社員旅行は従業員のモチベーションアップの効果などがあり、社内行事として行う会社は少なくないと思います。
この社員旅行にかかる費用について、税務上の要件を満たせば福利厚生費として会社の経費にすることができ、節税効果を期待できます。
この節税効果は、以前ご紹介した記事でいうところの「お金の支出を伴い、税金を減らす節税」に該当します。
税務上の要件を満たさなかった場合、旅行費用が役員や従業員への給与とみなされてしまい、税金計算上の経費にならず、その参加者に対して源泉所得税が課税されてしまうので注意が必要です。
今回は、社員旅行を福利厚生費として処理するための要件についてお伝え致します。
1. 福利厚生費として経費計上するための要件
次の要件をいずれも満たすときは福利厚生費として経費計上することができます。
(1)旅行の期間が4泊5日以内であること。
海外旅行の場合には、外国の現地での滞在日数が4泊5日以内であること。
(2)全社員を対象としていて、その旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること。
工場や支店ごとに行う旅行の場合は、それぞれの職場ごとの人数の50%以上となります。
(3)旅行費用が高額でないこと。
税法上明確な規定はありませんが、一般的に一人当たりの会社負担額はおおむね10万円までと言われております。
この金額について、国税庁のタックスアンサーNo.2603にて、少額の現物給与は強いて課税しないという少額不追求の趣旨を逸脱しないものであると認められるものについて上記(1)と(2)の要件を満たしていれば、参加者の給与としなくてもよいと記載されています。
国税不服審判所HP 平成22.12.17裁決に、一人当たりの負担額について記載されており、この裁決で参考として示された数値は約5万円~8万円の間となっています。
また、先程のタックスアンサーNo.2603にて紹介されている事例では一人あたりの会社負担額が15万円でも少額不追求の趣旨を満たすと記載されています。
これらのことから、概ね10万円までなら問題とはならないと考えられています。
(4) 不参加者に金銭を支給しないこと。
不参加者に金銭を渡してしまうと、その金銭は給与とみなされてしまい、源泉所得税が課税されてしまいます。
また、参加者と不参加者の全員にその不参加者に対して支給する金銭の額に相当する額の給与の支給があったものとされてしまいますので注意が必要です。
(5) 社員旅行の事実を残すこと。
税務上の要件ではありませんが、税務調査で聞かれたときのために、社員旅行の企画書や参加者名簿などを残しておくのが望ましいです。
2. 具体例
例1 福利厚生費として認められる場合
・旅行期間 : 3泊4日
・旅行費用 : 15万円(内使用者負担7万円)
・参加割合 : 100%
この例の場合は旅行期間、旅費費用、参加割合の要件すべてを満たすため福利厚生費として処理することができます。
例2 福利厚生費として認められない場合
・旅行期間 : 5泊6日
・旅行費用 : 30万円(内使用者負担10万円)
・参加割合 : 50%
旅行期間が5泊6日以上のものについては、その旅行は社会通念上一般に行われている旅行とは認められず、20万円が給与とみなされ源泉所得税が課税されてしまいます。
なお、下記の内容の旅行費用は社員旅行としては認められないためご注意ください。
(1) 役員だけで行う旅行
(2) 取引先に対する接待目的のための旅行
(3) 実質的に私的旅行と認められる旅行
(4) 金銭との選択が可能な旅行
社員旅行を福利厚生費として費用計上するには注意しなければならないことが多くありますが、従業員のモチベーションアップや互いをよく知ることで会社の利益につながり、節税にも使える良いアイデアだと思います。