同じになります。
つまり、繰戻還付と繰越控除のどちらを選択するかは一概には言えず、会社の状況によって総合的に判断します。
参考として、繰戻還付を選択する方が良い場合は以下の場合があげられます。
(1).翌期以降に長期的に黒字になる見込みが無い場合
前期の法人税額のうち30万円を還付請求できる機会が当期しかないため
(2).手元の資金を良くしたい場合
30万円の還付を受けることで一時的にキャッシュが入るので、資金繰りが厳しい会社にとっては有効であるため
4.まとめ
欠損金の繰戻還付制度と繰越控除制度の選択は会社の状況に合わせて総合的に判断する必要があります。
翌期以降の課税所得の状況等によって大きく状況が変化しますので注意が必要です。
しかし、還付を受けることができることは繰戻還付のメリットの一つですので検討してみてはいかがでしょうか。